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【第1部完結】空想旅行社ラピエス【第2部開始】  作者: ことのはじめ
7.勇者、拾いました

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7-9 ファーブラへ

 ファーブラ。そう言われてライナスはハッとする。


「ファーブラ……そう、ファーブラだ! 私の故郷の名は!」

「おっ、思い出せたんだな」

「よかったね、ライナスさん」


 ライナスは力強く頷いてみせる。


「となれば、早速ファーブラまで船を飛ばそうじゃないか。ドグ、仕事だよ」

「ったく、わしのオルテンシアに無茶振りばかりさせおって」

「はいはい。ほら、いくよ。アデーレ、ファーブラまでの航路割り出ししておくよ」


 レアはドグを宥めつつアデーレに声をかける。


「ええ、お願い。ライナスさん、レアについていってもらえる? 航路の割り出し手伝ってあげて」

「わかった、同行しよう」


 アデーレはそれを聞いてライナスに同行するよう頼んだ。ライナスは頷き、レアの後をついていく。それを見届けてからアデーレは手を叩き、残った面々に出航の合図を出した。


「さ、早いところファーブラまで行ってライナスさんを送っていきましょ!」


 それぞれが返事をし、一行は早速魔法の国からファーブラに向かうこととなった。

 レアがライナスを操舵室に連れていくと、ライナスはその機械の多さにまた驚いていた。


「こんな機械仕掛けの船だったとは……最先端の技術を使っているのだな」

「作られたのは三十年前さね。それよか、こいつを見ておくれ」


 レアが広げたのは狭間の地図だ。魔法の国の側の小世界群を指し、レアはライナスに言う。


「この辺りのどれかがファーブラなんだけど、正確な位置を示すのにはもうちょっと手引きが必要なんだ。そこで、あんたの出番ってわけさ」


 ライナスが地図を覗き込むと、名前のない世界が散っている。だが、世界の地図を見たことがないライナスにはなにが描かれているかまるでわからない。


「なんのことだって顔だね。大丈夫、あんたがこの地図に手をかざして自分の故郷のことを強く思えば、ファーブラがどこかすぐわかるさ」

「そういうものなのか?」

「そういうもんさ。さ、やっとくれ」


 レアに促され、ライナスは早速地図に手をかざす。そして目を閉じて故郷ファーブラのことを強く思った。


 ファーブラ。魔法文明の遺産が残る、牧歌的で穏やかな世界、険しい山岳もあった。広い海原も渡った。自然は広く、そして人々は優しい。王がいて、民がいて、冒険者として巡った数々の遺跡や洞窟。


 かけがえのない仲間たちの顔、そこへ帰りたいという願い。全てを込めてライナスは願った。


 ――帰りたい。


 ふわり、と地図が光り、描かれている世界の一つが輝き出した。その輝く世界こそが、ファーブラだ。


「よっし、光ったね。これでどの世界に向かうか決まったよ」


 レアがガッツポーズをして、輝く世界にピンを刺した。ライナスは目を開けると、光っている地図にまた驚く。


「これは、一体……?!」

「ファーブラの位置があんたの導きでわかったのさ。この地図はいきたい世界を思えばそこに応じた世界が光る仕組みなのさ。といっても、最低限名前がわからないとどこだか判定できないっていう代物ではあるんだけどね」

「だから、私の故郷の名が必要だったのか」

「そういうこと。後はあたいの仕事だよ。あんたは船内に戻ってゆっくり故郷に着くのを待ってておくれ」


 そう言ってレアはライナスを操舵室から出すと、早速航路の選定に入ってしまった。


 ライナスはやることもないからデッキから船内に戻るが、荷物整理はエーヴェルとしたばかりである。そのエーヴェルも出航前の準備は一人の方が捗るからといってライナスを休ませようとした。


「あ、ライナスさんも暇って感じ?」


 手持ち無沙汰で船内をぶらついていると、スタッフルームに行こうとしたウィンと鉢合わせた。


「ああ、レアさんの手伝いが終わったのだが、どこも人手が足りているようで」

「だったらそうだなぁ、私も暇だし、ユヅルハさんにちょっかいかけにいこっか! 私たちみたいにお客様いる前提の仕事ってこういう時ほどやることなくって暇に成るんだよね」


 いこいこ! とライナスはウィンに手を引っ張られ展望室に連れていかれる。ライナスは戸惑いもしたが、やれることがない以上ウィンに付き合うのも悪くはないかと後についていった。


「おや、ウィンさんにライナスさん。どうかなさいましたか?」

「いつものだよ、ユヅルハさん。私たち暇人トリオってことで」


 ウィンが言いながらカウンターに着き、ライナスを手招きする。ライナスも招かれるままに席に着くと、なるほどとユヅルハが頷きメニューを出してきた。


「では、こちらを。ご注文があればお受けいたします」

「じゃあレモネード!」

「かしこまりました」


 早速レモネードを作るべくレモンを取り出したユヅルハに、ライナスは困ったようにメニューに目を落とした。


「ファーブラのような世界でしたら、エールなどありますが」

「本当か? あるなら、頼んでもいいのだろうか」

「構いませんよ。あなたも一時とはいえお客人であることに変わりはありませんので」

「そうか、すまない」


 ジョッキにエールを注ぎながら、ユヅルハは言う。


「ファーブラに着くまでの時間、せめてごゆっくりお過ごしください」

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