14.胎動
数ある作品の中から、私の作品を見つけてくださり、ありがとうございます。
稚拙な文章ではありますが、読んでいただける方に楽しんでもらえるよう頑張りますので、今後ともよろしくお願いします。
本日日曜日ですが、長いのでこれ1本で行きます。
私は、シェラの家族がなぜ魔王領にいたのかについての調査を依頼したが、結論が出るまでの間、このままトベルに滞在するわけにもいかないので、一度ムーシルトを経由して、皇都に戻ることにした。
この一連の騒動が、何者かによる策略だった場合、首謀者がいるならば、シェラは既に両親と共に死亡していると考えているはずなので、私と共に行動することで、シェラの生存が知れ、その身に危険が及んでも困るので、ハーコッテの自宅に預けることにした。
私はトベルの砦からシェラを連れてハーコッテの自宅に転移し、皆にシェラを紹介した。
「彼女はシェラと言って、エルフィンの女の子です、故あって私が保護することになったのだけど、私もまだムーシルトやら皇都に知り合いがいるわけでもないので、こちらに連れてきました。私が戻るまでの間、皆さんシェラの事をよろしくお願いします。ケイラちゃん、シェラちゃんと仲良くね。シェラちゃんの方が少しお姉さんだけど、ここの事も皆の事も良く知らないから、ケイラちゃんが色々と教えてあげてね。」と言うと、ケイラはニッコリと微笑んで「はい!」と元気よく返事をしたかと思うと、早速シェラの手を引いて「シェラちゃん私のお部屋で遊ぼう!」と言ってトタトタと階段を上って自分の部屋に連れて行ってしまった。
ケイラが可愛すぎる、天使か。
私は、残った使用人達にシェラを預かることになった経緯や、シェラの両親の不審な死についてを話し、なるべく気が晴れる様に皆でサポートしてほしいと伝え、私は魔王を討伐したことと、その報告の為、このまま一度ムーシルトに入った後に、皇都へ向かう旨伝え、ベルカーには、ハイゼンスリーブ卿にもこの件を代理報告してほしいと言づけて、自宅をあとにした。
ムーシルトに戻り、そのまま城に入る旨衛兵に伝えると、門衛の責任者が護衛の為に4名の衛兵を付けると言ったので、道案内に1人いれば良いと伝えると、それではと、定時の報告がてら、休憩の為に城に向かうという衛兵がいたので、その衛兵に道案内をたのんで、城へと向かった。
道すがら、雑談ついでに衛兵の名を尋ねると、オースティンと名乗ったので、オースティンに、このムーシルトやアタ、トベルでは人種以外の種族も生活していたりするのかを尋ねると、エルフィンやドルフィ、竜人族、獣人族などはよく見かけるが、ギガンや魔族はめったに見ることがないと教えてくれた。
更に、ヒューム以外の者に対する差別的な風潮はないかも尋ねたが、ヒュームでないことを理由に、何かしらの不利益を被るということはないと思うと答えた。
シェラのご両親殺害の問題は、種族としてのトラブルというよりは、個人的なトラブルによるものなのか、あるいはもっと別の何かなのか、今のところは情報が少なすぎるので、深く考えても答えは出ないだろうと、私は考えるのを先送りにしたが、どちらにしろ、ご両親は魔物によって殺害されているので、直接の犯人は魔物なので既に討伐済みではあるが、誰かが防壁を破壊し、意図的にシェラ達を魔王領に連れ込んだのだとしたら、それはもう未必の故意による殺人以外の何物でもないので、間接的な犯人がいるなら、必ず見つけ出し、自らの行いに対する代償は支払わせようと心に決めたのだった。
城に着くと、城門の前で大勢の人間が私を待ち構えていた。
