38.召喚
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
稚拙な文章ではありますが、読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
本日より、本編のお話に戻ります。
ケイラがマリアの皿に盛られたイカのフリットを盗み食いすると、マリアが「それ最後の楽しみにとっておいたのにぃ~!」と怒っている。
シェラはお行儀よく静かに食べているが、その向かいに座っているニャカが、先程から必死にシェラを笑わせようと、変な顔を作ってシェラを覗き込んでいる。
これにはたまらずシェラも噴き出してしまい、ミラが横からナプキンでシェラの口元を拭ってやると同時に、ニャカを窘めている。
メイベルは、ベルカーさんの奥さんのサラさんと談笑しながら食事を楽しんでいて、時折ベルカーさんも話に入っているというか、相槌を打っている。
私の膝の上には5歳になったばかりのライト君が乗っていて、私はライト君に小さく切り分けてあげた魚介のフリットを食べさせていた。
そして、そんな私達にはお構いなしで、モコちゃんは隅で蒸したお魚に必死にかぶりついてた。
総勢10人と1匹で囲む食卓は、とても賑やかで、それでいて楽しい時間。
私達にとっての日常は、他の貴族からすると受け入れがたい状況かもしれなくて、自分たちの立場を揺るがすようなことは、積極的に取り入れたいとは思わないだろう。
普通の貴族では考えられない事なのかもしれないが、言ってしまえば、貴族と使用人の関係性って、単純に雇用主と労働者というだけであって、そこに貴賤の差なんてあるわけもなく、賃金を支払う側の貴族が、俺が金を払っている以上、お前らは黙って従っていればいい、という理屈を双方が受け入れてしまっている。
そんな、いびつな状態を世界の理として納得し、甘受してしまっている。
頭を押さえつけることで得られる秩序なんて、本当の秩序とは思わない。
この世界において最も力を持つ私が、力で押さえつけようとするなら、おそらく簡単に達成することが出来る。
でも、押さえつけられることでたまる反発は、いずれこの世界を破滅に導くことだろう。
確かに、悪い事を考える人もいる、欺いたり、搾取したり、喝取したり、裏切ったり、傷つけたり、でもそういう人達を力で屈服させたとしても、そんな人は次から次へと現れる。
だからこそ、抑止力としての力は必要なのかもしれない。
でも、それを暴力で解決するのは違う。
公平性に欠ける。
持続的な対処は不可能。
私がいなくなったら、誰が私の代わりに裁くのか。
だからこその法であり、社会のシステムなんだと思う。
そこには貴族だから、平民だからといった区分けは必要ない、というより弊害しか生まない。
今、この素敵な時間を産んでいるのは、私という個の力によるものじゃない。
お互いを尊重することで生まれる、信頼関係によるものだと信じている。
私の膝の上に座って、無邪気に笑いながら皆との楽しい食事の時間を過ごすライト君は、きっとこの先、立派に成長して、皆と過ごしたこの時間を礎に、素晴らしい青年に成長するだろう。
そんな子供達が作る未来にこそ、価値があるのだと信じたい。
そして、それこそが、そういう価値観こそが、最大の抑止力であると信じたい。
生まれてくる子供は、未来の世界を担う宝だと、今生きている人達全員が、そう思える世界になってほしい。
その為に、私に出来ることがあるのなら、どんなことでもしたいと誓う。
世界中の色々な場所で、今私たちが感じている、小さな幸せを感じる気持ちを、分かち合いたいと、私は心から願う。
「キラ様が光ってる!」
私を見上げるライト君の口から、思いもよらない言葉が出てきた。
え?光ってる?私が?
