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異世界に転生してものの5分で最強種とエンカウントした俺のその後の話  作者: すずき 虎々


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43.新訳-神啓始章-

数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。

読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後とも、応援よろしくお願いします。

 あれから、五年が経った。

 神獣アルベモとの激闘を経て、私は只々恐怖を覚えたのだ。

 初めて自分の力が及ばない存在との対峙。

 もてる知識や技術、道具を駆使して、なんとか勝つことが出来たとはいえ、万が一私が倒れていた場合、この世界が今も変わらず存在していたかと聞かれたら、その可能性は極めて低かっただろう。

 ただ、アルはこの世界に興味があったわけではなく、私という特別な力を持つ存在に惹かれてきたと言っていたので、私が倒れたら、そのまま興味を失っていた可能性もゼロではない。

 ただ、それでも被害が出ない保証などない。

 私が妹達を中央大陸での訓練に連れていく決断をするにあたって、実は相当な葛藤があった。

 しかし、妹たちは私の葛藤を知ってか知らずか、むしろ意欲的に私の申し出を受け入れてくれた。

 その甲斐あってか、妹たちは急成長を遂げた、私もたいがいだと言われるかもしれないが、妹達の成長は、常識の遥かかなたの領域といっても過言ではなく、私がこの世界に転生した直後にファクトチェンジを使って到達した領域に、彼女たちは到達することが出来た。


 あの濃密な日々が、まるで昨日のことのように思えるけど、現実は容赦なく時間を進めていく。



 この五年間、世界は驚くほど静かだった。

 神獣のような突発的な脅威も現れず、ヤーパニ皇国は安定した統治のもと、私主導で整えた交通、生活、医療、法体系の確立で、劇的な発展と繁栄を続けていた。(実は、かなり自己都合な面もあるが、食文化についても、素性を隠したうえで、かなり発展させたと自負している。)


 私が懸念していた“次の災厄”は、結局訪れることなく、ただ季節だけが巡っていった。

 その間に、妹たちはそれぞれの道を歩み始めていた。


 シェラは、旧ヘミエミル領の再編に伴い、皇王陛下から叙爵を受け、正式に領主として赴任した。(ヘミエミル、コチミコ、バキレムの三国をパトラム領とし、シェラは現在シェラ・パラディオール・パトラムを名乗り、爵位は辺境伯となっている。)

 彼女の統治は、魔法師団で培った知識と冷静な判断力を活かしたもので、領民からの信頼も厚く、今では“領主様”と呼ばれるより、“賢者様”と呼ばれることの方が多いと聞くほどの存在となっていた。


 一方、ケイラは中央大陸の駐屯地に責任者として駐在しているが、実は皇国騎士師団の師団長で、爵位も伯爵を叙爵している。

 彼女の剣技は、若干13歳の頃で、既に“剣聖”の域を超越しており、現地の兵士たちからは“竜姫”と呼ばれ、尊敬と畏怖の入り混じった眼差しを向けられている。

 現在は年齢も18歳になったこともあり、大分大人になってきたが、相変わらずの奔放な性格が幸いしてか、駐屯地の兵士からは慕われているようで、悪い噂は聞こえてこない。

 ちなみに、家のペットのハロちゃん(中央大陸で私に懐いたフェンリル。)は、私の従魔のはずなのに、やたらとケイラに懐いてしまって、結局今は、ケイラについて故郷の中央大陸にいる。

 現地兵士の話によれば、フェンリルの背にのって駆け回るケイラが、最も危険な存在で、部隊の訓練には、参加を辞退していただいていると聞く。(フェンリルの速度についていける馬など存在しないかららしい。)


 二人とも、かつて私の膝の上で食事をしていた頃とは比べものにならないほど、美しく、逞しく、そして誇らしい存在となっていた

 。

 私自身も、領主としての職務を淡々とこなしながら、時折妹たちの様子を見に行ったり、屋敷の裏で訓練を続けたりしていた。

 アルは相変わらず、腹が減っては私の魔力を好き法外吸って、自由気ままに屋敷の風呂に入ったり、モコちゃんと昼寝したりしている。

 神獣とは思えないほどの馴染みっぷりだが、彼の存在がこの五年間、何も起きなかったことの証明でもあるのかもしれない。


 そして、この五年で最も大きく変わったのは、交通インフラの整備だった。

 かつては限られた魔法使い(私以外では使える人がいるとは聞いたことがない。)しか扱えなかった転移魔法が、今では“転移魔法陣”という形で、ヤーパニ皇国の各地に設置されるようになった。

