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【第1部完結】空想旅行社ラピエス【第2部開始】  作者: ことのはじめ
2.ガラスの国の乙女

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2-2 ガラスの乙女と食べ物事情

 オルテンシア号発進後、スタッフルームに引っ込んだウィンとエーヴェルは口を揃えて言った。


「ねえ、今回のお客様」

「ああ」

「すっごく美人だよね」

「ものすごい美人だな」


 珍しく意見の一致した二人に、その場にいたクロードがくすりと笑う。


「やっぱり息が合うね、二人とも」


 不満げにウィンがクロードを睨むが、クロードはどこ吹く風だ。そもそも気にしていないのかもしれない。


「う〜。でもグレイシアさん線が細くてちょっと力をいれたら折れちゃいそうって、ああいうのをいうのかも。歩いている時もふらっと倒れちゃいそうで不安になっちゃったよ」

「倒れそうに、ね……」


 ウィンがグレイシアの美人さと儚さに思いを馳せる中、エーヴェルは何かに勘づいているのか小さく頷いただけだった。


「でも、ガラスの国の人ってどういうものを食べるのかな。現地の食生活を調べてみたけど何にも資料がなくて」


 それに気づいているのかいないのか、クロードがのんびりと厨房の様子を悩みだす。厨房では航行中の食事全般を受け持つため、旅行客の好みにも合わせて料理を出すのがクロードの仕事だ。もちろん乗務員の食事もまかなっているため、実質ウィンとエーヴェルはクロードに胃袋を掌握されている。

 そのクロードが料理に困っているのだから、ガラスの国食事事情はよっぽどなのだろう。


「なんだろうね、あたしもガラスの国って初めてだから、あんまり詳しいことはわかんないや」

「エーヴェルは? なにか知ってる?」


 クロードが聞けばエーヴェルはウィンと同じようにかぶりをふる。


「あいにくだが俺もお前たちと同じ答えだよ」


 三人で唸っているとチリン、と涼やかな音を立ててスタッフルームのベルが鳴った。


「あ、お客様が呼んでるみたい。行ってくるね」

「ああ、行ってこい。ついでに飯のことも聞いてきたらいいんじゃないか?」

「いってらっしゃい」

「はーい」


 ウィンは呑気に返事をすると身だしなみを整えてからスタッフルームを出る。

 部屋の前に行くまでに意識を切り替えて、客室をノックするときはもうすっかり仕事の頭に切り替わっていた。

 ノックをしてグレイシアの応答を待てば少ししてドアが開けられる。


「ルームサービスです。何かお困りのことがございましたか?」

「ええ、困ったこと、というほどではないのだけれど」


 グレイシアは少し言いづらそうにしている。ウィンはにこりと笑って言ってみせる。


「お客様に快適な旅をしていただくことが我が社の理念ですので。どんな些細なことでも、遠慮なくお申し付けください」

「そう……? でしたら、私お話相手がほしいの。一人で旅行なんて初めてですし、しばらく乗る船ですから、一人きりでいるのもつまらなくって」

「はい、それでしたらお話相手はたくさん控えております。支配人のアデーレをはじめ、私や客室乗務員のエーヴェル、シェフのクロード、展望室のバーテンダーユヅルハなど、お好きにご指名いただけます」

「まあ、たくさんいらっしゃるのね。でしたら……そうね、私、あなたとお話したいわ。よろしいかしら」

「はい、もちろんです。よろしくお願いいたします、お客様」

「グレイシアでいいわ。せっかくお話するのだもの、お互い名前で呼び合いたいわ」

「かしこまりました。では、グレイシアさん、よろしくお願いします」

「ええ、よろしくね、ウィンさん」


 早速、ウィンはグレイシアの話し相手をすることになった。客室に入り、備え付けのテーブルについて二人で取り止めもなく世間話をする。


「私、ガラスの国に来たのは初めてなんです。ガラスでできた国、というのは知っていたんですが、本当に全部ガラスなんですね」

「ええ、みんな最初にくるとそう言って驚くけれど、意外とすぐに慣れるものよ」


 ウィンの素直な感想に、グレイシアはくすくすと笑いながら答える。


「ガラスの国は他の国に比べると珍しいっていう人が多いけれど、私はこの国しか知らないからここでのことが当たり前なの。だから私、外から来る人のお話がもっと聞きたいわ」

「私でよければ、いくらでも。気になったんですけど、みんなガラスでできてるのならどういうものを食べたりして過ごしているのか、ちょっと気になります」

「食べ物……? 外の人たちが食べているものよね、ガラスの国に食べ物はないわ」

「えっ、本当ですか?」


 驚くウィンに、グレイシアはええと頷いて話を続ける。


「ガラスの国の人間はガラスでできているのだけれど、食べ物を食べる代わりに光を栄養にして過ごしているの。お日様の光を栄養にして活動しているのよ」

「だから食事に関するお話がなかったんですね。じゃあ、お日様の光を浴びればご飯を食べた、ってことになるんですか?」

「ええ。せっかくですから、私たちの日光浴、あなたたちでいうところの食事を見せてあげるわ。この船で一番日当たりのいい場所はどこかしら?」


 グレイシアはそう言って席から立ち上がった。

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