私はこの場にいる者全員、誰が誰なのかもわからないので、とりあえずムーシルトの責任者的な位置付けの人物が誰かを確認し、その人物以外はいったん退散してもらって、後刻説明をする旨伝えると、パラパラと解散して行く中で、一人残った人物に、ここの責任者なのかを尋ねると「ワタクシは当ムーシルトの執政官を務めさせていただいております、ジェミソンと申します。当パラディオール地区には長らく領主様が不在でしたので、ワタクシが内務省より派遣されて政を取り仕切っておりました。今後はキラ閣下の元で、政に関する一切の意思決定を補助するよう仰せつかっておりますので、必要な資料や情報収集など、いかなるご要望にもお応えいたします、どうぞよろしくお願いいたします。」と、恭しい態度で語り掛けてきたので、私も「武力はあっても政は素人ですので、ジェミソン執政官のような方がいてくれると助かります。早速ですが、私はこの城を居城とすれば良いのですか。」と尋ねると、ジェミソン執政官はニッコリと微笑んで、揉み手をしながら「もちろんこちらにお住まいいただいて一向にかまいません、これからご案内いたしますが、一階は各種調理場や詰所等々、領主様のお世話をする者が使うエリアとなっており、一部応接室などの来客用の施設が完備されており、広間は2階にございます。3階に領主様方がお使いになる個室があり、護衛用の居室が各部屋の隣に併設されております、もし城では落ち着かぬとおっしゃるのであれば、別に屋敷を建築することも可能でございます。」
「ということは、建設をするための敷地はあると理解しても差し支えありませんか?」
「おっしゃる通りでございます。」
「わかりました、では建設は必要ありませんが、私が自由に使える敷地を見せていただけますか?」
「かしこまりました、ご案内いたします。」
ジェミソン執政官は、徹底した平身低頭ぶりで、私を城の裏側にある扉まで案内し、扉を開けると「左手奥に見える高い建物が兵の詰所でして、その隣にある大きめの建物が訓練施設でございます。中央の広場と右手側一帯の雑木林については現在使用用途が特に定められておりませんので、ご自由にご利用いただいても差し支えありません。」と説明してくれた。
「あの雑木林の奥に見える古びた建物は何ですか?」
「えっ?あれがお見えになる?常人ではあれほど奥まった場所で、木々に囲まれている建物は発見することが困難かと思われますが、流石閣下にございます。あれはもう既に使われなくなってしばらくたつもので、正直私も何に使う建物なのかは存じ上げませんが、不要な物かと推察いたしますれば、閣下がご利用の際に不要であれば直ちに取り壊します。」
「いえ、それには及びません。全てこちらで対処します。それとジェミソン執政官、この城もそうですが、街の上水及び下水の設備はどうなっているのですか?」
「浄水?でございますか?」
「いえ、上水、飲み水や料理、入浴、等々、生活用水の事です。」
「あぁ、それでしたら、多くの場合川の水を汲んで利用しております。一部井戸水を利用している地域もございますが、井戸水はあまり衛生的にも飲食用としては不適切な場合もございますれば、ほとんどが川の水を利用しております。下水に関しては、生活用水は近隣の川に流れる様になっております、便水については定期的に汲み取った物を郊外の集積場に集め、燃やしております。」
「そうですか、わかりました。ちなみに、城で働く方は街の財政から給料を支払われると解釈して良いのでしょうか。」
「その通りでございます。」
「財源は税収のみですか?」
「基本的にはその通りでございます。ただし、この地は魔王領に隣接する土地柄ですので、皇国からの防衛費が下りてきますので、そちらも財源として活用させていただいておりました。」
「つまりは、これといった産業もなく、財源は税収と防衛費のみという認識で間違いありませんか?」
「おっしゃる通りでございます。」
「その税収についてですが、国で定めた上限の範囲内で賄い切れているのですか?」
「各領で徴収する税率については国の定めは御座いませんので、領主様の裁量に委ねられております。ですので、領内の生産力如何で税を高く設定する必要があるかと存じます。」
「パラディオール領については税率はどのようになっているのですか?」
「そこはしっかりと徴収させていただいております。概算を申しますと、一世帯3名として、世帯毎に月の総収入の30%を納付がベースとなっております、そこから更に世帯に一人増える毎に5%加算しております。加えて商売を営んでいる者には別途商品代金の10%を加算して販売させ、それを納めさせております。これにより、定住する者以外からの徴税も可能となっておりますれば、このシステムを導入しているのは、当領地のみでございます。」
