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【第1部完結】空想旅行社ラピエス【第2部開始】  作者: ことのはじめ
6.心残りの魔法

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6-7 交渉

 クロードはオルテンシア号に戻るとすぐにアデーレの元に向かう。支配人室で事の次第を話せば、アデーレはふむと思案した。


「歩廊周りの遊覧飛行……なるほど、言いたいことはわかりました。ですが遺跡の管理局に許可をもらわないといけないわね」

「それって、すぐにもらえるものかな?」

「そこは交渉してみないことにはなんともってところね」


 クロードはジェームズに歩廊の景色を見せたくてしかたなかった。アデーレはこういった申し出にはすぐに頷いてくれるのだが、毎回そうなるとは限らない。

 ジェームズには客室で待ってもらっているが、クロードはなんとかいい報せを持って帰りたかった。


「歩廊は去年崩落したばかりなのでしょう? だったら、しばらくの間は立ち入りだって禁じられているはず。それに船の安全も考えれば迂闊に近づけないのもわかるわね?」

「う……それは、そうだけど」

「とりあえず、遺跡の管理者にかけ合うだけかけ合ってみるわ。できればいい思い出にしたいものね、あなたの気持ちもわかるわ」

「ありがとう、アデーレ」


 アデーレはクロードから礼の言葉を受け取ると、スーツのジャケットを着直して颯爽と部屋を出ていく。

 クロードはといえば、結果をジェームズと待つことくらいしかできない。


「おや、クロード君。私なんかのために、すまないね」


 客室をノックして入れば、ジェームズはテーブルに着いて手紙を見つめていた。ぼんやりとしていたようにも見えたが、クロードが来るとすぐにはっきりとしたトーンで答える。


 窓の外は日が翳り始める頃で、少しずつ傾いていく太陽が強い光を放っていた。

 少し寂しくなるような日の色に照らされ、ジェームズは手紙を懐にしまう。


「あの、今支配人が遺跡の管理者にかけ合ってきてて、どうなるかはその後になるんですけど……」

「ああ、そんな事までしてくれて。本当にありがとう。こんな老人のわがままに付き合わせてしまって悪いね」

「そんなことないです。これはどちらかと言えば僕からのお節介で、ジェームズさんに少しでも満足してもらおうって思っただけのことなんですから」

「本当に優しい人だ。君は人が悲しむ姿を見たくない、そんな人に見えるよ」


 ジェームズの言葉に、クロードは少し視線を泳がせる。慣れないことを言われて少し落ち着かないのもあるが、ジェームズに悲しんでほしくないのは本当だから言い当てられて恥ずかしいのもある。


「僕はただ、力になりたいだけなんです。誰かが苦しかったり悲しかったりした時に側にいる、それだけでもしてあげたいってだけで」


 照れくさいせいで、上手く言葉が出てこない。だが、ジェームズにはそれで十分だったようだ。


「ありがとう。歩廊に行けなくても君のような若者と出会えただけで、この旅がいいものだったといえるよ」

「若者……若者かな僕……」


 ぽそ、と独り言を呟くクロードだが、ジェームズには聞こえなかったらしい。


「あの、よかったら、支配人が結果を伝えに来るまでここにいてもいいでしょうか?」

「構わないよ。私もちょうど一人じゃ暇だったからね、話相手がほしかったんだ。なってくれるかな?」

「はい、もちろん!」


 ジェームズからの申し出に、クロードも笑みを浮かべて頷いた。

 アデーレが戻ってきたのは、それから小一時間ほど経ってからのことだった。客室のドアをノックされ、一緒にテーブルに着いていたクロードがドアを開けに席を立つ。


「クロード。交渉してきたわよ」

「アデーレ、それで結果は?」

「ジェームズさんもいらっしゃることですし、まずは部屋に入れてもらえないかしら」


 アデーレはクロードに促されるまま部屋に入ると、丁寧にお辞儀をしてジェームズに向き直る。


「ジェームズ様。ご要望のありました歩廊周辺の遊覧飛行の件をお伝えしに参りました」


 ああ、と頷くジェームズに、アデーレは粛々とした様子で交渉の結果を述べていく。


「遺跡管理者に歩廊周辺の遊覧飛行の許可をもらいに参りましたところ、崩落して間もないため、歩廊直近の航行は現在禁止している、とのことでした」


 許可が下りなかったのか、と一瞬落胆の色をジェームズが見せる。クロードも雲行きの悪い結果になりそうだと俯いたところ、アデーレは口の端に笑みを浮かべて続きを述べた。


「ですが。歩廊から一定距離離れた状態であれば、航行は可能。他飛行船の航行予定を鑑みまして、三十分ほどの短い航行になりますが歩廊周辺を一周する遊覧飛行の当日許可をもらって参りました」

「アデーレ、それじゃあ」

「もちろん今すぐ、というわけではありません。明日の午後、本船は遊覧飛行のため出発、そのまま帰路に就かせていただきます」


 得意げに予定を話すアデーレに、クロードはジェームズの方を向いて喜んで見せた。そしてジェームズも、そこまでしてくれたということと歩廊の景色を遠巻きでも見られることに、深く感謝をの意を示した。

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