表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
T・F・U物語  作者: 狼眼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/53

大学の入学式

俺は着なれないスーツを着て大学の中をひたすら歩く。

履きなれない革靴が、足の小指を刺激して痛いが、泣き言は言っていられない。

何しろ・・・。


「おい!急げよ!もう式が始まっぞ!」


今日の朝は、爽やかな目覚めでは無かった。

頭が少し痛く、喉はカラカラ、胸がむかむかしている。

はぁ、飲みすぎだな。


「俺、先行くぞ!」


坂下が電動キックボードで俺たちを追い越していく。


「おれも乗せろや!」


渡が声を掛けるが、坂下はすい~っと、歩道を走り抜けていく。


「2号館、まだか?」

「あの丘の上、あのでっかいのが2号館だろ?」


行程さ30mは有りそうな丘の上に2号館は建っていた。


「もう、ゆっくり行こうぜ。無理だよ。」


起き抜けでそのまま来たのか、ひげ面の玄田が諦めた様にゆっくりと速度を落とした。

まぁ、入学式は特に何があるって訳でもないから、って先輩も言っていたが、俺たち不死身荘メンバーは間に合いそうにない。


「大丈夫!おれさ、昨日の内に下見に来たんだよ。でさ、裏口を発見しておいたから、余裕!ぜってぇばれねぇから。」


高岡の話を鵜呑みにする訳では無いが、この劣悪な体調で、この丘を登るのは時間が掛かりそうだ。

それでも、5分も歩けば丘の頂上は目の前まで来ていた。


「確か、こっちだ。」


高岡が手招きする。

俺の高校にあった体育館が4つくらい入りそうな2号館が目の前にある。高さも幅もやたらとでかい。


「あ、ここだ!」


高岡が、勝手口の様なスチールで出来た扉の中に入っていった。


「そういえば、坂下は?」

「あぁ、守衛の人に掴まって怒られてたぞ?構内でキックボード乗るなって。」

「俺たちを裏切るからだ。」


それぞれが恨み言を言いながらも、扉をくぐる。

奥からは、マイクを通した、少しくぐもったような声が聞こえている。

多分校長の挨拶か何かだろう。


「ほら、この階段を上っていくと、3階の通路に出るんだ。」

「また昇るのか・・・。」

「うしろ使えとんじゃ、さっさといけや。」


俺がぼやいていると、前田がせっついてくる。

ふざけた様にいっているが、方言が入っていると、聞こえ方が違って聞こえる事も有る。

皆も気を付けろよ?


階段を暫く上ると、オレンジ色の鉄の扉が行く手を阻んでいる。


「ここ、この奥が3階の通路なんだよ。」


高岡は楽しそうだ。


「扉の向こうに誰かいないだろうな?」

「大丈夫だって。」


高岡がゆっくりと鉄の扉を押し開けた。

扉は軋むことなくゆっくりと開き、眩しい光が差し込んできた。


「ここは・・・。」


3階の通路と言う割には、色々な物が置いてある。

物置・・・では無いようだが。


「おぉ!ダンベルじゃん!」

「鉄棒もある。」

「結構設備が整ってんじゃん。」


コンクリートの壁が剝き出しの通路には、トレーニング場と言っていいほどの設備が整っていた。


丘の上にある2号館の3階という事も有って、窓から見渡す景色は最高だ。


「あの辺が不死身荘かな。」

「いや、あっちじゃろ。」


外を眺める俺と前田の後ろでベンチプレスを始める渡。


「ベンチ、何キロ行ける?」

「ん~、最近してないから、90くらいかな。」

「おい、あんまり音を立てるなよ!」


渡が寝転んでいるベンチの横には、観音開きの鉄の扉がある。

そこから、さっき階段で聞こえていた声が、よりはっきり聞こえてくる。


「その扉を開けたら、入学式の会場じゃろ。」

「いまさらだろ?」

「んだぁな。」


とりあえず、扉から聞こえてくる声を聴いて、大事な事を言っていないかだけは聞き逃さない様にしなくては・・・。


暫くすると、扉の向こうが騒がしくなった。

何かあったか?と思ったら、清松が窓の外を見ながら状況を教えてくれた。


「お、みんな出てきてるぞ?入学式終わったんじゃ?」


俺も窓辺へ向かって外を見る。


こんなに沢山の人が2号館に集まってたのか。そりゃぁデカい入れ物が必要だわな。


2号館の窓から眺める4月の空は、良いことが起こりそうな予感にあふれた空だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