「なるほど、今の話だけでは判断が難しいですね。本日は、この後皇都に向かいますが、予算については早急に検討する必要がありそうなので、税収と執行予算についての資料を過去5年分程度で良いでしょうか、全て準備しておいてください。」
「か、過去5年分でございますか、して、税収と予算と申しましても、どの予算についてかをご指定していただければ、作業もはかどりますれば。」
「過去5年間で、このパラディオール領が徴収した全ての税金と、その使い道についての資料全てです。何か問題がありますか?」
「す、す、全てでございますか!?」
「まさか、内務省から派遣されて領置運営をしていた執政官が、その税収と使途についてなんの記録もなく、領置運営はどんぶり勘定でやっておりました、なんてことはありませんよね。」
「も、もちろんでございます、資料については直ちにご準備させていただきます、して、お戻りはいつ頃を予定しておりますでしょうか。」
「皇都で魔王討伐の報告をしたら、はいそうですかでは終わりそうもないので、1週間程度はかかるかと思います。そうそう、戻る際に私の家族と使用人をハーコッテから呼び寄せるつもりです、その時一緒に城に入ると思いますので、予めお伝えしておきます。」
「畏まりました、ワタクシは早速書類の準備に取り掛からせていただきます。皇都及びハーコッテへの道中お気を付けくださいませ。それでは失礼いたします。」
あの様子だとおそらく財政についてはそうとう黒い感じでやってきたのだろう、税金をどれだけとったかをイコール自分の能力と考えている節がある。
おおかた内務省の何方様かに相当な額を流しているのだろう。
私はここで一つの案を思いついた。
ただし、この案を実行するためには流石に独断で行うことは難しいので、皇王陛下に相談することにした。
私はそろそろ出発しようかと思い、城を出てそのまま街の東門に向かって歩いていると、街の中に食料品を販売する店がまばらに散らばっており、街並みも区画整理がなされていないので、初見では店なのか民家なのかの判断も難しく、お世辞にも活気のある街には見えないなという印象を受けた。
「どうも、田舎の寂れた商店街をイメージしちゃうなここは。」
私は、ついつい独り言を吐いてしまう。
「しかも、臭いな…。」
おそらく、この世界では、皇都もそうだったことからも、生活インフラを国が整備するという概念がなく、ただただ住人達のするがまま状態が当たり前になっているようで、空気も淀んでいて衛生的にも問題があるように見える。
あと、この世界は物の移動に次元収納を利用することで、大きな物を運搬する技術や、生物を冷やすという概念が欠如している。次元収納には時間経過や体積、重量の概念がないので、入れたものは原則そのままの状態を保つ、時間経過による腐敗が発生しないので、冷やして冷凍保存するという考えや、大きな物、重量のある物をいかにして運ぶかといった考えにはいたらないようだ。まぁ、冷凍などより次元収納の方が圧倒的に性能が高いので止むを得ないとは思う、しかし、そもそもの話として、次元収納を私以外で使っているのを見たことがないので、存在はしているけど、希少性の高い技術である可能性が高く、であるならやっぱり技術開発に力を入れた方が良い気がするのだが…。
東門を出てしばらくは田畑が続き、衛兵もまばらに巡回をしている。
この辺りも空からの魔物襲来があったらしいので、衛兵がいるのも止むを得なかったのだとして、今後は、これらの人員についての雇用も考える必要があるな、などと考えながら農耕地帯を抜け、未開拓ともいえる森林地帯に入る。
森に入ってすぐに、私は周囲に人の気配がないかを確認し、転移で皇都付近へと移動すると、そのまま城に向かって徒歩で移動し、城門で衛兵に身分証を呈示しようとしたが、既に私の事を認識していたらしく、そのまま通してくれた。
城内に入ると、エントランスの中央にある、2階へと続く階段の前にいた衛兵に、皇王陛下への報告があるから取次を願いたいと申し出ると、しばらくしてディロン内務大臣が下りてきた。
