また酒を飲むの?
今日は、学校の予定を確認する日だ。
朝早くから・・・と言うか昼前に学校へ足を向けた。
来月から、この学校の生徒か。
学校の正門から入り、右側に掲示板が並んでいる。
・4月1日 10時 入学式 2号館 全学部
・4月3日 9時 学部別ガイダンス 詳細は下記・・・
掲示板の横には、新入学制の為の学園地図が掲示されている。
「えーと、2号館は・・・。ここか。で、3日がガイダンス・・と。」
俺は携帯のカレンダーアプリに日程を落とし込み、駅前へ買い物に向かう。
ちなみに、この予定をみて、え、3日からダンスが有るの?とかは思っていない。ほんとだぞ?
駅前で、キッチン用品を購入すると軽く1万円を超えてきた。物価の高騰は、学生にとって致命的な影響を与えている。国は、学生に打撃を与えてどうしようというのだろうか・・・。
駅前から不死身荘まで自転車を飛ばして帰ってくる。
と、アパートの横で大家さんが何かの準備をしている。
「こんにちは。なにしてるんですか?」
「あら、麝香さん。今日の18時から、新入生の歓迎会をするから、その準備よ?あなたも参加しなさいね。」
やたらと体格のいい大家さんが笑顔で準備を進めている。
庭に茣蓙を敷いて、折り畳みテーブルを4つ、照明用のライトが壁の雨どいに設置されている。
そして、ビール瓶のケース・・・8ケース?12本入りですよ?
「ちょっとあんた。お酒は飲めるんでしょ?」
「え、まぁ。18ですが・・・。」
「そぅ、飲めるのね。」
そう言うと、大家さんは大きな鉄板をもってこっちに来る。
「ほら、そこのブロックに鉄板を置くから。」
「ああ。すみません。」
「まだ時間はあるから、ゆっくりしておいで。」
そう言うと、大家さんは楽しそうに準備を進めていく。
俺は、言葉に甘えて、自分の部屋の片づけに入った。
量は多くないのだが、中々場所が決まらない。昔から、俺の部屋って片付いてなかったよな。
荷物と格闘していると、外から声が聞こえてきた。
どうやら、ここの先輩方がやってきたのだろう。照明用ライトもつけられている様だ。
「そろそろ行くか。」
いつの間にか、17時45分だ。
「お!来たな!本日の主役、4人目!」
「どうも、麝香です。よろしくお願いいたします。」
「まぁ、挨拶は後だ。そこに座んな。」
見渡すと、先輩らしい人が5人、同年代っぽい人が俺を含めて2人。・・・あれ?同期って誰だ?
「遅くなりました~。」「ち~っす。」「ども。」
少し遅れて、男が3人やってきた。清松もいる。
「よぅし!全員揃ったね!じゃ、恒例の新入生歓迎会を行うよ!乾杯の前に、年長者の自己紹介をしよう!まずはあたし、ここの大家こと乙姫だ!大家さんでも、姫でも良いぞ!」
「よ!大将!」
「こら!姫だって!」
大家さんは肌寒い中でタンクトップを着ている。そこから伸びる二の腕は、俺よりも圧倒的に太い。
何者なんだろう。
「じゃ、次は俺だな。俺は工藤 寛太だ。青森出身。ま、工藤って名は、青森じゃ珍しくない名前だし、覚えやすいべ。ヨロシク。」
青森か。清松と一緒の地元か・・・。確かに喋り方が似てたな。
工藤さんは眼鏡をかけたマッチョだ。
「じゃ、次はおれ、舛添 太陽。最近新幹線が来たばっかりの福井県出身。まともなイオンも無い県出身だけど、よろしく。」
舛添さんは、工藤さんよりも一回りでかい。
なんでこのアパートは、こんなにもガタイの良い人が集まってんだか。
「最後はおれな。双又 浩二だ。千葉県出身。このアパートは、女人禁制だから、女を連れ込むんじゃないぞ?」
「あんたが一番規則を守ってないんだろうが!」
大家さんの拳骨が双又さんの頭を直撃した。
「ったたた。」
それでもひるまない双又さん。体つきは細身だが、いわゆる細マッチョというやつだ。
「じゃぁ、ここに来た順に自己紹介してくれや。」
双又さんのご指名で、一人が立ち上がる。
「熊田 義男です。東京出身です。通いでも良かったんですが、通勤ラッシュに巻き込まれたく無かったんで、ここに決めました。よろしくお願いいたします。」
「よし!ほら、コップを持て。・・・そう。・・・ほらほら・・・。」
熊田が手に持ったコップに、なみなみとビールが注がれる。
呆気に取られている熊田に、双又さんが追い打ちをかける。
「じゃ。カンパーイ!!」
「「カンパーイ!!」」
何が何だか分からない内に、熊田とその他先輩方がビールを一気に飲み干した。
「うぇ~い!」
「次!」
熊田と同じくらいの背丈の男が立ち上がる。こいつ、同期だったんだ。
「ども!玄田 泰斗です!東京出身です!女人禁制ってのは聞いていなかったんで、見つからない様にします!」
「見つけるからね!ほらコップ。」
玄田と熊田にビールが注がれる。
「あれ、俺もっすか?」
「じゃ。カンパーイ!!」
「「カンパーイ!!」」
このペースでいくと、熊田は7杯ものビールを自己紹介だけで飲むことになりそうだ。
もう少し遅く来ればよかったか・・・。
「俺は、坂下 智信です。愛媛出身です。酒はあまり飲めないので、お手柔らかにお願いします。」
坂下はかなり小柄だな。横から見たら女かと思うほど髪を長く伸ばしている。
「ほい。カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!」」」
とうとう俺の番が来てしまった。こういうのは苦手なんだけどな~。
「どうも、麝香 弘です。舛添さんと同じ福井県出身です。駅前で恐竜が蠢いている辺りから来ました。よろしくお願いいたします。」
「よ~し。お前はこれを持て。」
「・・・コップじゃなくてジョッキですか?」
「あぁ、4人分のハンデが有るからな。」
話をしている間にも、ジョッキにビールが満たされていく。
「じゃ。カンパーイ!!」
「「「「カンパーイ!!」」」」
ビールは一口目とはよく言ったものだ。連続して流し込んでいくと、苦みが勝ってしまって美味しくない。
しかし、途中でやめる訳にもいかず、一気に飲み干すことにした。




