隣からBGM
新入生歓迎会が滞りなく終わった後・・・。アルコールの気持ち悪さが昼過ぎには抜けた。
しかし、今年は大人しかったな。去年の様な無茶な飲み方はしなかった。
新人が少なかったという事も有り、そんなに盛り上がらなかったんだ。
酒が抜けると腹が減る・・・。ま、ちょうど昼時だからな。なにを食おうか?
こんな爽やかな休日の午後には、俺の大好きな日清焼きそばを食うのが一番だ。
「上から読んでも下から読んでもNISSIN!」
適当な歌を歌いながら焼きそばを作り出す。
すると、聞き覚えのあるBGMが隣から聞こえてくる・・・。
この歌は・・・。
俺が幼い頃、CMで流れていた歌・・・。長い間忘れていたが、この歌の響きが好きだったんだ。
隣との壁の厚さがベニヤ板1枚分なだけに、歌詞まで聞こえてくる。
「あぁ、英語の歌だったんだ・・・。」
不思議と覚えている者で、懐かしさがこみあげてくる。
あれは、何のCMだったのだろうか。
歌詞の内容も分からないまま鼻歌を歌っていたあの頃・・・。懐かしいな。
俺はつい、スニーカーを履き、隣の部屋に向かって歩き出していた。
隣の住人とは、そんなに話したことは無い。新入生歓迎会も参加せず、時々廊下ですれ違う位なんだが。
ドンドンドン!
「は~い。」
名前も知らない男性が扉を開ける。
「あ、どうも、となりの麝香です。」
「はい、どうも。なんかありました?」
「あの、今聞いている歌ですが・・・。」
「あ、ごめんなさい、うるさかった?」
「いえ、昔に聞いた事があって、懐かしいなって・・・。何て曲なんですか?」
男性の名前は、伊達さんと言う方だった。
CDの話から昔のCMの話になって、20分ほど立ち話をした。
伊達さんは、同じ大学の大学院生で、来年卒業予定らしい。
伊達さんも最近その音楽を思い出したらしくて、中古屋でCDを買って来たのだという。
俺は、PCを持っていないので、携帯でダウンロードするために歌手名と曲名を教えてもらった。
俺は礼を言うと、すぐさま部屋に戻り、携帯で検索&ダウンロードをした。
久しぶりに聞く曲。思い出のままだ・・・。
「えぇっと、歌詞はどんなんだったんだ?」
えぇ~。良く聞くと、この歌って、なんか、暗い歌詞だな・・。
身内が〇ぬとか、自然に一人になったとか・・・いい音楽なんだがな~。
英語の歌詞が分かる様になると、こんな気持ちになるのか。
とは言え、懐かしの曲だ。目覚ましくらいには使ってやろうか・・。いや、やめておこう。着信音くらいにしておこう。
着信音に登録した直後、工藤さんから電話がかかってきた。
「おう!ジャコ!ちょっとこいや!良いもんやるから。」
「良いもん?王林ですか?」
「ちげぇよ。もっと良いもんだ。ダッシュで来いよ~。」
とりあえず、携帯と財布を持って工藤さんの部屋へ走る・・。
「来ましたよ。なんすか?」
「お、来た来た!」
「あれ?舛添さんも居たんすね?」
「俺の車で買い物に行ってたからな。」
「ジャコ、みてみ。」
工藤さんの部屋の畳の上に、無造作に置いてあるパソコン。
「あれ?外しちゃったんですか?」
「ちげぇよ。ほら。」
もともとパソコンが置いてあった場所には、黒いパソコンが置いてある。
「え?新しいの買ったんですか?まだ半年くらいしか経ってませんよ?」
「ふっふっふっ・・あめぇな。俺様の豪運を舐めちゃいけねぇぜ!」
工藤さんが携帯の写真を見せてくる・・・。
?十、百、千、万、じゅ・・・15万2千円!!!
「パチンコ・・ですか?」
「昨日の朝一でラッキートリガーを引いてな?そのまま爆連よ!」
「昨日、って、飲み会の時にあんなに静かだったのに・・・。」
「ビビったべ。」
「で、衝動買いですか?」
「狙ってたんだよ。良いグラボが欲しくてな?ついでにって考えてたら、新品で揃えたくなって・・。電源とCPU以外は買い替えたんだ。んで、お前にはこれをやる!」
「電源とCPUの無いパソコン・・ですか・・・。」
「逆に言えば、電源とCPUを買えば、そのまま動くって事だ。5~7万あれば良い感じになると思うぜ?」
五万・・・。微妙に行けなくもない金額だな・・・。
「有難く、頂戴いたします!」
五万か・・・。
暫くは、動くことの無い鉄の箱が俺の部屋に来ることになった。