ディロン内務大臣に報告内容の概要を伝えると「畏まりました。」と述べて立ち去ろうとしたので、皇王様への報告の際はディロン内務大臣にも同席を願いたい旨を伝えると、ディロンはそれではと言って、一緒に皇王陛下の執務室に向かうことになった。
皇王陛下の執務室に到着して、ディロン内務大臣が取次ぎ、私から報告事項がある旨伝えると、即座に室内に通された。
私達が執務室内に入ると、皇王陛下は身を乗り出して食いつくように。
「して、朕に報告とはなんじゃ、魔王を討伐した件については既に聞いておる、後日世界に向けて当皇国の侯爵が人類の悲願を達成したと大々的に発表し、セレモニーを開催する予定を立てさておるぞ。」
私は年相応の浮かれた表情で話す皇王陛下に対し、社交辞令がてら「身に余る光栄、ありがとうございます。」と答えた後に、報告と相談があると付け加え「今回の魔王討伐は、魔王含めた全ての魔物の討伐に成功しました。魔王及び魔物については、その霧散した魔素をダンジョンコアに取り込み、元の魔王城から西に4~5キロ離れた山の麓にダンジョンを設置してきましたので、今後は魔王や魔物が復活して地上に出てくるということはありません。魔王も魔物も復活こそしますが、活動はダンジョン内の、もっと言えば各自が今いる部屋から出てくることもありません。そこで、一つご相談があるのですが、元魔王のいた城や解放された領地をどうするおつもりなのでしょうか、私の考えている事の前提条件となるこの件をまずはどうするのかをお教えいただけないでしょうか。」
「成程、確かに戦争で手に入れた領置とは違い、魔族が住んでいた土地となると、それを手に入れたところで、整備するための人員の確保は難しいからの。」
「その点については問題はございません、というか、既に私の魔法である程度の整備は済ませてあります。」
「何!?まことか?しかし、まぁキラがやったというのであれば驚きはしないがの。して、結局のところ、相談とはなんじゃ。」
「はい、実は、ムーシルトの件なのですが、街の構成が少しひどいと申しますか、色々と不便なものですので、一度私がある程度整備してきた元魔王領に街ごと引っ越したいなと考えておりましたが、そのご許可をいただけないかと。その後にムーシルトを整備した後は、再度引っ越して、領置に関しては皇王陛下にご返却いたします。」
「キラよ、何を言っておるのじゃ。魔王領を平定したのは其方じゃ、領地は増やしたものが管理するのがあたりまえじゃ。其方の好きにするがよい。」
そう言う皇王陛下に対して驚いた顔をしてディロン内務大臣が口を開く。
「陛下、お言葉ですが、魔王領は相当に広大な面積でございます。それをまるまる先日パラディオールを与えられたキラ侯爵にお渡しになるとなると、相当な反発がでることとなると予想されますが。」
「ディロン、キラは魔王を討伐したのじゃ、本来ならば、朕がこの地位を譲り渡すのが筋というものじゃ、それをパラディオールと魔王領で我慢してくれると言っておるのじゃ、そうじゃろキラ。」
私は恭しく頭を垂れたまま「私が皇王陛下の座を狙うなどということは、断じて御座いませんし、魔王領も一時お貸しいただきたいと思っただけなのですが。」
私は野心など微塵もないことを伝え、この後の話に影響が出ないよう努めた。
皇王陛下は「ほれ見ろ、キラはディロンの様に小難しいことばかり考えている者とは違うのじゃ。のうキラ。」
私はディロン内務大臣の方を向いて話を始めた。
「実は、魔王領については、誰が領地を治めることになるのかという点について、懸念はありました。あそこは北に竜谷があり、かつてその竜に攻撃を受けていた痕跡を発見したので、万が一魔物や魔王ではなく、あの地に何かあるのだとしたら、少々厄介な事にもなりかねないなと。しかし、私があの地を治めることが出来るというのであれば、その懸念も払拭することが出来ます。竜が来ても倒しますので。」
「その話は、確か、神話か何かで読んだ記憶がありますが、竜と魔族との争いごとは、事実だったということでしょうか。」
「私も魔王領とカーミオ大森林の植生の差について疑問が生じたので、土壌を調べたところ、紫竜のブレスの残滓を検出することに成功しました。つまりは、そういうことかと。」
