30.神獣降臨
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
稚拙な文章ではありますが、読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
イアロが言うには、あれは神獣だという。
その存在感は、人知をもって推し量れる程度のものではないことは、すぐにわかった。
他者に対しての私がそうだったように、あの怪物にとって、この世界の住人など塵あくたにすぎないのだろう。
それ程にあの神獣という存在は常軌を逸する存在と言える……。
それは地上に降り立つと、世界中に響き渡るのではないかという程の、空気を引き裂く咆哮を上げ、そこらに生い茂る木々を吹き飛ばしたかと思えば、今度は前足の一振りで、大地を切り裂いて見せた。
私は直感で、あれは無理!と感じつつも、このまま放置すれば、この世界が消えてなくなるとも感じていた。
私は次元収納にしまっていた魔力回復薬を飲んで失った魔力を回復させ、先程手に入れたばかりの賢者のローブと最後の鎧、竜の翼、ジャメットを装備した。
装備品の効果で全身に力が漲る、しかし、足りない……。
そうしている間にも、神獣は周囲の魔獣を手あたり次第に殺していく。
私はこの距離から少しでも体力を削れればと考え、ジャメットを一度鞘に納めると、終末の杖を手に取り、固有スキルの〈天変地異〉を発動させた。
すると、神獣のいる辺りの大地が崩れ、神獣を飲み込もうとすると同時に、巨大な風の刃を連想させる竜巻と、雨というにはあまりにも常軌を逸した大質量の水の弾丸が降り注ぎ、辺り一帯の生物という生物は皆、焼き殺されるのではないかという程の雷が襲い掛かる。
おそらく今のスキルで、国の一つや二つは簡単に崩壊するだろう威力だったが、神獣は五体満足、ノーダメージではないものの、その勢いを止めるには至らない。
今度は自らの魔力も乗せて、天変地異をもう一発!
先程の攻撃よりも大幅に威力を増した天変地異が、神獣を襲う。
流石の神獣もこれには耐えきれないと感じたのか、大きな翼で自身の身体を覆い、防御の姿勢を取った。
私はすかさず、魔力回復薬をもう1本飲み干した。
天変地異の効果が消えて、土煙の中から神獣がその姿を現す。
一発目の天変地異の時とは違い、今度は明らかにダメージを受けていた。
先程まで、神々しさの漂っていた大きな翼は、いたるところに傷や穴、焼け焦げた跡が付いていて、足元も、心なしか弱々しく感じた。
私は今がチャンスと、一気に間合いを詰め、ジャメットを抜いてスキル〈一刀両断〉を繰り出した。
神獣は再び自らの翼で防御を試みるが、防御に使った左の翼もろとも、その立派な右の角を落とした。
私は、行けると感じて、一度間合いを取り、再び一刀両断を繰り出そうとしたその瞬間、神獣左の前足を振り下ろす。
私は咄嗟に体を右に流して神獣の攻撃をかわし、再び剣を構えようとした瞬間、違和感に気付く。
両手上段で構えようとしているのに、左手を添えられずに空を切る。
左手がない……。
次の瞬間、左の肘辺りに激痛が走る。
私はなんとか、剣を片手で横薙ぎに払い、神獣の左後脚に傷をつける。
私はそのままの勢いで、神獣の背後に回りつつ、回復魔法で左腕を再生し、着地した。
神獣も魔法を使って自らの傷を回復させると同時に、息をつこうとした私目掛けて突進し、今度は右前足で私の上半身を刈り取ろうとしてきた。
私は両手で剣を構えて、前足の攻撃を受けると同時に、神獣の右前足を切り裂いたが、攻撃の勢いで、大きく後ろに吹き飛ばされた。
強い、強すぎる……。
しかし、私がここで倒れるわけにはいかない。
でも、なんで、どうしてこんな唐突に……。
いや、そんな事を考えている場合じゃない。
冷静になれ。
私はこの世界に来てからの3年間、研究に研究を重ねた魔法知識を総動員して、神獣を止める方法を模索した。
『斬って斬れないわけじゃない。
ただ、その隙を与えてはくれない。
ならば、バフとデバフだ。
私の身体能力を極限まで高め、魔力も高める。
次はあいつだ。
動きを止められはしなくても、少しでも遅くなれば良い。
重力魔法、電気ショックによる麻痺、混乱を与え思考の鈍化に、あれに効く毒が何かはわからないけど、とにかく生物に効く毒で最も強力な毒。
動きはどうだ、鈍った気がする。
今ならいける。』
私は、渾身の力を振り絞り、一気に神獣の懐に潜り込み、再び一刀両断を振りぬいた。
今度は、自身の剣技と闘技を乗せて、今出せる最高の一撃を神獣目掛けて打ち込んだ。
神獣は両の前足を器用にクロスさせて、私の一撃を受ける。
次の瞬間、神獣の両前足が宙を舞う。
私は内心で『もらった!』と叫び、神獣の懐から腹を横薙ぎにしようとしたその瞬間、神獣が瞬時に回復させた右前足の一撃を食らった。
私は、木々をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、意識が飛びそうになるのを必死にこらえ、地面への衝突に備えたが、そこで、ふと衝撃が止む。
私は何事かと上を見上げると、そこには見たことのない金髪の美少女がいて、私を空中に浮いたまま、抱きかかえていた。
「え?誰?」
この緊迫した中、私は素頓狂な声を上げてしまった。
「我は我じゃ、わからぬか。」
「いえ、普通にわかりませんが……。」
