7.自主的待遇改善
先日投稿させていただいた第5話の一節で、誤字についてのご指摘をいただき、大変感謝しております。
誤字の修正も当然ありがたいのですが、誤字を見つけられる程にちゃんと読んでいただけたというのが、何よりも嬉しく感じ、心からのお礼を申し上げたいと思います。
本当にありがとうございました。
あまりの嬉しさに、来週を予定していた7話の投稿を前倒してしまいました。
今回もよろしければ、最後まで読んでいただき、楽しんでいただけたらなと思っております。
自宅の玄関をイメージしてテレポートを発動させると、そこにはベルカーが立っていた。
ベルカーは明らかに驚いた様子で私を見たまま硬直している。
私はその表情を見て瞬時に脳内会議を開催した。
『ライブラ、テレポートって時魔法単体じゃなくて何かとの複合魔法?』
[回:テレポートは時空系魔法の他に、光魔法、闇魔法、土魔法の術式が含まれています。]
『うわ、4種複合か、これ使える人っているの?』
[回:魔物以外での使用は確認されていません。
光属性の術式が多分に含まれているので、かなり高位の魔法に精通した魔物で、特定の個体が使用したとの記録があるのみです。]
『なるほど、つまり恒例の人外魔法であると。ていうかさ、ライブラ結構色々薦めてくるけど、まぁまぁとんでもない物薦めるよね、いや、便利なのはありがたいんだけどね、誰でも使えるような物じゃなくて、特殊なものは事前に教えてよね。ぶっちゃけ少し面白がってやってるように思うんだけど。』
[回:事実無根です。
今後一般的な人族が使う魔法以外の使用を推奨する際には、事前に告知します。]
『ホントそこ大事だからね、お願いね。』
[了]
脳内会議によってテレポートという魔法がどういうものかを理解したものの、こちらから取り繕うのも不自然な気がしたので、何食わぬ顔で「あ、ベルカーさん只今戻りました。」と言ってはみたが、結局はベルカーが「今のは転移魔法でございますか?」と口にしてしまったので、嘘で誤魔化すことにした。
「ベルカーさんには、私が転移してきたように見えました?よし、私の身体強化はかなりの域に達したとみた。この調子で頑張れば、分身の術も使えるようになったりして。」
瞬間移動を高速移動ということにし、更に話に尾ひれを付けることで、瞬間移動ではなくて高速移動であることを前提としてしまう。
中身アラフィフの対応力は伊達じゃない。
ベルカーは、右手で左の手のひらをポンと叩きつつ「あぁ。」と漏らした後「なるほど、身体強化による高速移動でしたか。いやはや、これ程までの身体強化を見たことが御座いませんでしたので、つい突拍子もない事を口走ってしまいました。」と赤面しながら言った。
私は、今後を視野に入れて、更に追い打ちをかけるが如く、ベルカーに釘を刺しておく。
「ベルカーさん、このことは内密にお願いします。ていうか、私今後もちょいちょい一見すると不思議な魔法を使うこともあるかと思いますが、大概は普通の魔法の応用だったり、規模の違い程度のものなので、そういうものだと思って下さい。ただ、目立つのは避けたいので、外部への口外は控えていただけますか?」と、お願いという体のほぼ命令を告げる。
すると、ベルカーも冷静さを取り戻し「失礼いたしました、お帰りなさいませキラ様。魔法の件についてはけして口外することのないようお誓い申し上げます。」と深々と頭を下げつつ答えた。
そしてすぐさま「それと。」と前置きして「ルドルフ・ハイゼンスリーブ卿から伝言を承っております、明日の出発で問題なければ、明日出発することにする。本日中に確認しておきたいことがあり、都合の良い時間で構わないので、辺境伯邸に寄ってもらえないだろうか。とのことでしたが、いかがいたしましょう。」
私はベルカーの物言いに少し違和感があったので、伝言の件を後回しにして、ベルカーに尋ねる。
「昨日までは主とおっしゃっていたハイゼンスリーブ卿の事を、今は名前で呼んでいたのには、何か理由があるのでしょうか。」