「なるほど、そのような根拠をお持ちだったのですね。わかりました、この件については、私の方でセレモニー開催までには、根回しを済ませておきます。」
「それと、もう一点、これもディロン内務大臣の方がお詳しいかと思うので、お聞き願いたいのですが、パラディオールの統治権を持つ者に、内務省から派遣されてきたジェミソンという者がいるのですが、この人物はどうも圧政を敷き、領民を苦しめていたようで、民から搾り取った税金を、領地の運営であればまだしも、私腹を肥やすことに執心し、あろうことか皇都の地位ある方へ賄賂を贈ることで、その発覚を免れていた節があるのです。」
私の話を聞いていたディロン内務大臣は、目に見えて表情が険しくなり、私が話し終えると「私の部下にそのような者がいたとは、断じて許すことはできません、キラ閣下、その者を直ちに皇都に送還していただきたい、直ちにこの私自らが尋問し、厳罰に処することをお約束いたします。」
「承知いたしました、それでは私がムーシルトに戻ると同時にジェミソンを更迭するとお約束いたします。」
ディロンの表情は大分落ち着いたようだ、私がムーシルトに帰還後と約束したことで、時間的猶予が生まれたと安心したのだろう。
しかし、私はこのまま皇都に居ながらにして、いつでもジェミソンの前に行くことが出来る、彼も今頃必死で証拠の隠滅に勤しんでいるはずで、恐らくこれからディロンからの早馬による指示を受けて、早すぎると慌てることだろう。
私は頃合いを見て転移すれば良い。
その頃合いについても時期を見誤ることはない、何せ、ライブラの映像記録機能を遠隔地でも録画可能なように、新たな装置というか、秘密兵器があるからだ。
ディロン内務大臣は、そのまま私はこれにてと言い残して皇王陛下の執務室をあとにした。
私は小声で「どこの世界でもトカゲの尻尾は切られる運命なのね。」と言うと、その言葉に対して皇王陛下が「言葉の意味は分からぬが、しかし、ニュアンスは伝わった。キラよ、あの男はアレで結構優秀なのじゃ、朕にも尽くしてくれておる。この世の覇者の資格を有する其方ではあるが、何とか、手心を加えてはもらえぬか。」
私は心配そうな眼差しで私を見る皇王陛下に微笑みかけて「私はこれまでの事で誰かに何らかの責任を追及するつもりは御座いません。私がこの地に現れる前に起きた事にまで言及してしまえば、それはもう収拾のつかないことになります。1000年前の窃盗事件にまで目を向けていたら、私の身体と脳みそがもちませんので。ですが、あのジェミソンという男、民衆を苦しめているということに罪悪感がないと言いますか、むしろそれこそが為政者の仕事くらいの雰囲気を醸し出していたので、ちょっと鼻についたから、飛ばしてやろうというのが本心です。あとは少々肝を冷やしてもらうくらいは良いのかなと。」
「キラ、すまぬ、朕がもう少ししっかりしておれば…。」
「何を弱気な事をおっしゃいますか、陛下は既にお立場はお立場なれど、その経験はこれから積まれて行くものではございませんか。諫言ばかりを述べる者以外にも、ルドルフ閣下のように真に民を思う賢人もおります。耳に痛い事を述べる者こそを重用するように心がけてくださいませ。」
皇王の顔は、年端も行かぬ子供が見せる表情とは程遠い、老人が見せる諦観ともとれるような笑顔だった。
私はなんだか自分が皇王陛下を追い詰めたような気になって、居た堪れない気持ちになったので、陛下に一つ提案をする。
「陛下、今お時間は御座いますでしょうか。」
「時間など、今と言わず有り余っておる。朕などおらずとも国は回る。」
「では、少々気分転換に、私が手を入れた元の魔王城を見に行きませんか。1時間もあれば十分見て回ることが出来ます。お付きの者に1時間は誰も取り次ぐなと命じていただければと存じます。」
「1時間で何が出来るというのだ、第一、ここから出られなければ魔王城など行けぬではないか。」
「実は、私、転移の魔法も使えるのです。まだ誰にも伝えてはおりませんが、陛下には特別です。」
「転移!?まさかこれ程規格外であるとは、ちょっと待っておれ。」
皇王陛下は、執務室の扉まで行くと、扉を開け、外で警備中の兵士に命じた。