 これは、私が魔法陣の構造と魔力供給の安定化に関する技術を開発したもので、誰でも簡単に、指定された場所へ安全に転移できるという画期的なシステムだった。

 魔力の供給も、以前に話したバッテリー(魔石の規格統一を施したもので、魔法使いなどから魔力の充魔を受けることで、半永久的に使えるモバイル魔力供給機具)を採用しているので、使用者の魔力量に依存することがなく、誰でも気軽に使える便利設備として、国民に喜ばれている。

 現在では、皇都を中心に、主要都市、軍拠点、交易港、そして各領地にも転移魔法陣が設置されており、移動時間は劇的に短縮された。


 商人たちは喜び、軍は迅速な展開が可能となり、領民の生活も格段に便利になった。

 まさに“魔法による交通革命”と呼ぶにふさわしい変化だとった。

 しかし、この技術は、あくまでヤーパニ皇国の内部に限っての話だ。

 ミドガル、ハプル、ジャブラダの三国には、転移魔法陣の技術は一切流出させていない。


 表向きには「魔力供給の安定化が難しいため、設置は不可能」と説明しているが、実際には完全に意図的な情報統制だ。


 三国は、ヤーパニ皇国の急速な技術発展に警戒感を強めている。

 特にミドガルは、急速に領土拡大や技術革新を成し遂げたヤーパニに対して、よからぬ感情を抱いており、今でも水面下で不穏な動きを見せている。

 転移魔法陣の技術が流出すれば、彼らがそれを軍事転用するのは火を見るよりも明らかだった。

 だからこそ、私は技術の核心部分——魔力の安定供給の原理と座標固定の術式——を、完全に秘匿している。

 設置された魔法陣はすべて、私の魔法によって隠蔽が施されており、だれでも起動出来るのに、誰も解析することが出来ない設計となっている。外部からは解析どころか、術式が何処にあるのかすらも判別することは不可能な仕様なのだ。

 故に術式を模倣しようとしても、その術式を目にすることすら出来ないのでスパイでもなんでもバッチコイ仕様となっている。


 この五年、私は“平和の維持”と“技術の情報統制”という、二つの課題を同時に抱え、今のところ、その両方を何とか保ち続けている。


 だが、そんな平穏も、いつまでも続くとは限らない。


 その予感は、ある日突然訪れた。


『キラさん、ちょっとよろしいですか~?』


 イアロの声が、頭の中に響いた。

 いつもの軽い調子で、しかし、どこか張り詰めた空気を纏っていた。


「どうしたの、イアロ。今ちょうどお茶淹れたところなんだけど。」


『あら、それはそれは。でも、今回はちょっと真面目な話なんですよ~。』


「……真面目な話?」


『はい。実は、最高神様から、キラさんに話したいことがあるそうなんです。』


 私は、手にしていたカップをそっとテーブルに置いた。

 その音が、妙に大きく響いた気がした。


「なんで、最高神様が私を名指しで話したくなるのかな?」


『ええと。どうしてでしょうね~???』


「どうしてでしょうね~???じゃないでしょ。あなたが言わなければ、最高神様がどうやって私の事を認識できるのよ。あなたがまた余計な事を言ったんじゃないの?」


『そんなわけないじゃないですか!この鋼鉄のお口チャック女神と呼ばれた私が、キラさんがかつて私を脅して最高神様と同じ全能のスキルを授けた唯一の人間だなんて、口が裂けても言いませんよ~。プンプン。』


「はぁ~。そんな事言ったんだ……。で、話ってなんなの?」


『えぇとですね、私も話の内容は聞いてないので、キラさんにこちらに来ていただいて、そのうえで、最高神様の所にご案内しますので、その時にご本人から聞いてください。私に話すとそこら中に知れ渡るとか、すごく失礼なこと言うんですよ、最高神様。プンプン』


「あぁ、その気持ち、めっちゃわかる。なんか最高神様に一気に親近感わいたわ。」


『ちょっとキラさん!まぁいっか、それじゃあ、準備が整い次第来てください、今すぐに。』


「いや、どっちだよ!ていうか、天界への行き方なんて知らないし。」


『え?言ってませんでした?私のところに行きたいと願えば、いつでもここに来られます。』


「うん、まぁまぁ重要な話だと思うけど、一度も聞いたことはない。」


『あらぁ~。私ってば、忘れんぼさんでゴメンなさ~い♡』


「怒る気すら失せさせるのって、ある意味才能ね。まぁいいわ。それじゃあ、ギリシャ神話に会いに行くとしましょうか。」


 私はカップを持ち直し、冷めかけた紅茶を一口だけ飲んだ。





最後まで読んでいただきありがとうございます。

感謝の言葉しかありません。

よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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