28.大魔王の日常
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
稚拙な文章ではありますが、読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
「お姉さま、そこに座ってください。」
「はい。」
「モコちゃんはいいですから、ケイラ、ちょっとモコちゃんを預かってください。」
「は~い。」
「あぁ、モコちゃん……。」
「にゃ~。」
「お姉さま、こっちを見てください。今は私が話しているのです。」
「はい……。」
「で、どういうことですか。〈竜谷に行く〉とだけ書いた書置きを残して、私たちにことわりもなく出て行ってしまわれて。あんな書置き、普通に解釈したら、自殺しに行きますって書いてあるのと同じですよ。」
「いや、ちょっと竜に尋ねたいことがあったから……。」
「お姉さま!」
「はい、すいません……。」
「まったくお姉さまときたら、常識というものがあまりにも足りてらっしゃらないのではありませんか?普通、竜について知りたいことがあっても、竜谷にはまいりません。書物や文献を読み漁るとか、そういうプロセスを経て、それでもわからない時は、常識ある一般人は諦めるのです。世界には未だ知りえぬことがあるのだと。それをなんですか、聞きたいことがあるからって竜谷に行くとか、意味が分かりません。どれだけ心配したことか。」
「シェラ一番最後に起きてきて、しっかり朝ご飯食べて、出がけに気付いてあたふたしてたら、すぐにお姉さま帰ってきたじゃん。」
「ケイラ!そういう話ではないのです!!」
私は、この日も普通に仕事をするつもりでいたが、少なくとも半日は城に行かせてはもらえなさそうな雰囲気だ。
竜谷に行く前は、確かに少しメンタルが落ちていたのは確かだけど、金竜と話をしているうちに、結構ふっきれてきていたので、今後のことについて、具体的にどうするかを考えようと思っていたが、シェラのお説教はそう簡単には収まりそうもない。
「あのぉ、シェラさん、そろそろお仕事に行く時間なのですが……。」
「今日はお休みで結構です!先ほどマリアに言伝をお願いしました。」
「えぇぇぇ……。」
「えぇじゃありません!」
この後、シェラのお説教は2時間も続いた。
確かに普通の人は、竜に会ったらまず死ぬだろう。
しかし、私はこの世界の最強種である竜すら、鼻歌交じりで簡単に討伐出来てしまう。
私の力はある程度は知っているであろうシェラでも、そこらの魔物と違って、やはり竜となると恐怖以外のなにものでもないのだろう。
でも、今のシェラとケイラなら、若い竜なら二人で何とか出来てしまうほどの実力はあるはずだけど、やはり金・赤・紫の三匹がそろう竜谷となると、話は別ということになるのだろう。
ミラさんが気を使って話の腰を折るべく、お昼ご飯を持ってきてくれなければ、おそらくあと2時間はお説教されていたはずだ。
しかも、お昼の後のデザートが、シェラの大好物である、生クリームをたっぷりデコレートしたプリンというのが巧妙だ。ナイス!ミラさん。
マリアさんを使って私の休暇を勝手にとってしまったようだが、やはり中央大陸から移動している魔物の件が気になったので、昼食の後に城に行くことにした。
ライブラさんの報告では、中央大陸から移動した魔物は、飛行型の極めて脅威度の低い魔物らしいが、今まで出てこなかった魔物が海を渡って別大陸に移動したというのであれば、何かしらの理由があるはずなので、まずは、中央大陸が現在どのような状態にあるのかを確認しなくてはならない。
私は城に着くと、秘書のナナイに軍の情報担当官を呼ぶよう指示した。
「マキシ中尉入ります。」
「どうぞ。」
マキシ中尉は、ムーシルト軍の情報収集や分析を担う、特務部隊情報保全別班に所属する、情報の専門家で、特に彼は、情報の分析や解析といった分野に強い、優秀な兵士だ。
「お忙しいところすみません。要件を手短に伝えますと。例の中央大陸から溢れた魔物の被害について、その後、何か進展はありましたか。」
「お気遣い感謝いたします。中央大陸の魔物についての目撃情報及び被害報告についてはムーシルトにおいては上がってきておりません。ただ、ヤーパニ皇国内に範囲を広げると、アタトカで複数件の目撃情報があがっております。」
「まだ、被害はでていないのですね。」
「人的被害は出ておりません。ただし、結界のない城外に出られない状態が続いており、農作物の被害は相当なものになると見込まれています。現在皇都が救援部隊の編制を計画しており、一部の領主様方に向けた支援要請も発出されているようです。」
「その要請、うちにはきてないのね。」
「はっ。どうやらアタトカに近い領の領主様に対するもののようです。」
『なるほどね。つまり軍で対処可能な範囲ということね。』
「わかりました。貴重な情報どうもありがとう。下がっていただいてかまいませんわ。」
「はっ!失礼いたします。」
『溢れてきたのは、一般の兵士でも対処可能なのか。中央大陸ってどんな感じなのかな。ライブラ、何か知ってる?』
[回:中央大陸に生息する魔物については、カーミオで討伐したブルーギガンテス級の魔物が多数生息しており、その他にも同等かそれ以上の魔物が多いため、一般の兵士や冒険者程度では、数に圧倒されて壊滅すると推察します。マスターが対処する場合でも、個別に対応した場合、相当な消耗が予想されますが、大魔法の使用で一気に殲滅することで、労力は激減します。ただし、地形の保全については保証しかねます。]
『なるほどね。でもまぁ、もともと誰も住んでいないなら、別に地形が多少変わったところで、問題はなさそうね。でも、そうなると、たぶん一緒に世界中にばらまきたい魔物も消えてなくなっちゃうわよね。』