「おい、朕はこれよりキラと魔王領についての重要な議論があるため、誰が来てもここを通すでないぞ、わかったな。」
扉の外で「はっ!畏まりました!!」と勢いのある返事が聞こえてきた。
私は「お手を失礼いたします。」と言って陛下の手を取り、転移魔法を使って魔王領へと移動した。
まずは城内ではなく、裏山に設置した水源地に移動し「陛下、これは水源地でございます。裏にあった山を切り開いて、生活に必要な上水を確保いたします。雨水等をここに貯水し、足りなくなれば私が水魔法で補充します。貯水されている水は必ずしも綺麗ではありませんが、濾過することによって飲用に耐える基準にまで達しております。この貯水池からこの眼下に広がる街全体に生活用水を供給することが可能となっております。」
「すごいの、これは驚いた。魔王を倒しただけでなく、こんなものまで作るとは。」
「それでは実際に水を飲んでみませんか。城内へと移動いたしましょう。城内は既に改装が完了しておりますので、水も出ますし、煮炊きも可能で、生活することが出来るようになっております。では失礼。」と言って、再度皇王の手を取り城内へと転移する。
「こちらが城内となります。この城はベースは魔王が住んでいたところではありますが、既に、上下水道の配管は済ませてあります。こちらへどうぞ。」
私は皇王陛下の先に立ち、調理場へと進む。
「陛下、どうぞ、こちらを飲んでみてください。あ、失礼いたしました。私が先に飲んだ方がよろしいですよね。」
私は陛下が口にする前に、実際に水を飲んで見せてから、再度グラスを差し出す。
蛇口から出た水を一口飲んだ陛下は、目を見開いて笑顔になると「こっ、これは、只の水であろう。これ程に澄んだ水、朕は初めて飲んだぞ。美味い!」と自分で蛇口を開いて水を出すと、お代わりまでして飲むほどに気に入った様子だった。
「それにしても、これはなんじゃ。水とは普通貯めてある桶や何かから、柄杓で汲んだり、ポンプのようなもので汲み上げるものではないのか?これはこの金属のレバーを上げるだけで、このようにずっと水が出続けるなど、見たことも無い。」
「それは、先ほど見た貯水池から魔道具の力と、水圧によってこの街全域に同じように水を供給できる仕組みを考案し、既に設置まで済ませているので、この街であればどこでも同じように水を飲むことが出来ます。」
「なんと画期的な、少なくとも朕はこの装置の構造を想像することなど不可能である。つまり、簡単だが気が付かなかったという程度の物ではないということじゃ。其方はその武力や魔法のみならず、頭脳に関しても規格外ということだったのか。」
「陛下、まだまだこれだけではございません、次はこちらにおいでください。」
私は陛下を案内し、調理場から廊下に出ると、その廊下の突き当りにある扉を開き陛下を部屋の中に案内した。
そこには美しく輝く白い陶器が展示されている小部屋の様にも見えるが、早い話がトイレである。しかし、この世界ではこのようなトイレなど存在しない、多くは木製で、上等な物でもせいぜい丁寧な仕事で作られ、塗装が施されているといった程度で、ほとんどの場合は、所謂DIYレベルの粗末な物で、とにかく匂いがこびりついて酷いという点と、あとは不衛生感が否めないので、とてもじゃないが使用する気持ちになれない、私もこの世界に来て、最初に泊まったタイタイ亭ではトイレに困ったのは記憶に新しい。
「これは、またずいぶんと光沢のある、しかし、オブジェにしては少し形状がシンプルすぎて、斬新なデザインではあるが、少々物足りない気もするが。」
「陛下、こちらはトイレにございます。」
「何!?これが???いや、しかし、用を足すにも穴すら開いておらぬではないか。これをどうやって使うというのじゃ。」
「こちらが蓋になっておりまして、ここにこうして座って用を足すのでございます。」
「成程、これは蓋だったか。ん?しかし、底に穴があいておらぬの。これでは用を足した後はいちいち汲み取らねばならぬのではないか?」