「金竜だ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「まぁ、色々とあるだろうが、ここはまずアレだ。何なのだアレは。」
「神獣だそうです。」
「また、面倒なものに目を付けられたな。」
「突然空からやってきまして、あんなの放っておいたら、この星ごと消滅しそうだったので、止むを得なく相手をしていたんですが、私ももう死にそうです。」
「だろうな、我が行っても瞬殺だろうよ。」
「私に一つ思いついたことがあるのですが、どうしても隙を見せてはくれないので、行動に移せずにいたんですが、金竜さん、10秒稼いでくれませんか。」
「お安い御用と言いたいところだが、我が全力を出したとて、5秒もかからず殺られるだろうよ。
「元の姿に戻って逃げ回わるとかはどうでしょう。」
「逃げ回るのであれば、なんとかなるかもな。」
私は金竜に時間稼ぎをしてもらい、とある作戦を遂行しようと試みた。
すると、神獣の咆哮が再び空気を裂く。
地鳴りのような振動が辺りの空間全てを揺らし、私達の耳を貫く。
その巨体は、もはや生物というよりも災厄そのもの。
しかし、金竜は先程の作戦どおり、身体を元の姿に戻し、口から特大のブレスを吐くと、神獣の注意を引くことに成功する。
「助かります。」
私はこの隙に意識を集中させて、とある呪文を唱える。
今まで何度も繰り返してきた呪文ではあるが、今回のような試みは初めての事だったので、成功するかどうかはかけでしかなかった。
「クリエイト!」
私の手には、一振りの刀が握られていた。
どうやら私の試みは成功したようだ。
だが、今の状態で、この短い時間だと、これが限界のようだった。
全ステータスが10倍になる効果。
そして、武装固有スキル〈居合斬り〉
あらゆる防御系効果を無効化し、全てを斬り割く至高の一閃を放つ。
私は自らに更なるバフとして、〈身体超強化〉〈思考超加速〉をかけた。
神獣の動き、呼吸、筋肉の収縮――すべてがスローモーションのように見える。
神獣が地を蹴り、数十メートルはあろう距離を一瞬詰め、金竜の喉元目掛けて右前足での攻撃をしかける。
次の瞬間、神獣の右前足が宙を舞う。
神獣は何が起きたのかの理解が追い付かない様子で、瞬時に距離を取る。
「お待たせしました、金竜さん。」
「流石に死んだかと思ったが、何をしたのだ。いや、今はやめておこう。あとは頼んだぞ、其方が敗れれば、この星も終わりだ。」
「任せておいて、とは言えないけど、やれるところまでやってみます。」
私は、右前足を再生する神獣に、魔法攻撃をしかける。
〈グラヴィティバインド〉
ただでさえ重いであろう神獣の身体に、さらなる超重力による行動制限をかける。
心なしか、右前足の再生も遅くなった気がする。
多分私も相当ギリギリだけど、神獣だって余裕で相手をしているわけではないのだろう。
先程よりも、圧倒的強者感は薄れているように感じる。
いや、クリエイトで作った装備のおかげかもしれない。
ステータス10倍は流石に反則みたいなものだろう。
しかし、私だって遊びでやってるわけじゃない。
私が倒れれば、この世界が終わる……。
神獣が吠える、憤りと痛みが混じった咆哮。
そして、その口から放たれたのは、魂すら焼くような白く輝く炎。
私は〈転位〉で移動し、炎を回避した、はずにもかかわらず熱が皮膚を焼く。
髪の先が焦げ、陽炎で視界が揺らぐ。
「くっ……!」
私は即座に回復魔法で傷を癒す。
賢者のローブが魔力消費を抑えてくれているとはいえ、神獣との戦いは消耗も激しい。
次で決めることが出来なければ、おそらく私は敗北する。
この世界が敗北する……。
私は残された魔力を限界まで引き出し、全身に流し込む。
筋肉が軋み、血管が膨張する。視界が赤く染まる。
「これで無理なら、世界の皆さんごめんなさい!」
私は〈居合斬り〉を連続で繰り出す。
一撃、二撃、三撃。
『もっと速く。』
九撃、十撃、十一撃
『もっとぉぉぉ。はぁやぁくぅぅぅぅぅぅ!』
百十……。百八十……。二百六十…………。
「うぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
はじめは神獣の体表を斬り割いていただけの斬撃。
次第に深く、強く、皮から肉へ、肉から骨へとたどり着く。
自分の限界が先か、神獣の耐久力が勝るか。
最早意識のない状態で、斬り続けた。
「おぉわぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
先程まで、その巨体と圧倒的な力で猛威を振るっていた神獣は、無数の細切れ肉と化し、黒い霧となって霧散した。
すると、今、神獣が霧散した辺り一帯が黒っぽい透明な球状となり、収縮し、消えた。
ともあれ、私は神獣を退けることに成功した。
私は地面に降りると、最早立ったままでいることもままならず、膝から崩れ落ちた。
金竜が再び人化した美少女の姿で飛んできて、私を抱きかかえる。
遠のく意識の中で「見事だ。」という声が聞こえ、そのまま私は意識を失った。
神獣の影が消え、空が再び澄んだ青に染まる。
「……ふぅ。やっと、静かになった。」
その言葉に、風が応えるように吹き抜けた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




