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【第1部完結】空想旅行社ラピエス【第2部開始】  作者: ことのはじめ
7.勇者、拾いました

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7-7 情報収集

「この辺りの世界のこと? 次元の狭間を行き来するようになってから随分経つけど、取るに足らない世界をつまびらかにしてなにが楽しいんだか」


「魔法の塔? 魔力集積塔ね、都市のはどんどん作り替えられてるんだけど、今議事堂の周りに建ってるのは大体昔の文化財ですよ」


「ディバインソード……? あ、その儀式用の剣のことでしょ。昔は形にこだわってたからね、魔力制御端末もそんなに大きくってさ。骨董品持ち歩いて、もしかして古典主義者?」




 などなど。戻ってきた面々はそれぞれ魔法の国で聞いてきたことを話しだす。賑やかな展望室でユヅルハはニコニコとしていたが、情報は余さず拾っているようである。


「……ふむ。どうやらライナスさんの仰る魔法文明は、この国のことで間違いはなさそうですね」


 皆が持ち寄った情報を総括してユヅルハが言う。


「でも、この国出身だったら、こんな昔のことって言われるのはおかしくない? 別に世界の半分も飲み込まれたわけじゃなさそうだし」


 ウィンがおかしい、と首を傾げる横で、アデーレが声を上げる。


「それだったら私の聞いてきたことが関係あるかもしれないわ。昔、魔法の国はもう少し広かったらしいんだけど、魔力制御の失敗のせいで国土の一部を切り離して放棄したらしいの」

「ほう……」

「だから、この辺りの小世界群の一部は元々魔法の国の一部だった、って話なんだけど」


 アデーレの言葉に、ユヅルハがふむふむと頷く。


「失われた魔法文明と、今も栄える魔法国家。そして切り離された国土。なるほど、つまりはライナスさんの世界は切り離された国土、散り散りになった小世界のうちの一つと」


 ユヅルハの推理に、おお、と皆が唸る。しかし操舵室から顔を出したレアは困る、といった顔でユヅルハを見やった。


「でもその国土が幾つになったかも、どの世界かも分からないんだろ? 魔法の国の周りだって大きめの小世界が三十はあるんだ、一つ一つ巡ってたらキリがないよ」

「では、いかにして目的地を絞るかですが……」

「ライナスさん、まだ故郷の名前って思い出せそうにないですか?」

「ぐ……すまない。私もなんとか思い出そうとしているのだが」

「謝らなくていいよ。無理言ってごめんなさい」


 申し訳なさそうに下を向くライナスに、ウィンも悪いことを言ってしまったと謝る。

 少しの間暗い雰囲気が展望室に広がるが、「そうだ」とエーヴェルが何か閃いたように声をあげる。


「ライナス、お前の冒険譚、まだ全員に聞かせてなかったろ? せっかくなんだ、みんなに聞かせてやってくれよ」

「だ、だが……」

「いいわね、私もざっくりしたこと以外は聞いてないから、もっと詳しく話を聞いてみたいものね」


 アデーレも同調し、エーヴェルと一緒にライナスの話を聞こうという。


「ええ、いい案だと私も思います。あなたの話も加われば、もしかすると新たな情報が出てくるやもしれません」


 ユヅルハのもっともな言葉に、レアも頷いてみせる。


「じゃあ、ドグも連れてこないとね。考える人数は多い方がいいだろ?」


 言うなりさっさと展望室を出ていくから、ライナスは後に引けなくなってしまう。


「いや、私は……」

「まあまあ、うちの人たちって変に人がいいからさ。それに僕も聞きたいな、ライナスさんのお話」


 クロードにまでねだられると、もうライナスは話すしかなくなってくる。いつの間にかライナスの横には水差しとグラスが置かれ、しれっと話すための準備までされている有様だ。


「ライナスさん、がんばれ!」


 とどめにウィンからエールを送られ、ライナスはもう観念するしかなくなってしまう。


 そしてあれよあれよといううちにライナスの講話会場が展望室に出来上がってしまった。


「酒場で話すのは気楽でよかったんだが、こういうふうに畏まられると……」


 ライナスが妙に緊張するものだから、エーヴェルは肩をぽんぽんと叩いてリラックスするよう促してやる。


「ったく、騒がしいと思えばなんだ」


 一人機関室から引っ張り出されたドグは不服そうだったが、話を聞く気はあるようだ。椅子にふんぞり返ってはいるがライナスの方はしっかり見ている。


「じゃあ、始めてもらおうかしら」


 カウンターにかけたアデーレがいい、他のみんなが拍手をする。すっかりライナスの話を聞く準備が整ってしまっている。

 もう観念するしかないだろう。


「昼間話した時のやつ、お願いしまーす」


 ウィンからはもうリクエストまで届いている。もうこうなったらやるしかないだろう。


 こんな数人の前で話を聞かせるだけだ。無の魔王に立ち向かった時よりもずっと簡単でしかし気恥ずかしいミッションである。しかしライナスは勇者だ。勇者のプライドに賭けて、ここは自分の冒険譚を語り上げなければならないだろう。


「では……」


 水差しの水を早速飲み、喉を潤す。


「始めさせていただこうか!」


 ライナスの力強い宣言に拍手と口笛が鳴り響く。そうだ、実際このくらい盛り上がる冒険をしてきたのだ。この程度のことができなくてなんだという話だ。屁でもない、語り上げることなど。


 男ライナスの大舞台なわけだし。

 あとはなんと言っても、勇者だし。

 できないはずがないのだ。

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