「お気づきになられるとは思いませんでした、失礼いたしました。実は昨日ハイゼンスリーブ卿から、今後私はキラ様にお仕えするようにと仰せつかりましたので、本日から我が主はキラ様でございます。故に辺境伯様の事をお名前で呼ばせていただきました。」
「なるほど、そういうことですか。メイド二人に執事が一人ですか。ちなみにベルカーさん、この人数を雇う程度の稼ぎがある人って、一般的には年収にしてどのくらいの人なのでしょうか。」
「平均値としては存じ上げませんが、私の知る方で丁度メイド二人と執事を一人、その他数名の使用人はおりますが、その方は年間で500万ミルを売り上げる商人として有名な方でございます。」
「なるほど、500万ミルですか。参考になります、ありがとうございました。ちなみにもう一つ聞きたいことがあるのですが、ベルカーさんは、魔核を見たらお値段の想像がついたりする方でしょうか。」
「正確な金額をご提示できるほどの見識はございませんが、大凡の金額でしたらお答えできるかもしれません。」
キラはベルカーの答えを聞いて、先程のドロップアイテムを確認してもらうため、屋敷の応接室にベルカーと二人で移動すると、とりあえず一番大型の物から順に10個程並べてみて、再度ベルカーに尋ねる。
「とりあえず、一番大きいのから順に並べてみたのですが、この中で一番値が張るのはどれになるかわかりますか?」
ベルカーはまたも大きく目を見開いてフリーズしてしまっているので、再度「ベルカーさん?」と呼びかけると「はっ!こ、これは失礼いたしました。どちらも大変価値の高いものであるのは言わずもがなではございますが、中でもこちらの魔核は別格の品質であると感じます。おそらくギルドでは買い取ることが出来ないと思われますので、ハイゼンスリーブ卿へご相談なされた方がよろしいかと。」と言ってサイズ的には下から数えて3つ目の物を手に取った。
それを見てキラは『やっぱり大きければ良いというものでもないんだ。あれは確かブルーギガンテスから出た物だったはずだから、やっぱり魔物の強さと出る魔核の価値は比例すると思って良いのかも。』と思案を巡らせつつ「それで、大体おいくらくらいになりそうでしょう。」とベルカーに尋ねると、ベルカーもうんうんとうなりながらも「おそらく、1億ミルを下回ることはないと考えます。」と言った。
すると、ベルカーは続けて「しかし主様、差し支えなければでよろしいのですが、このような高価な品をどこで手に入れられたのですか?」と尋ねてきたので「朝森に出かけたじゃないですか、そこで魔物を倒して落ちてきた物ですよ。」と答え、続けて「明日王都へ出発となると、今日一日で森の大掃除が済めばと思って行ったんですけど、意外と早く終わったので、それでさっき帰ってきたんですよ。これで森には魔物はいませんので、気軽にピクニックなんかに行っても大丈夫ですよ。」と言った。
ベルカーは考えた、これまでの人生の中で、様々な知識や経験によって醸成された自らの常識を一旦隅に追いやって、たった今、自身の主から得た情報を咀嚼して、順に整理をつけ、論理的に再度並び替え、という工程を何度も繰り返したが、得た情報と一般常識との間で齟齬が生じるなどというレベルを超越しているので、あらゆる状況の整合性を保つことが出来ないと感じ、ついにベルカーは思考を放棄した。主が言った言葉は冗談なのだと半分投げやりに結論付け、主に告げる。
「失礼ながら、御冗談にしては、若干度を超している気がするのですが。」
私との主従関係は本日始まったばかりで、ベルカーとしては、このような事を言うには相当の覚悟が必要だったろう。
場合によっては激昂され、職を失う結果につながりかねないとさえ考えていたはずだ。
しかしベルカーはその逡巡する気持ちを奮い立たせ、あえて言ったのだった。