「こちらは、一見穴が開いていないように見えますが、奥の方に横穴がありまして、こちらのレバーを引くと、先程と同じように水が流れて便を流してくれるのです。流れた汚物は横穴から下水管に接続してあるので、汲み取る必要はございません。掃除も楽で、汚れや匂いも付きにくいので、衛生面でも高い効果を発揮します。下水管を通って排水施設に到着した汚物は、浄化の魔道具で自動的に浄化されて、その後、水分と固形物に分けられ、水分はある程度濾過して川へ排水し、固形物は燃焼促進効果のある物質を添加し、圧着することで、固形燃料にすることが出来るのです。つまり、性能の高い薪のような物です。」
「何!?排泄物が燃料になると??」
「はい、完全に浄化して、可燃物質の云わばツナギのようなものなので、当然匂いもありませんし、手で触っても汚れることもありませんが、ただ、元が排泄物であるというのを明かしてしまうと、どうしても抵抗感が出てしまう方がいらっしゃるかと思いますので、製造工程については秘匿しておこうかと思っておりました。」
「これは、水に続いてとんでもない大発明かもしれぬな。ヒュームの生活様式がこれまでとは一変する可能性すらある。我が国のみならず、世界中がこの技術を欲することとなるであろうな。」
「たしかに、生活に直結した、ましてやこれまでエネルギーになりうると思われていなかった物が、今後のこの世界のエネルギー資源の主流になるとなれば、しかも、それがどこにでも溢れかえっている物であったならば、その技術をめぐって争いの火種になることなど、想像に難くないことなど言うまでもございませんが、それを一部の者が自己の利益の為だけに独占するから奪いたくなるというのもまた事実。ですので、私はこの技術を秘匿する気は毛頭ございません。なんなら各地を回って技術指導を行ったり、設備を設置して歩くこともやぶさかではございません。建設した設備をリバースエンジニアリングすれば、知識や理解も深まるのではないかと思っていました。」
「しかし、これらは莫大な利益を生み出す画期的技術でもある、確かにキラの申すとおり、技術をめぐって戦乱の火種となりうる側面もあるが、タダでくれてやるのも実に惜しい。」
この案は、確かに自国の民の事だけを考えるのであれば、国力を増強し、国民の生活を豊かにする施策とするならば、下策と言わざるを得ない。ただし、世界を一つの単位として考えるならば、これ以上の施策もない。
ただ、利益を求める気持ちもわからなくはない、富はあればあるだけ欲しいと思うのが人の性であるということを。
「実は、この件に関して、更なる腹案を準備しておりまして。この魔王領を観光用の経済特区として、港の開放、テーマパーク建設、ダンジョン開放、宿泊施設建設などを強化し、観光用のリゾート地としてしまい、ここはここでしっかりと収益を上げつつ、この地で利用できる設備の製造販売を国営化して、その技術を他国に販売するという、二本立てのプランなのですが、陛下いかがでしょう。」
「ふむ。まず、朕はキラの言っていることの半分くらいしか理解できておらぬ。まず、経済特区にテーマパークとはなんじゃ?あとは、ダンジョン開放とは?それに、設備の国営化と言ったが、この水まわりの設備一式の製造をヤーパニ皇国が主導でという意味か?であればこの水回りの権利を譲ってくれるというのか?」
この後、キラは皇王に対し、魔王領だった土地の活用方法について、徹底的に説明し、約束の時間を迎えた辺りで、皇王陛下執務室に場所を移動し、その後も数時間にわたって質疑応答を繰り返した。
皇王は、一時はディロンを処罰する可能性に落ち込みもしたが、キラの計画を理解した皇王は、むしろ明るい兆ししか見えないと、元気を取り戻すのだった。
「はい、そのまま動かないでください。ジェミソン執政官、貴方が今その手に持っている紙の束を、そのままゆっくり床に置いてください。私は今、魔法の矢を貴方に向けて構えています。ついうっかり貴方を射殺してしまわないように、私が驚くような急な動きには気を付けてください。」
皇王陛下との会談を終えたあと、私は迎賓館の自室に移動し、事前に設置しておいた映像記録再生機材を起動させ、ジェミソン執政官の行動を録画した映像を確認した。
案の定、ジェミソン執政官は、証拠となりうる書類をひとまとめにして、別の場所に隠すため、自身の執務室から書類を運び出している真っ最中であった。
