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交渉

いつも通り、幻術で周囲に溶け込んで人気のないところへ着陸する。

「どうして門から入らないの?」

「俺は悪い奴に狙われているからな。姿を安易に見せられないんだ。」

「そうなんだ…。」

ナイス、パール。まあまあうまい説明じゃないか?

「それでローナ嬢。お屋敷はどこか分かるか?」

表通りに出たところでパールが尋ねる。

「うん、わかるよ。あっちに私の家があるよ。」

「分かった。では向かおうか。」

(マスター、どうしますか?。門から入りますか?、それとも直接転移で侵入しますか?)

(どうっすかなぁ。やっぱり正面から行くべきだよな。冒険者カードを準備しておいてくれ。)

(了解です。)

「ローナは休みの日は家に帰っているのか?」

「うん。帝都で家の人が待機しているから一緒に帰ってるの。」

「じゃあ、もしかして今日も?」

「うん。でも大丈夫だよ。まだ朝早いから。」

そういう問題ではないような気がする。これはやっぱり門から入るべきだな。

しばらく歩いていると、前回闇オークションで来たことのある屋敷へと到着した。

「ここが私の家。ただいま、ロイさん。」

門番にローナが親しく話しかける。

「ロ、ローナ様。どうしてここに。それにその者たちは?」

「えーとねぇ、こっちが友達のジンで、こっちが冒険者のゼロ。」

えっ、まさかのゼロを呼び捨て?、距離感バグりすぎじゃないか?

「よろしくお願いします。」

「よろしく頼む。」

「ねえ、中に入ってもいい?」

「お嬢様は構いませんが、そちらの者たちは許可できかねます。」

「ええー、どうして?。私の友達なんだよ。」

えー、ローナさん?、そこにゼロは含まれてませんよね?

「たとえそうだったとしても許可できません。どうしてもというならお嬢様が当主様に許可をもらってきてください。」

「分かった。そうする。ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから。」

「ああ。」

ローナが屋敷に向かって走っていく。

(許可されると思うか?)

(難しいと思います。娘がいきなり知らない人を連れてきたら警戒するでしょう。マスターはともかく、ゼロは怪しいですからね。)

(困ったもんだ。)

(まあまあ、人生思うようにいかないことの方が多いですよ。それに思い通りになってもつまらないと思いますよ。)

(想像で言うのはやめてくれ。それに思い通りにいったら楽しいと思うぞ。他人を完全に掌で躍らせられるわけだからな。)

(はぁー。相変わらず悪趣味ですね。)

(そんなことはねぇだろ。)

とはいえ、人の人生を完全に操られるとしたら、それはもう神と言っても過言ではあるまい。まぁ、俺は運命論者だけどな。

待つこと数分、ローナが父親らしき人物を連れてきた。

「お待たせー--。」

「こら、ローナ。はしたないぞ。」

「うう、申し訳ありません。」

おお、シュンとしている。珍しいな、いつもうるさいだけに新鮮だ。

「それで君たちが我が家に何の用だね?」

俺がゼロと自分の紹介をしてから、今回の経緯をローナの父親と話す。

へー、ガルドっていうのか。結構かっこいい名前だな。

「なるほど。君たちの気持ちはありがたい。けど、手助けは不要だ。」

ありゃりゃ、断られちった。どうしよう?、ならもう帰ろうかな?

「そうですか。」

「待ってよ。お父様。」

ぎろりと父親に睨まれ、ローナは背筋をただす。

「父上、お願いします。可能性があるなら試したいです。」

そう言って、目線を合わせて決してそらそうとしない。

すげぇな、目と目を合わせるのは苦痛だから俺にはできない。

(ローナ、粘ってますね。)

(まあな。今ここにいる人間でフォルナ家の現当主に対して粘れるのは身内のローナだけだからな。)

(ぜひ頑張って治療まで持ち込んでほしいですね。)

(もうどっちでもいいけどな。向こうが拒否した時点で俺のやる気は萎えたからな。)

(長続きしませんね。)

(当たり前だろ。ぶっちゃけどうでもいいし。俺に何ら関わりがないからな。)

(ドライですね。)

「はぁ、しょうがない。ローナがそこまで言うなら認めよう。それに連れてきた人物が人物だからな。そうだろ?銀仮面殿。」

「俺の名前はゼロさ。あと、悪いが時間が限られているんだ。早くしてくれ。」

「そう急かずともよいのに。」

ガルドは苦笑しつつ、俺たちを屋敷の中へと招き入れた。


ー-ー-??ー-ー-

「どうされますか?、シュバルツ様。トランテ王国に攻撃を仕掛けますか?。中央には偶発的な戦闘と報告することも可能ですが?」

「今は伝令を待つ。父上の意に反して動けば手柄を立てたとしても動きづらくなるからな。」

「…分かりました。」

〈今回戦争が起きなかったとしてもいつかは起きる。ならば俺が手柄を立てることもまだまだ可能。絶対に俺が皇帝になって大陸を統一するのだ。〉

シュバルツは輝かしい未来を想像し、ほくそ笑む。

「それにしてもノルヴァリア殿下は爪を隠しておられましたね。」

「何、帝国の歴史を見れば珍しい事ではない。」

「確かにそうですね。帝国は原初の国ですから。」

原初の国、それは国というものができ始めた時から消滅せずに存在するため、敬意を払ってそのように呼ばれるのだ。なお、大陸に存在するのはギラニア帝国の一国のみ。

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