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銀牙無法旋律ブルーローズ act2~絶望を希望に変える銀牙の『性悪女』~  作者: 楠本恵士
OMEGA・惑星【ユーフォリア】無法の旋律よ永遠に……
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十七・地下プロレスのジャーマンスープレックス

 惑星【ユーフォリア】偽りの幸福星──。

 西部劇風のサファイヤ色の荒野惑星ユーフォリアの衛星は一つ。

 内部に巨大な昆虫が閉じ込められたような影が浮かぶ、琥珀色の衛星【衛星フィーネ】


 その衛星フィーネは、一部が砕けた、小惑星群になっていた。

 その小惑星群こそが、織羅・レオノーラの名を銀牙系に知らしめた『コレクション事件』の痕跡だった。


 ◆◆◆◆◆◆


 荒野で興業用に張られたテントの中で、銀牙プロレスの興業が行われていた。

「きょほほほっ、今日もお札の黄金雨を降らせますわ……あなたがたの今まで犯してきた罪を数えるのですわ」

 美鬼がバラ撒く、金色の札がリング上に舞い落ちて、ヒューマンタイプ種族の観客を魅了する。

 紙幣をリングに上って拾い集めている観客に向かって、コーナーに登り立った。

 惑星トーラス出身の軟体女子プロレスラー少女『アルゴ・リズム』が、人差し指で天井を示して叫ぶ。

「いっくぞぅぅ! このイナズマ技で目を覚ませ!」

 空中に飛んだリズムの首から下が、八本のタコ足に分かれて広がる。

 リズムは、そのままリング上で紙幣に群がる観客数名を巻き込んで、対戦相手のヒューマン型男性レスラーをタコ足で包み込んでホールドした。

 タコ足の広がった皮膜に顔面が圧迫される、対戦相手のプロレスラーと観客。

 ドクターストップのゴングが鳴り、リズムの勝利がレフェリーによって宣言される。

「きょほほほっ、庶民のみなさんにナラカ号でのみ使えるお金の、大盤振る舞いですわ」

 美鬼アリアンロードの紙幣吹雪が再びリングに舞った。


  ◇◇◇◇◇◇


 試合終了後──リズムのトレーラー控え室で、頭部だけ美少女で体は軟体タコ生物の姿で、椅子に座って休憩しているリズムの所に、興業主の美鬼アリアンロードがやって来た。

「きょほほほ、お疲れさま見事なファイトでしたわ」

「ありがとうございます」

 リズムは、皿に盛られた摘まめる水のゲル塊を触手でつかんで口に運ぶ。

 美鬼が水を食べているリズムに質問する。

「ところで、今日対戦したヒューマンタイプの男性レスラー試合中に何か、違和感は感じませんでしたか?」

「いや、特に何も」

「そうですか……わたくしには、何か攻撃を 躊躇(ちゅうちょ)しているようにも時々見えましたが……気のせいですわね」


 その時、控え室のドアが軽くノックされ。

 目元と口元を露出したゴキブリマスクをかぶった、覆面少女レスラーが入ってきてリズムに向かって高揚した口調で言った。  

「試合お疲れさまでした、先輩の試合すっごく熱かったです!」

 三日後にデビュー戦を控えた、ゴキブリ仮面は気持ちの高まりが収まらないようだ。

 ゴキブリ少女は一礼すると。

「それじゃあ、あたしは三日後のデビュー戦に向けて、スクワットトレーニングしてきます……これで失礼します」 

 そう言い残して、トレーラーから出て行った。


  ◇◇◇◇◇◇


 入れ違いになる形で、今度は別の人物が控え室トレーラーにやって来た。

「入ってもいい? あたし、炎将ボルトー」

 控え室のドアが開いて、ヘソ出し軍服姿で、燃えるような赤い髪のサルパ人美女が入ってきた。

 赤い髪の先端は、ピンク色っぽく染めている。

 ピンク色に水色のトラ柄模様が入ったサルパ肌の、赤い髪の美女の後頭部には、白いリボンの髪飾りが付いていて。

 片目にはクリアー素材のアイパッチが付けられている。

 赤い髪のほがらかな美女──ネオ・サルパ帝国の炎将ボルトーの腰には、コレクションしている木槌やハンマー類がジャラジャラとぶら下がっている。

 ボルトーの手には、長い柄の両側に金属の握った拳と、ジャンケンのチョキのように二本の指を出した金属の手が付いた、

 身長くらいの長さがある打撃系武器が握られていた。

 ボルトーがリズムに、差し入れの紙袋を差し出しながら言った。

「ナイス! ファイト! さすが銀牙プロレスの試合だね」

 壁に貼られたプロレス試合のポスターを眺めながら、炎将ボルトーが美鬼に話しかける。

「さっき、気になる光景を試合テントの外で見た」

 親しげな口調で会話する美鬼。

「なにを見ましたの?」

「アルゴ・リズムと戦って破れた選手が、人相が悪い血球人らしい男から、なにやら言い責められていた」


【血球人】血のように赤い海がある星の住人──性格は狡猾、残忍、卑屈、最低な、銀牙系内でももっとも嫌われている種族の一つ。自星は血球人同士の大戦争とカタストロフィ規模の天変地異の続発で、粉々に砕け現在は小惑星帯となっている。


 美鬼がさらに詳しい内容を、ボルトーに訊ねてボルトーが答える。

「聞こえてきた言葉は『どんな手を使ってもいいから、試合相手を潰して再起不能にしろと言ったはずだろう!』って言っていた」

 美鬼の額の片側にある、半球型の目がギョロと動いて、不安な表情をしている人間形態のリズムを見る。

 ボルトーの話しは続く。

「あの、威圧的な態度の血球人の白い背広(スーツ)姿の男、見たコトある……悪行に手を染めている『ド・アッホー』だよ……このユーフォリアでは、確か地下プロレスのボスをやっている」

「きょほっ、あのド・アッホーですの……ある惑星で細菌兵器をバラ蒔いて、惑星全体に蔓延させる所業に加担したと……黒い噂がある」


 銀牙系の外れにある、今は解体して消滅した銀牙連邦管轄の惑星で、数年に一度のサイクルで開催される。

 惑星規模のスポーツイベント……『パラレル・ワールド』と、その惑星で呼ばれていたイベントで、惑星内にある某国が細菌研究施設で開発した。

 新細菌を意図的にスポーツイベントに紛れ込ませて集まった選手たちに感染させて……惑星中にパンデミックを発生させた、おぞましき事件。


「きょほほほ……新種の変異細菌を、バラ蒔いた国は最初から特効薬が用意されていて、暴利を貪るために細菌兵器を利用したのですわね……結局、銀牙連邦の手によって、惑星ごとカプセルに隔離されて、焼却処分されましたけれど」


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