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【第1部完結】空想旅行社ラピエス【第2部開始】  作者: ことのはじめ
5.オルテンシア号の休日

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5-2 忍び込んだ人影

 飛行船に忍び込んだ人影ことトーマス少年は初めての飛行船にドキドキが止まらなかった。十歳の目には、飛行船の内装だって新鮮に見えるだろう。

 まるで豪華客船に迷い込んでしまったかのような気分である。搭乗口から広がる廊下は赤いカーペットが敷かれていて、それを伝って歩いていくと客室らしき部屋が二つ並んでいる。


「うわあ、すっげぇ……」


 無遠慮にドアノブを回せば鍵がかかっていなかったのかあっけなくドアが開き、きちんと掃除され整えられた客室がトーマスの前に現れる。感嘆の声を上げたトーマスはすぐにふかふかのベッドに目を奪われ、勢いよくベッドにダイブした。

 ぼふ、と音を立ててベッドはトーマスを受け止め、トーマスはそのふかふかな心地を味わうようにごろごろとその上で転がった。


「ベッドもなかなかいいな、これなら眠くなってもぐっすりだ」


 トーマス号としてベッドがふかふかであることはいいことだ。そうトーマスは結論づけると、さらに飛行船内を探検しようとベッドから飛び出した。船首と反対方向に走ると、関係者以外立ち入り禁止の札がかかった部屋を見つける。ここのドアも鍵がかかっておらず、すぐにトーマスは中に入る。


 客室程度の広さだが、ロッカーとテーブル、ソファが置かれたそこはどうやら船員の使う部屋のようだった。ちょっとごちゃついていてあまり綺麗とは言えない。それにどことなく大人の匂いがする。妙に居心地が悪くてトーマスは顔を顰めてスタッフルームを後にした。


「未開の部屋を発見、でもトーマス探検隊はまだ終わらないぞ」


 そしてその隣の部屋にも侵入を試みる。中に入るとどうやらそこは厨房のようだった。調理台とシンクに、コンロも置かれている。隣にある大きな冷蔵庫を開けると、さまざまな食材がきっちりと整理されて並べられていた。


「おお、トーマス探検隊、食料を発見。でもピーマンはいらないや。ソーセージとかあるかな?」


 そうやってごそごそ探ってみるが、ソーセージはなく肉の塊があるだけで、到底そのままでは食べられない。


「お母さんがいないとお肉料理してもらえないや……」


 ステーキが何人分も食べられそうだが、その前に調理できなければただの肉の塊である。

 トーマスは泣く泣く諦めて厨房から出てきた。


「でも、トーマス探検隊、こんなところで探検をやめるつもりはないぞ。なんとかして操縦室に行って飛行船を発進させないと」


 トーマスは意気込んで厨房から出ると、さらに船尾の方に向かった。


「こっちはなんだろ……? さっきの豪華さがなくなってきたなぁ」


 赤いカーペットは途切れ、板張りの廊下が続くばかりだが、一番奥の扉は頑丈そうな鉄の扉だ。


「もしかして操縦室とか、重要な場所なのかも!」


 今まで操縦室に辿り着けなかった分、トーマスの期待も高まる。トーマスは期待を込めて鉄のドアを開けようとするが、子供には重すぎるのかびくともしない。


「くっ、トーマス探検隊、こんなところで諦めるもんか!」


 扉を力一杯引いてもちっとも動かない。なんとか開けようと踏ん張ってみるも、びくともしない上にどんどんトーマスは手が痺れてくる。


「うぅ〜、開かない……!」


 さすがに手が痺れてきて、トーマスは手を離す。重い扉を押したり引いたりしてみるが、やはり動かない。トーマスは少し考えたあと、別の場所を探しに行こうと決めた。


「この扉は開かずの扉だ! 船の先頭にはこういうのないもんね、だから操縦室はその逆にあるはず! トーマス探検隊、操縦室まで行くぞー!」


 そしてトーマスは勢いよく廊下を走り先ほどとは正反対の船首に向かっていく。

 船首には展望室があり、トーマスはそこに飛び込むが。


「ここかな? でも舵もないし……あっ、隠してるのかも!」


 ガラス張りの展望室にはバーカウンターとラウンジになっているほか、特に操縦に必要そうなものなかった。

 だがトーマスはそれが逆に隠し部屋というように見えたのかもしれない。ラウンジを歩き回り、椅子をどけては隠しスイッチの一つでもないかと探し回る。


「ないなぁ、あ、カウンターで操縦するのかも!」


 そしてカウンターに潜り込むと小さな流し台をみたり冷蔵庫を開けたりして操縦桿がないか調べていく。

 だが、操舵室が別にあるところからわかるようにそこにはそういったものはなく、探せど探せど酒瓶やらグラスやらしか出てこない。


「なんかコップとお酒しかないや。飲めないしこんなの意味ない〜」


 カウンターをひっくり返しても何も収穫がない。トーマスは諦めて、カウンターから出てくると服の裾をはらってため息をついた。


「操縦席もないのに動くのかなぁ。もしかして自動運転なのかな?」


 トーマスが閃き、展望室のガラスに顔をくっつける。

 見晴らしのいい展望室はドックの中もよく見え、その先に広がる草地まで鮮やかにトーマスの目に届けていた。


「ちぇっ、つまんないの」


 顔をくっつけたままトーマスが呟いたところに、ぐいと、首根っこを持ち上げる男が一人。


「おう坊主。俺の船荒らして何してたのか聞かせてもらおうか」

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