[回:魔物の再生には個体差があり、一般的には含有する魔素の量が多ければ多いほど、再生にも時間がかかるとされています。]
『そうか、なるほど、一度全部討伐しちゃって、リポップした魔物から各地に転移させれば良いのか。残りの厄介なのはダンジョン化しちゃえば良いのね。ついでに中央大陸にもヤーパニの旗立ててくれば、占領したことになったりするかな。』
[回:可能です。]
『でもさ、世界情勢的に大丈夫かな、先日バキレムもコチミコもヤーパニ領になっちゃって、ヘミエミルもだし、これで中央大陸をヤーパニがとっちゃったら、いよいよミドガルとか、ハプルとか、ジャブラダあたりが連合しちゃって戦争になったりしないかな。』
[回:戦力的問題を解決しない事には、安易に仕掛けてくることはないと推測します。]
『戦力面ではむしろ連合軍の方が上をいくんじゃない?ミドガルは世界最強の軍らしいよ。』
[回:マスターを戦力として換算していると推測します。先日の三国連合との海戦の映像は各国に送付済みです。]
『あぁ、私もはや新たな魔王ぐらいに思われてないか非常に不安……。』
[告:マスターの評価を分体衆が集めてまとめたものの上位を以下に並べます。
聖女・軍神・女神・イアロの御子・大魔王]
『ちょい、一つ正解混ざってる!』
[回:この評価については、正確な状況を分析した結果というよりは、比喩的な表現である可能性が高いと推測します。]
『いや、そうなんだろうけど、あと、最後の大魔王はもう完全に行くとこまで行っちゃってる感じ。そのうち第〇形態とか言われだしそうで怖い。』
「よしっ!じゃあちょっと行ってくるか。」
私は執務室に自分のコピーゴーレム(ライブラ分体入り)を置いて、中央大陸に転移した。
「うわっ、本当にうじゃうじゃいる、しかも割と皆ごつい感じだね。」
私は中央大陸の中心辺りにある山の上を指定して転移してみたが、山の麓にはブルーギガンテスと同じくらいの魔物が大量にいた。
しかも、青だけでなく、赤やら黄色やら緑やらと、かなりカラフルなギガンテス軍団がいて、一体一体がでかいので、山頂からでも普通に見える。
すると、死角から何かが襲い掛かってきた、と思ったら、途中で攻撃するのをやめて、私を睨みつけ、るのもやめて、ものすごい勢いで去っていった。
[告:フェンリルです。]
「おりこうさんだね、あのまま攻撃してたらやばいってわかったんだね。言葉さえ通じればわかりあえたかもしれないね。」
[告:フェンリルの中には人語を理解できる程度の知能を持った個体も存在します。]
「え?マジで?」
と、言うのが早いか、私はさっきのフェンリルを追いかけていた。
大分距離を取って安心したフェンリルの前に、私が飛び降りると、フェンリルはギャッと声を出して、再び逃げようとしたので、私は行動を抑制するアレストムーブという魔法を使った。
フェンリルは、動けなくなっているはずにもかかわらず、顎をガクガクと震わせて、背後から迫る私を必死に目でとらえようとしていた。
「大丈夫よ、私はあなたに危害を加えたくて追って来たんじゃないの。貴方私の言葉理解できる?あ、動けないか。じゃあ首から上だけ解除するね。」
すると、言葉こそ発しないものの、頭を上下にぶんぶん振って、肯定の意思を表示しているように見えたので、さらに質問を続けることにした。
「貴方は、私見て攻撃しようとしたけど、それを止めたのは、私に勝てないと判断したからなの?」
すると、フェンリルは再度頭を上下に振った。
「じゃあ、あなたは人を見たらとりあえず攻撃したくなるの?」
今度は恐る恐るといった感じで、顔を左右に振った。
「嘘はつかないでね。」
恐る恐る首を縦に振る。
「ふむ、どうやら私の言葉を正確に理解しているみたいね。じゃあ、あなたを人のいる場所に連れて行ったとして、私が人を襲ってはならないと言ったら、その言葉に従って、人を襲わずにいられる?」
すると、今度は首が捥げるのではないかという程に上下にブンブンと振っている。
「そっか、そっか、よしよし。でも、あなたを完全に信用できたわけじゃないから、あなたに隷属の魔法をかけたいんだけど、良いかな。隷属といっても、私が禁止した行動をとれなくなるというだけで、それ以外は基本自由だけどね。」
私の言葉に、一瞬躊躇いの色をのぞかせたが、しかし、フェンリルは上下に頭を大きく振った。
「ありがとう、これであなたは私に討伐されずに済むわ。」
フェンリルは一瞬青ざめたような顔をする。
「ここの魔物に何があったのかはわからないけど、一部の魔物がこの大陸を囲む海を越えて、人の住む地に紛れ込むようになったの。それで、人でも対処出来る程度の魔物はそのまま生かして、各大陸に住んでもらおうと思っていたんだけど、ここの魔物はあなたも含めて、普通の人じゃ相手にならないでしょ。だから、一度討伐されてもらって、ダンジョンに取り込もうと思っていたんだけど、あなたに限っては、それを免れたという話よ。」
すると、フェンリルは、あぁ、なるほど、とうような顔をしてうなずいていた。
「あはははは。あなた顔芸が面白いわね。良い友達になれそう。」
こうして私は新たな仲間を手に入れた。めでたしめでたし。では終わりそうもない。
シェラさんになんて言い訳をしよう。
今日の今日で、今度は魔大陸に行って、フェンリルを拾って来ましたなんて言ったら、シェラさん発狂して屋敷が吹き飛ぶんじゃないだろうか……。
「なんて言い訳をしよう……。」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