私は少し視線を落とすと、確かに光っていた。
特に右の胸辺りが、強い光を放っていた。
胸が熱くなってきた。
魔力が吸い取られるような感じがする。
「え?何?」
私は自分自身わけがわからず、思わずつぶやいていた。
皆が私に注目している、シェラは心配そうな顔をして、ミラは立ち上がろうとして腰を浮かせている。
すると、次の瞬間、“ポンっ”という音と共に、私の胸辺りから、白い謎の物体が飛び出してきた。
「へ?」
私は、驚きのあまり、思わず頓狂な声を出してしまった。
その謎の物体は、まばゆい光を放ちながら、テーブルの上に浮いていた。
「え?神獣?」
それは、以前に死闘を繰り広げた神獣を、コンパクトにデフォルメしたような姿をしていた。
「皆逃げてっ!」
私が思わず大声で叫ぶと。
『逃げずともよい。危害は加えない。我の名はアルベモなり。』
その声は、頭の中で直接語り掛けてくるようだった。
そして、それは私以外にも聞こえているようだった。
ベルカーさんがライト君を抱き上げて、逃げる体制になっていたが、声が聞こえたタイミングで、立ち止まって「アルベモ?」とつぶやいたことからも、少なくとも私以外にも聞こえている証拠だろう。
『我はキラ・パラディオールの僕となった。』
「「「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえぇぇぇ!?」」」」」」」」」」
突如現れた謎の生命体が、これまた突然私の僕を宣言するという、如何にも異世界転生ものにありがちな展開ではあるが、幾つか腑に落ちない点もあり、しかも食事中というタイミングも重なって、私を含めた、その場にいる全員がパニックを起こしていた、私なんて、ちょっと前まで、食事しながら、ちょっといい感じの回想を繰り広げていたのに……。
それでも、一番事情を理解出来そうな私は、このプチ神獣アルベモとの対話を続けることにした。
『キラ・パラディオールは我に力を示した。故に我はキラ・パラディオールを主と仰ぎ、以降主の求めに応じてこの力を振るうものなり。』
「え、え、え、ちょっと待って、神獣って最高神様の眷属なんじゃないの?」
『我は最高神様の眷属なり、だが全ての神獣が最高神様の眷属にあらず……。ていうか、人前だと思って気を使ってたけど、これ以上話すなら、このしゃべり方疲れるから普通にしゃべるぞ。』
これまで、小さいながらも荘厳な雰囲気を醸し出すような話し方をしていたプチ神獣だったが、とうとう地が出てしまったようで、その見た目にふさわしい、砕けた口調に変わった。
「別に話し方はどうでも良いけど、急にフランクw」
『主、この間の戦いはとっても楽しかったぞ!久しぶりに満足できる戦いだったぞ。』
「いや、ちょっと待った。色々聞きたいんだけど、そもそもなんで私が主になってるの?」
『それは主が我に勝ったからだ。』
「いや、そうじゃなくて、あなた最高神様の眷属なんでしょ?それなのに私の僕になって良いの?」
『我は確かに最高神様の眷属ではあるが、だからといってキラの僕になれないということはないぞ。最高神様は、たまに眷属を生み出されるが、生み出した後はほったらかしだぞ。だから我も自由に色々な世界を渡り歩いて、強そうなヤツがいないか探していたんだ。』
「え、そうなの?ていうか、せっかくあなたみたいなの生み出しておいて、その後は放置するとか、意味わかんないんですけど。」
『生み出すと言っても、最高神様からあふれ出た魔力が勝手に結合したのが我だから、最高神様も、いちいち我らを認識などしていないぞ。』
「ちょっと待った、神獣って、まさかの魔物システムだったの……。ってそうか、魔物もそもそもは天界産ということになるのか、大元が天使だからね。そう考えると、ふむふむ、そうかそうか、なるほどね。」
「お姉さま、一人で納得していないで、私達にもわかるようにご説明いただけませんか?」
「あぁ、ゴメン、そうだよね。ってどこからどう話せば良いのか。いやむしろどこまで話していいのか……。」
「あの、キラ様、先程からサイコウシンサマとか、シンジュウとか、ケンゾクとか、理解が追い付かないワードが並びすぎていて、差し支えなければ、全てがつながるように説明していただけないでしょうか。」
メイベルさんが眉間をㇵの字にして、尋ねるが、私もどこまで答えて良いかわからず、かといって部分的にオブラートに包むのも難しい。
私は神様関係の話をどこまでしても良いのかを、本人に確認することにした。
「みんなちょっと待ってね、アルベモもそこにステイ、ちょっと整理させて。」
『イアロ、どうすればいいのこの状況。』
『どうしましょうね~。でもまぁ、良いんじゃないんですか?話しても。この世界では神はまだ忘れ去られた存在ではありませんよ、キラさんの元の世界では忘れ去られてましたけど。神の侵攻って、神が語られなくなると始まるんですよね、大体。だから、宗教家の人が必死に神の教えを説くんですよ、説いてる本人も信じてないのに。ということで、神の存在を明かすこと自体は悪い事ではなくて、むしろ推奨されるべきことだと思うので、ぜぇ~んぶ話しちゃいましょう!なんならまた、私が皆さんにお話ししましょうか?』
『いや、とりあえず良いわ、あなたが出てくると、その後が面倒になりそうだから。私が話すよ。』
私は食堂の中を行ったり来たりしながら、これから話す内容を整理するとともに、自分の精神状態も落ち着かせようと努めた。
「OK、わかった、じゃあ、話すね。まず、私の事から話さないとちょっとつながらないと思うので、そこから始めます。」
皆が私の言葉に注目している。
「実は、私はこの世界で崇拝されている神様のイアロと、ちょっとした所縁があって、魔法とは少し毛色の違う特殊な能力を持っていたりもします。で、今まで色々とやってきましたが、そのほとんどは、この世界に元からある力、魔法を駆使して、やってきました。特殊な能力は最近ではほとんど使っていません。これまでも、竜とか魔王とか色々と世の中の弊害になりうるものを倒したりしてきたんだけど、その流れで、今回は中央大陸の魔物を掃討しようと思って出かけたら、運悪く、そこの神獣が現れて、戦うことになりました。神獣というのは、早い話が、神様の漏れ出した魔力が再結合したもので、魔物と似たような原理で誕生するらしいんだけど。」
と、そこでアルベモが話の腰を折って、とんでもないことを口にした。
「あ、我以外にも神獣いたんだな。」
「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」
「そこで何か食ってるヤツだ。」
といって、指さした先を皆が見ると、そこにはモコちゃんがいた……。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