しかし私はいともあっさりと「まぁ、冗談にしか聞こえないですよね。今まで誰も手を付けられなかった、というか軍事行動を以てしても対処できなかった森の魔物を、昨日今日来た謎の小娘が朝出かけて昼前には壊滅させて帰ってきたとか、普通に考えると冗談というよりも、ただの大法螺にしか聞こえませんよね。でもまぁ、行ってみればわかります。森にはもう人を脅かす魔物は存在しません。あ、あと今後も魔物が森に発生しないように、ダンジョンも作ってきたので、本格的に森への警戒は解いても問題ないですよ。」と言った。
最早ベルカーの理解の範疇がどうのとかいう話ではなく、この都市の最高責任者が判断する領域であることは誰が聞いても明らかなので、とりあえずベルカーは自分で色々と考えることを止めたうえで、自身に課せられた義務を全うする事こそ、今自分に出来ることだと自らに言い聞かせ、主である私に伺いを立てることにしたのだった。
「主様、今お話しを伺った件について、早急に領主様へお目通りを願い、ご報告いたしたいのですが、お許しをいただけますでしょうか。」
「まぁ、当然森の件については領主様のお耳に入れないわけにはいかないでしょうから、ベルカーさんが行ってくれるのであれば私としても助かります。ついでに、本日お伺いするのは午後のなるべく早い時間を予定していますと伝えてほしいのですが。」
「かしこまりました。それでは失礼して、領主様のお屋敷へ行ってまいります。」
「は~い、いってらっしゃ~い。お気をつけて。」
私はベルカーを見送り、魔核を次元収納に収めた後、応接室を出たところで廊下を移動していたメイベルを見かけたので、メイベルに問いかける。「メイベルさん、ケイラはどこにいるかご存じですか?」
主の存在に気付いたメイベルは深く礼をすると「ケイラ様は自室においでです、マリアが本を読んで差し上げております。」と答え、続けて「主様、間もなく昼食の支度が整いますが、お召し上がりになられますか?」と問われたので「はい、もちろんいただきます。朝食後から、お昼ご飯は何かなと楽しみにしてました。」と答えた。
その後、私はそういえばと続けて「メイベルさんもマリアさんも、なんならベルカーさんもですけど、辺境伯様のところで働いていた時にお給料をもらっていましたよね?それはどのくらいの金額を貰っていたのか教えてもらうことはできますか?」と尋ねる。
するとメイベルは「私の給料はわかりますが、他の二人の給料についてはわかりかねます。マリアは今年来たばかりなので私よりは少ないはずですが、それ程差はないと思います。ベルカーさんは私たちメイドよりもずっとたくさんの給料を貰っていると思いますが、それでも私の倍のお給料ということはないと思うので、そうですね、たぶん1.5倍くらいではないでしょうか。私は毎月2500ミルをいただいていました。」
「なるほど、それは給料の水準としてはどのくらいのものなのでしょうか。」
「そうですね、多分辺境伯様のところで働くより高い給料を貰いたいのであれば、皇都の一部の貴族や皇王様の宮殿で召し抱えられでもしないと、難しいのではないでしょうか。あとは給料ではないし、一発当てればの話にはなりますが、冒険者の収入もなかなからしいです。」
「ようは、辺境伯様のところの給料は一般的水準よりも高いということですね。」
「はい、そうなります。」
「すいません、もう一つお聞きしたいのですが、この国では、給与に対する税金などはありますか?」
「いいえ、ありません。税金は物を買う際に課税されているのと、ここハーコッテ独自のものになりますが、年に一回防壁税がかかりますね。防壁税は収入に関係なく、15歳以上の成人は一律年1000ミル徴税されます。」
「なるほど、ということは、月にだいたい8,000円強の住民税がかかるのと同等程度で、あとは消費税と。給料がまるまるが可処分所得というわけではなさそうだけど、その程度の税収で国の財政大丈夫なのかな。」
「え?かしょぶんしょ?」
