一年の終わりと
授業の代返や、遅刻しながらも出席した努力が実を結んで、1年目の成績表は中々の物だった。
卒業単位が124単位必要なのだが、1年目で既に56単位取り終える事が出来た。
正直、がんばった、俺!
このペースでいけば、2年が終わるころには必修科目岳しか残らないだろう。
まぁ、俺は教員免許も取得する気でいるので、あと30単位くらいは多めにとっていかないといけないが・・・。
ま、些末な事だ。
内心浮かれていたが、そんな心情を顔に出さずに過ごすことにする。
何故って?そんな事をすれば、代返してもらえなくなるし、代返させられるからに決まっているからな。
で、好調な1年間を終える前に、不死身荘にも新しい住人がやってきた。
新1年として入ってきたのは4人で、全員が不死身荘の2階に住むことになっている。
来週あたり、新入生歓迎会が行われると大家さんからお達しがあった。
山田代表と眉唾副代表は、皆から惜しまれながら卒業していった。
いつの間に就職活動をしていたのか、山田代表は、聞いた事が有る食品関連の会社に就職。眉唾副代表は公務員らしい。
おれは、どんな選択をするんだろうな・・・。
学校から不死身荘に戻ると、自転車置き場に清松がいた。
今から単位の確認に向かうらしい。
「早えもんだな。1年って。」
「そだな。ここに来た初日の事を思い出すよ。ちょっと雨が降っていて、一緒に酒飲んで・・・。」
「いつの間にかボ研に入れられていて・・・。なんでだろうな?」
「大家さんの影響が有るんじゃない?ま、活発な部活じゃないから、結構自由にできて有難いけどな。」
1年も経つと、かなり標準語寄りになってくる。
俺も清松も、イントネーションは少し違うものの、かなり浸食されてしまった様だ。
「そう言えば、最近、コバエが多いよな?」
「そうか?お前んとこだけじゃね?」
「そうかな~。洗濯機の排水管から来てるのかな~?」
「お前、自分の部屋で量産するなよ?」
「はぁ?しねぇし!そこまで汚くねぇよ!」
そうなんだ、暖かくなってきたと同時に、コバエが出るようになったんだ。
1日数匹、窓に張り付いている・・。内側に・・・。
面倒だから、ティッシュで潰したり、ガムテープで潰したりと殺虫剤を使わずに潰していったのだが、なぜか減っていかない・・。
おかしい。部屋はそこまで汚くない。
変な匂いもしない・・・。
とりあえず、どこから入ってきているかを調べないといけないな・・・。
秋ごろに趣味で購入していたハンディーライトを片手に、部屋の中を探索する。
と、それはすぐに発見された。
玄関横、炊事場のゴミ箱からハエが出てきている・・・・。
俺の部屋で量産しとるやないかい!!
まずは、ゴミ袋をゴミ箱の上からかぶせる。
・・・3匹ほど、ゴミ袋に引っ付いた・・・。
コバエが発生するような物が、このゴミ箱の中にあっただろうか?
俺は、意を決してゴミ箱をひっくり返し、ゴミ袋内に中身を移す・・・。
ぼふぅ・・・。
そんな音を出しながら、緑色の粉と一緒に内容物がゴミ袋内に出てきた。
緑の粉?・・・緑カビ!!!!
何だろう?ペニシリンでも育成する実験をしていただろうか?
ゴミ箱から緑カビの胞子が出ないように、手に力を込めながら、内容物を確認する。
・・・あぁぁ。年末に送られてきたミカン・・・。つぶれた奴を捨てたっけ・・・。
まったく・・。腰痛の追撃をかますわ、コバエの発生源を作るわ・・・・。
ま、俺が悪いんだけどね。
俺はその状態のまま、部屋の外に出てゴミ捨て場へ向かった。
緑カビの胞子が静まるのを待って、ゴミ袋の口を結ぶ。
多少、緑色の粉末が大気中に放たれるが仕方がない。
ゴミ捨て場の横にある水道で、ゴミ箱を洗う。
更に、緑色の粉末が飛散する・・・・。
20分ほどの間、ゴミ箱と格闘した後、やっと綺麗なゴミ箱に出会う事が出来た。
・・・はぁ、散々な目に合った・・・。自業自得ではあるが・・・。
それからと言うもの、その部屋には、コバエが出る事は無かったと言われる。
めでたしめでたし・・・。




