20.三国の影
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
稚拙な文章ではありますが、読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
あと、魔族の話し方を差別化しようとカタカナで会話させていましたが、非常に読みずらいので、今後は普通に話をさせることにします。
本日から20時投稿に変更しました。
あと、AIにイメージイラストを描いてもらったら、意外にもかわいかったので、近いうちに画像を掲載できるように調べてみます。
(誤字報告いただきました。いつも本当にありがとうございます。)
皇王執務室に転移すると、陛下の前には執務机を挟んで一人の男性が立っていた。
誰かと思って覗き込んでみると、以前何度かあったことのある人物だった。
「陛下、取り急ぎ、お耳に入れておくべきと判断した情報が御座いますので、参上いたしました。」
「キラか、どうした。」
先客は「では、私はこれにて。」と場を辞そうとしたが、私はそれを引き留めた。
「シンプソン様もご一緒にお聞きになられた方がよろしいかと。ひょっとすると、シンプソン様の要件も、ヘミエミル、バキレム、コチミコ。この三国の何れかに関することだったのではないでしょうか。」
一瞬、クレイ・シンプソンの顔色が変わる。
「実は、私の間者から得た情報の中に、気になるものがございました。ヘミエミルにバキレムとコチミコの高官が非公式で訪れたようです。どうやらヘミエミル側が応対したのは、3年前の事件を画策したと推察しているあの男のようで、今回もむしろヘミエミル側からの呼びかけに対して、バキレム、コチミコ側が応じたものと思われます。」
「またか、して、その情報の確度は。」
「はっ。録音したデータがございます。お聞きになられますか。」
「ふむ。」
「では、失礼いたします。」
私は魔法でライカスから送られてきた会話の録音データを再生した。
〈ようこそヘミエミルへ、お二人とも私の呼びかけに応じていただき感謝申し上げます。〉
〈アデパム殿にお声がけいただいたら、無下にするわけにもいきませんからな。〉
〈アデパム様もヤキック様もご健勝そうでなによりです。〉
〈そういうウィル殿も、また一段と貫禄が出たようで、頼もしい限りですな。〉
〈して、例の件の進捗はいかがですかな。船の方は順調というのは聞き及んでおりますが、人工ゴーレムの開発については、その後に進展したという話も聞きませんのでな。〉
〈ご安心ください、既に完成しております。今は量産の為、それこそヤーパニから魔石を大量輸入する算段をつけているところです。〉
〈自国で輸出した魔石で、自国を焼かれるというのは、どのような気分なのでしょうな。〉
〈〈〈ワァッハッハッハ〉〉〉
「この後もまだ続きますが、これだけあれば十分かと存じます。アデパムは言わずもがなですし、ヤキック・コートはバキレム軍の総帥、ウィル・ポーツはコチミコの海軍大将。とりあえず、我が国としましては、魔石の輸出に関しては、国で管理しており、輸出量に関しましても、輸出先の人口等を勘案して決定しているので、既定の数量を超えて輸出することがあれば、それを行った者の特定は難しくはないかと思われます。求めている魔石の種類に関しても、大凡の検討はつきますので、なおのこと、簡単に特定出来るはずです。」
「ふむ、クレイ、先程申していた魔石は、何の魔石じゃった。」
「はっ、結合と駆動をコントロールする魔石でございます。」
「キラ、どうじゃ。」
「はっ、おそらく、人型のゴーレムを人工で作ろうとした場合、結合と駆動をコントロールする魔石を大小合わせて40程度は使用すると思われます。ただ、人型のゴーレムの生産に力を入れたところで、それを上陸させ、さらに移動させて戦闘となると、戦闘に利用するまでにも相当な魔力の消費が予想されます。しかも、バッテリーを用意するにしても、40か所の魔石に充填するとなると、相当非効率なものになるかと。しかし、それが、歩行するものではなく、飛行する物だと考えるなら、可動箇所は激減するので、効率も運用性も格段に上がるはずです。私であれば、それをある程度の制御を陸上で出来るような魔法制御も可能です。」
「なるほどな、人型のゴーレムよりは、飛行型のゴーレムと考えた方が、国を焼かれるという言質にも合致すると。」
「おっしゃる通りかと。」
「クレイ、其方に魔石の横流しを持ちかけたのは誰じゃ。」
「トレヤンという男です。」
「アデパムの下に、確かトレヤンという技術士官がいたはずです。」
「確定じゃな。」
「トレヤンという男の口ぶりでは、既にいくつかの都市から供給を受けているが、まだ足りない。といって、私に話を持ち掛けたと申しておりました。」