「あぁ、いえいえ、こちらの話です、気にしないでください。ところで、話は変わりますけど、この屋敷の管理って3人で足りるのでしょうか。」
「なんとかなると思います。」
「それは三人が適度にお休みの日を設けても成立しますか?」
「それは難しいと思います。」
「それでは労働環境が劣悪すぎますね、とりあえず、今の倍の人数がいたら何とかなりそうですかね。」
「倍なんて!?私たちの仕事がなくなってしまいます。」
「いいえ、無くなることはありませんし、週に2日はそれぞれ休んでもらいたいと思っているので、人数が倍になったからと言って、毎日大勢がこの屋敷にいるということにはなりませんよ。あぁ、いるにはいるか、全員住み込みですもんね。あぁ、でもそうなると部屋が足りないか、メイベルさんとマリアさん今相部屋でしたよね。人数増えても大丈夫なように増築しましょうか、あるいは新たに建物を建てるか。よし、メイベルさん、私が皇都に行っている間に、ベルカーさんと相談して、必要な人材を集めてもらえますか。貴女方が集めてくれた人であれば信頼できると思いますので、とりあえず働いてもらってしまっても大丈夫です、よろしくお願いします。ただ、私が帰った後に一応面接的なことはしようと思うので、それも伝えておいてもらえますか。給料は今までのメイベルさんの給料と同程度の水準は保証します。あと、種族のこだわりもないので、何族だからではなくて、その人個人の資質を見て決めていただきたいなとは思いますが、まぁ、メイベルさんとベルカーさんであれば問題はないですよね。マリアさんには私が不在の間はケイラの面倒を見ていただこうと思っていますので、その点も了承してください。」
「かしこまりました、主様のご希望に添えるよう、精いっぱい務めさせていただきます。ちなみにですが、新たな使用人が決まった場合、当面の間は通いで来ていただくということでよろしいでしょうか。」
「あ、いいえ、今から建物建てるので、そちらを使っていただいて構いませんよ。あとメイベルさん達も部屋の内装とかいろいろと希望もあるでしょうから、教えてくださいね。あ、忘れていました、非常に大事な事でした、メイベルさん、秘密守れる方にしてくださいね。私の能力って何かと非常識なようなので。」
「承知いたしております。守秘義務に関しては、使用人としての業務においての前提条件ですので、必ず厳守させます。」
「よろしくお願いします。じゃあ建ててきますね。」
「かしこまりました、行ってらっしゃいませ。」
とは受け答えつつも、メイベルの頭の中では建ててくるの意味がいまいち理解に苦しむところで、建築物を建造するということを意味しているにしては、ちょっとお昼の弁当買ってくる的なニュアンスで語っているようで、若干認識にズレでもあるのか、若しくは地域的な言い回しの差などがあるのかなどと考え、メイベルも深く考えることを放棄した。
私はメイベルとの会話を終えると、屋敷の裏手へとまわり、屋敷の正面から見ると右側の、屋敷から一段奥まった位置に、2階建ての寮をイメージして「クリエイト」と唱えた。
各部屋についても、どうせ魔法製で原材料費もかからないからと、各室1LDKに風呂トイレ付、家具・家電(動力は魔力の魔道具)完備の住みやすさを重視しつつも、寒暖に左右されず、騒音対策もばっちりの安心快適物件を一瞬で建造し、せっかくならメイベルやマリアの好みの内装にしようと、二人を呼んでくることにした。
メイベルを調理場で、マリアをケイラの部屋で見つけて二人を新築物件へと連れてくると、二人とも唖然とした様子で、口々にこんなところにこんな物がいつの間に的な言葉をつぶやいていたが、それらの声を完全にスルーして、私は二人に対し、壁紙はどんな雰囲気が良いのか、ベッドはどうするか、キャビネットは、鏡台は、などと細かい話を詰めていき、最終的には二人とも感動して涙を流すほどの仕上がりになった。
