深夜のゲーセン
さて、今日も閉店の時間だ。
ゲーセンの閉店はそこまで難しい仕事は無いが、ワンオペなのでやることは多い。
まずは、エアコンのフィルター清掃。フィルターを外し、外の水道でブラシを使いながら洗う。2枚。
両替金の確認。両替機の中の金額の確認をして、今日でいくら両替されたかを確認する。この数値が売り上げの目安になるんだ。
だから、タクシーの運転手さんなんかが両替に来ると、面倒だが注意をしなくてはいけない。
おっちゃんたち、睨むんだよな~。
で、両替機を確認し終わったら、トイレ掃除をしてから電源を落とす。
一応ギリギリまでゲームしている人もいるので、その部分は残しておく。ま、殆ど山岸か工藤さんなんだけどね。
そのゲームが終わるまでの間、営業日報を記入する。
今日の日付、両替金額、故障履歴、引継ぎ事項・・・。
未だにこの店はアナログなところが多い。今時PCでパパって終わるのに、手書きの報告書なんだ。
でも、大学からの近さ、出勤時間の自由さ、テスト前に勉強していても良いという優しい社長。それら全てがこのバイト先の魅力なのだ。
・・・しかし、ゲームが終わらないな・・・。
とりあえずシャッターを完全に降ろしてしまおう。
自動販売機の裏に隠してある支柱を真ん中に立てて、金具で固定。そしてシャッターを引きずり降ろす。2か所あるが、あっという間に終わる。
裏口は鍵を閉めるだけの扉。
・・・さぁ、もう事務所以外の出入り口は塞がれたぜぇ?
・・・まだ遊んでる。
「もう締めますよ~。」
「ちょい待ち!あと1ラウンド!ちょっとだから!」
2人の対戦を見守る。
暗い店内で、5人の男がゲームを囲んでいる・・・。
「っか~!工藤さんつえ~!!」
「んふっふっふ・・。修行が足りん!・・・もう締めていいぞ?」
「了解。」
俺は、店内の照明を一部だけ点けて、ゲームの電源を落とす。
急に静かになる店内の雰囲気は、ゲーセンでバイトしないと味わえない・・・いや、この人達は例外か・・・。
「じゃ、こっちから出てくださいね。後始末するんで。」
「う~い。」
工藤さんを先頭に、海老名と社長と山岸が事務所のドアをくぐって外へ出る。
俺は、ブレーカーをすべて落とし、鍵を閉め、事務所から外へ出る。
「乙。」
「腹減りましたね~。」
「おれ、コンビニで飯買ってくるわ。」
「あ、俺も行きます。」
工藤さんと蛯名が買い物に行く。
「山岸は?」
「俺は部屋に米がある。」
「社長は?」
「俺は今、金が無い。」
「そっすか。」
事務所前で話をしていると、コンビニから2人が出てきた。
「おすそ分け~。」
海老名がから揚げちゃんを渡してきた。
何て出来た人間だ!これがコミュ力?
「「「いただきま~す!」」」
1つ200円以上するから揚げちゃんを3つも提供するとは・・。
やはり海老名は金持ち野郎・・・いや、リッチマンだ。
「じゃ、帰りますか・・・。」
「んなら、俺はこれで!」
「ごちそうさん!」
「ごちでーす!」
海老名が小走りで駐車場へ向かい、車に乗り込んだ。
「我々も行きますか。」
ゲーセンから家までは、ほぼほぼ下り坂なので、自転車だと乗っているだけで着いてしまう。
「あ、そう言えば、社長は歩きでしたね?」
「おぅ、ゆっくり歩いてくから、先行ってろよ。」
「そうっすか?んなら、おつかれした~。」
山岸は学校のすぐ近くの部屋なので、すぐに解散。工藤さんは部屋の直前で別れる。
この時期でも、深夜はそこそこ涼しいもんだな・・・。
俺は部屋に着くと、どんぶりに白飯をよそって、生卵、シーチキン、マヨネーズ、しょうゆを順番に乗せていく・・・。
今、「え?何してんの?」って思った人。美味いから。体に良いか悪いかは別にして、かなりうまいから。金が無い時はやってみてね!
で、飯を半分くらい喰い終わった頃、部屋の扉が開いた・・・・。
「ふぅ~、着いた着いた。」
「あれ?社長?どうしたんですか?」
「あぁ、ちょっとな。」
「あぁ、どうぞ。」
「おお。」
社長が部屋にあがってくる。
俺は飯の続きを食いながらも、PCの電源を入れる。
「なぁ、ジャコ。今晩泊めてくれよ。」
「・・・へ?行くとこないんですか?」
「ほら・・・金が無いって言ったろ?」
「・・・マジか・・・。」
暫くPCの起動する音が部屋を支配した・・・。
「バイト代入ったら、部屋代出すから。」
「!・・・なら、良いんですがね・・・。」
正直、家賃滞納し始めた俺は、部屋代出すには弱かった・・・。