「おそらくブラフかと。理由としましては、結合と駆動の魔石を生産出来る施設が1か所しかないということと、生産から供給に至るまで、全ての工程で、私の部下が直接管理をしているので、そのルートからの横流しは不可能です。出来るとするならば、各国へ輸出する船に乗せた後ということになりますが、その線も薄いかと。供給量を減らされたいう苦情を受けた事実は御座いませんので。」
「ふむ、して、其方の部下を疑うわけではないが、確度は問題ないのであろうな。」
「はっ、私が作り出した魔法精製物ですので、確度は100%と言い切れます。」
「何っ!?其方の部下は魔法で作ったものなのか?」
「全員ではございませんが、ある程度の数はおります。」
「ほとほと恐ろしいヤツじゃの、他に何か隠してることはないであろうな。」
「今のところ、これといって思い当たる節は御座いませんが、あったとしても。」
私は一瞬クレイに視線を向けて、言葉を濁した。
「おぉ、少し見ぬ間にまた背が伸びたのではないか、ケイラ。シェラはますます綺麗になって、これでは婚姻の申し込みが後を絶たないのではないか。」
ルドルフ・ハイゼンスリーブ辺境伯、彼は久しぶりに会う、姪子にでも見せるかのような破顔で、ケイラとシェラの頭を撫でる。
「ルドルフ様、お久しぶりにございます。本日はようこそお越しくださいました。」
「なんだシェラ、そのような他人行儀はよせ、以前のようにおじさまと呼んでくれ。」
「ほら、だから言ったじゃん、おじさまはそんな堅苦しい話し方好きじゃないって。」
「ケイラは少しくだけすぎなのよ。」
「わっはっはっは。二人とも元気そうで何よりだ。ところで姉上はどうした。」
「お姉さまは午前中は公務ですが、昼食には戻ると言って出かけたのですが、まだ戻りません、せっかくおじさまがいらっしゃるというのに。」
「まぁ、仕方のないことだ。今やキラ・パラディオールは、ヤーパニ皇国のみならず、世界の守護神のような存在。次から次へと厄介事のほうから押しかけてくるのだろう。」
「もうしわけありません、もうそろそろ戻ると思いますが。」
約束の時間に戻らぬ姉に気が気でないシェラとは反対に、ケイラはルドルフの手を引いて、さっさと応接間に向かい、後で手合わせをしようと約束を取り付けていた。
すると、突然シェラの目の前に、転移してきたキラが現れる。
「シェラ、遅くなったわね。ルドルフ様は。」
「たった今、ケイラと一緒に応接間に。」
キラの顔が、いつになく緊張しているのに気が付いて、それ以上のことは何も言えずに、言葉を飲むシェラ。
キラは、ルドルフの後をおって応接間に入ると、ルドルフに声をかける。
「ルドルフ様。」
「おぉ、キラ閣下、お久しぶりでございます。」
「閣下だなんて、やめてください。それより、あいつが動き出しました。バキレムとコチミコを巻き込むつもりのようです。」
ルドルフは、キラの言葉を聞いて、一瞬で顔つきが変わる。
「いよいよ来るか。」
「そのようですね。せっかく遊びにいらして下さったところ申し訳ないのですが、午後に一度、陛下の所にご一緒願えませんでしょうか。」
「その方が良さそうだな。よしっ!では、早速だが、昼食をいただくとしようか、メイベルが腕を振るってくれているのだろう。」
「そうですね、彼女も昨夜から張り切って仕込みをしておりました。」
密閉型の戦艦ドックの中、オレンジ色の明かりがいくつか点灯しているのみの構内は薄暗く、既に作業は終わっているようで、辺りは静寂に包まれていた。
戦艦が見渡せる管制室の中、二人の魔族がいた。
「これが、我が国の最新鋭の戦艦か。」
「はっ。この船には、ヤーパニから輸入した魔石を多く使用しておりますので、進路の制御から推進力に至るまで、風など無くてもかなりの航続距離を稼ぐことが出来ます。もちろん補助として帆も搭載しておりますので、巡航時には帆を使用して、魔力を節約することも可能ですので、決戦の際に息切れして使い物にならない、などということは御座いません。」
「ふむ、して、例の新兵器とは。」
「既に完成しております。こちらへどうぞ。」
アデパムは観光地によくある望遠鏡のような物の前に、男を案内すると、その望遠鏡を覗き込むよう促す。
「あの、先の尖った筒の様な物がそうか。」
「はっ。あれは、今後の戦争を大きく変えてしまう程の力を持っております。アレには複数種の魔石が使用されており、着弾地点を自在に操ることが出来、中には大量の火薬と、金属の球体を仕込んでありますので、人が密集している場所を狙って着弾させれば、100や200の兵など、一瞬で仕留めることが可能となっております。」
「ふむ、確かに強力な兵器ではあるのだろう。しかし、我々が解析すらままならず、その需要を輸入にのみ頼るしかない、魔石を作る国が、これと同じか、それ以上の兵器を開発するとは思わぬのか。」