出来上がった部屋を見てケイラも「これからマリアさんはここで暮らすのですね、綺麗でいいですね、うらやましいです。」と言っていたので、ケイラの部屋も、ケイラの好みに改装してあげることを約束した。
メイベルも、新しい住居に感激し、新しい使用人を探す仕事への熱意を燃やしていた。
こんなに素晴らしい部屋を与えられて、尚且つ給料まで貰える仕事なんて他にありえないと、若干鼻息を荒くしていたので、きっと素晴らしい人材を確保してくれると信じている。
程無くしてメイベルが昼食の支度が整いましたと申し出てきたので、ケイラと一緒に食堂に入ると、メイベルとマリアが立ったまま頭を下げていた。
そして、食卓には二人分の食事の用意がされていた。
私はこの状況を見て「あと二人分用意してほしいのですが、大丈夫でしょうか。」とメイベルに尋ねる。
するとメイベルははっとした表情をするが、すぐに気を取り直して「大変申し訳ありません、只今すぐにご用意させていただきます。」と言ってすぐにマリアを引き連れて調理場の方へと下がっていった。
この時点でメイベルは客人が来ているのだと勘違いをしていた。
客人が来ているのに見落とすなど、メイドとしては失格だ、本来であれば執事の仕事ではあるが、先程ベルカーが外出したのを見ている以上、自分の落ち度でしかない。
主に取り次ぐどころか、主から促されてやっと気づくなど、使用人としてあってはならないことだと、自分を責めていた、涙がこみ上げそうになるのをぐっとこらえて、とにかく急いで仕事をこなすことを優先する。
数分後、メイベルとマリアは「大変お待たせいたしました。」と言いながら、給仕用のカートを押して食堂へと入ってきた。
それを見て私が「昼食のメニューはこれで全部ですか?」と尋ねると、メイベルは「この後、メインディッシュの牛肉のソテーをご用意しております。」と答えたので、私は「それも全部持ってきてください。」と言った。
更に待つこと数分後、メイベルとマリアは4人分のメインディッシュも食堂へと運び終わり、お待たせいたしましたと告げるが、一向に現れない残り二人の客人を探していた。
私が「二人とも席に座ってください。」と告げる。
驚いた様子の二人をよそに私は話をつづけた。
「今までの常識がどうだったかを私は知りませんが、今後はこの家に住む私達二人と、それを支えるために働いてくれる皆さんは、対等な立場であり続けたいと思っています。なので、まず主様はやめてください。私の事はキラと呼んでいただきたいです、それと、ケイラに「様」を付けるのもやめてください。私たちは何者でもありません。ただのちょっと森の掃除をした旅の小娘と、その妹です。そして食事は皆一緒に摂りたいと思いますので、食事を出す際は、全員分の食事をいっぺんに出して下さい。そうしないと、メイベルさんやマリアさんがいちいち立ち上がって次の食事を取りにいかなくてはならないことになるので、それを止めるためにも、今後は一度に全員分を出すことにして、なおかつ、こんな手の込んだ立派な食事じゃなくて良いです。普通の家庭で普通に食べるようなもので良いですし、毎度手の込んだものである必要は全くありません。今日は、ベルカーさんは辺境伯様のお宅に行っているのでいませんが、ベルカーさんも一緒にご飯を食べてもらいます、今夜の夕食からそのようにしましょう。あと、お風呂も皆さんのお部屋に便利だろうと思って付けはしましたが、べつに大きいお風呂が良いのであれば屋敷の方の浴場を使ってもらっても、いっこうにかまいませんし、なんなら一緒に入りたいなとも思いますが、これは女子だけでね。ベルカーさんは一人で入ってもらいます。とまぁ、今の私はただの森の大掃除をした少女ですが、今後この立場がどう変わっていったとしても、このスタンスを変えるつもりはないので、皆さん末永く本当の意味で仲良くしてください。」
私の話を聞いて状況を理解したメイベルは、自分の失態があったわけではないと胸をなでおろしつつ、使用人と雇用主が共に食事をするという状況はいまいちピンとこないが、それを差し置いても、自分達を領主様同様か、若しくはそれ以上に尊重しようとしてくれていると感じ、先程の寮の事も相まって、目から涙が零れるのをこらえることが出来なかった。
「キラ様のお気持ちは理解いたしました。しかし、我々にも使用人としての矜持がございますので、キラ「様」だけはお許しください。ケイラ様に関しては、ご年齢のこともありますので、現段階ではケイラちゃんが限界です。それ以上は譲れません。食事の件に関しましても、相当な抵抗感は御座いますが、承知いたしました。今後はキラ様のおっしゃるようにいたします。本当の意味で仲良くという部分につきましても、意味は理解しているつもりですので、何かあれば遠慮なく申し上げさせていただきたいと思います。」
私は満足そうな顔で「それ!そう言ってほしかったんです、ありがとう。話が少し長くなってしまったけど、お昼いただきましょう。」と言った直後に、「あっ!」と、声をだす。
そもそも、このダイニングルームの広さも然ることながら、異常ともいえる程長くて大きいテーブルに問題があること気が付いた。
「これが悪いんだ、こんなテーブルだから畏まっちゃうのよ、クリエイト」と言うと、食堂の調理場側の角に一般的な家庭用のダイニングテーブルと椅子のセットが現れた。
「これで皆一緒に食べましょう、お皿をこっちに持ってきて、さぁ、ケイラちゃんも手伝って。」と言いながら、私がお皿を移動させていると、マリアが「あぁ、それは私達がやりますので。」と慌てて皿を私の手から取ろうとしたが、私は「いいから、いいから、他にもまだお皿あるんだから、そっちを運んで。」と言って、てきぱきと皿を移動させていく。
私達は、皿を運び終えると、4人でテーブルに着き、私の「じゃあいただきましょう!」の声で食事を開始するが、私とケイラは勢いよく食べ始めるも、メイベルとマリアは遠慮気味におろおろしていたので、私が「ほら、二人とも早く食べないとメイベルさんがせっかく作ってくれたのに、冷めたらもったいないですよ。」と二人を食べるよう促す。
二人も意を決したのか、ようやく食事に手を付け始めたが、どうにも居心地の悪そうな雰囲気全開なので、私はわざとらしく「このお肉とってもおいしい、メイベルさんこれどんな調味料使ったら、こんなにおいしくなるんですか?」と質問をすると、メイベルとマリアは驚いた顔をして固まってしまった。すると今度は逆に私が不安になって「え?今私何か変な事言いました?」と尋ねる。すると、メイベルは「あ、いえ、失礼いたしました。貴族の方は食事中に会話をすることがないので、少し驚いてしまいましたもので。」と言ったので、キラは「あぁ、私貴族じゃないので問題ありませんよね?普通のご家庭では家族で食事を摂る時は団らんするものでしょ?それにしても貴族の人って人生の大部分を損しているんですね。おしゃべりしながら食べるご飯の方が圧倒的においしいのに!」と、やや前のめりになって言い、続けざまに「ということで、私はこのせ、あ、いや、この国の事全然知らないので、メイベルさんもマリアさんも、色々と教えてくださいね。」と言うと、メイベルとマリアは二人そろって「かしこまりました。」と答えた。
4人で談笑しながらの楽しい昼食を終え、私はハイゼンスリーブ卿の元へ行く準備のため、身支度を整えていると、そのハイゼンスリーブ卿邸からベルカーが戻ってきた。
どうやらベルカーがハイゼンスリーブ卿に事の顛末を伝えたところ、ハイゼンスリーブ卿も心底驚いた様子で、直ちに来てほしいと言付かったとのことだったので、私もそのつもりで準備をしていたため、その足でハイゼンスリーブ卿邸へと向かうことにした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
現段階では、まだ書き溜めがありますので、数日中には次話を投稿できると思います。
その時はまた、よろしくお願いいたします。