「確かに、魔石においては後れをとってはおりますが、しかし、これを開発したのは私でございます。私を超える天才が、この世に存在するとは思えませんので、陛下におかれましては、どうぞご安心ください。此度の作戦、必ずや成功させ、ヤーパニの国土も、産業も、全てを手中に入れて御覧にいれます。」
アデパムには絶対の自信があった。
かつて自分が弄した策が、たった一人の少女に力でねじ伏せられ、その後、全て看破されていたことを知らなかったのだから、仕方がない。
そして、今回3年の月日をかけて再度ヤーパニへの侵攻を画策していることが、全て筒抜けであることもまた、彼は知らないのだから、自信に満ちていたとしても、仕方がないのだ。
「おぉ、ルドルフも来たか。」
「はっ。丁度キラ閣下の所に遊びに来ていたのですが。タイミングが良いのか悪いのか。」
「まぁ、呼び出す手間は省けたのぉ。して、此度は向こうはどう出ると見る。」
「今回はバキレムとコチミコを巻き込んでの侵攻となりますので、直接皇都を狙ってくるのではないでしょうか。」
「となると、イース湾か。」
「おそらく。敵の手としては、サルモアを素通りして、イース湾から侵攻し、ハーコッテの南、若しくはサイヒル北に陣取るのが最善手かと。あの辺りですと、南と北からの挟撃を警戒するのでしょうが、我々が何も知らないという前提で動くのであれば、あそこを抑えることで、南北の軍を分断し、なおかつ神速で皇都を叩けます。皇都からの指示がなければ南の軍の出足が鈍ると考え、戦力が固まる前に皇都を叩けると考えるのではないでしょうか。」
「して、我々はどう陣取る。」
「正直な所を申し上げますと、陣取りたくはありません。一部地域にのみ適当な理由をつけて避難勧告をだし、あとは私にお任せいただいた方が、被害を最小限に抑えることが可能です。というか、こちらの被害は出しません。ただ、あとは軍をどうなだめるかという話になりますが。」
「良いのではないか。なにも馬鹿正直に全てを伝える必要もあるまい。全てが終わってからの事後報告でも問題はなかろう。しかし、ヘミエミルについては、艦隊全滅だけで済ますわけにはいかんがの。」
「ヘミエミルを墜とすおつもりですか。」
「可能か?」
「軍事侵攻ということにするならば、こちらの被害も向こうの被害も相当なものになるのは避けられません。しかし、私にやらせていただけるのであれば、兵や一般人に被害を出さずに、国の首魁のみを潰すことも可能です。」
「何から何までキラ閣下に丸投げというのも気が引けるが、事実、最小限の被害に抑えるというのであれば、キラ閣下の言う通りにするのが、最善であることに間違いありませんな。」
「やってくれるのか?」
「陛下の御意向とあらば、仰せのままに。」
あとは敵が動き出すのを待つことにして、私達はムーシルトの屋敷に戻った。
屋敷に戻ると、ケイラがプンプンとお怒りのご様子で、せっかくルドルフ様と立ち合いの約束を取り付けたのに、私がルドルフ様を皇都へ連れて行ってしまったから、機会を失ってしまったと、珍しく本気で脹れていた。
そんなケイラを見て、ルドルフが、今からでもまだ立ち合いは出来るというと、ケイラは急に態度を一変して、ニコニコと木刀をとりに行ったのだった。
よほど剣術が楽しいようで、今度、私も剣術の練習相手にでもなってあげようかと思った。
木刀を二本抱えて、嬉しそうに走ってきたケイラは、ルドルフ様に木刀を一本渡すと、お願いしますといって独特な構えを取った。
腰を落とし、左脚を前に半身の姿勢で、右手に持った木刀を後方に引いて構え、空いている左手を前方に突き出すように構えている。
すると、一歩踏み込んだとたん、一瞬のうちに間合いを詰め、飛び上がるのとほぼ同時にルドルフへ一撃を振り下ろす。
その一撃を難なく木刀で受け止めるルドルフの剣圧を利用して、更に回転しながら飛び上がり、下降する勢いと、回転運動を掛け合わせて、更なる重い一撃を振り下ろす。
クルクルと回転しながら四方八方に飛び回り、振り下ろしては離れ、詰めては振り下ろすという、なんともアクロバティックな動きで相手を翻弄する姿を見ていて、私は強い既視感に苛まれた。
『これは、もしや、小さき緑のレジェンド、ジェ〇イマスター、ヨ〇ダの動きでは!』
まだ幼いケイラの小ささも相まって、まさにEP2での白髪の闇堕ち紳士との戦いを彷彿とさせる、素晴らしい戦いぶりだった。緑ではないけど。
私は、ケイラの素晴らしい剣技を見て、あの封印されし、魔王の手下と壮絶な戦いを演じた伝説の光剣を、ケイラの分も作らなくてはと強く心に誓ったのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