「キラ閣下でございますか?何時お戻りで??」
「たった今戻りました。そんなことより、さっさとその書類を床に置きなさい。私を驚かせないようにとは言いましたが、あまり遅いと、今度は手が疲れてついうっかり射殺してしまうかもしれませんよ。」
「わ、わかりました。置きます、今すぐに。」
ジェミソンは、必死に頭を回転させるが、一向にこの状況に説明を付けることが出来ずに、難儀していた。
『キラは現在皇都にいるはずじゃないのか。いや、帰ってきたにしてもどうしてこのタイミングで帰ってくるんだ。タイミングなら他にもいくらでもあったはずなのに、どうして今、この不正な金の流れを指し示す書類を手にしているこのタイミングなのか。いや、まだ大丈夫、確かに金の流れは書き記されてはいるが、ディロン様の証言と現物が無いのだ。この書類は決定的な物にはならないはずだ、そうだ、私もたまたま書類の整理をしていたらこれを発見したことにすればいい。幸いここは私の執務室ではない、自分の執務室の引き出しから出した、あの瞬間を見られたのでは、言い訳も苦しかったかもしれないが、今ここは、私の部屋ではなく、持っている書類の中身についても知らないフリをしてしまえば良いじゃないか。これが私の物であるという証明など不可能だ。そうだ、そもそも、私が自白さえしなければ、私の罪を立証することなど不可能に決まってる。』
「いえ、証明できますよ。」
「は?」
『なんだ今のは、心の中を覗いたとでもいうのか、そんな出鱈目な魔法でも使えると?』
「えぇ、使えますよ。ていうか、覗くだけではありません。貴方が考えた事をそのまま文章として記録しています。読み上げましょうか?[ディロン様の証言と現物が無いのだ。この書類は決定的な物にはならないはずだ、そうだ、私もたまたま書類の整理をしていたらこれを発見したことにすればいい。幸いここは私の執務室ではない、自分の執務室の引き出しから出したあの瞬間を見られたのでは、言い訳も苦しかったかもしれないが、今ここは、私の部屋ではなく、持っている書類の中身についても知らないフリをしてしまえば良いじゃないか。これが私の物であるという証明など不可能だ。そうだ、そもそも、私が自白さえしなければ、私の罪を立証することなど不可能に決まってる。]まだ続けた方が良いですか?あぁ、あと、貴方がとった行動の一部始終を映像として記録しています。映像ってわかりますか?まぁ、わからなくても、後で実際に見たらわかりますよ。」
ジェミソン執政官はその場で膝をつき、それでも自身の身体を支えることが出来ずに、地面に両手をついて、わなわなと震えていた。
「貴方を更迭します。このままおとなしく皇都へ送還されるというのであれば、命までは取らないようにと、私から陳情することもやぶさかではありませんが、どうしますか。」
ジェミソン執政官は、震えながら振り返り、キラの足元に縋り付いて懇願した。
「さ、先程の私の心の声を記録したものですが、どうか、どうか、おもてに出すのだけはご容赦していただけないでしょうか、あれを出されたら、私は、いえ、私の一族郎党皆ひどい目に合ってしまします。」
「貴方があの記録を必要としない程に、洗いざらい全て証言するというのであれば、あえてあれを公にする必要もないでしょうね。ただし、口八丁手八丁でその場をしのぐような真似をするのであれば、その時は容赦はいたしません。貴方への尋問の記録は全て読ませていただきますので、そのおつもりで。ちなみにですが、当然私は貴方や貴方の一族に同情する気持ちなど1ミリも持ち合わせてはおりません。貴方がこれまでムーシルトの民に課した重税によって、絶望し、苦しみぬいて、それこそ命を落とした者もいることでしょう。そんな人達に報いるためにも、貴方にはそれ相応の処罰を受けてもらいます。」
もはやぐうの音も出てこないジェミソンは、頭を垂れたまま動きもしない。
「衛兵、誰かいませんか。」
私が声をかけると、廊下から二人の兵士が部屋に入ってきて、私に対して敬礼をすると、その場で気を付けの姿勢で待機する。
「この者は罪人です、今夜は牢に入れ、明朝早々に皇都へ送還するように。」
「「はっ!」」
二人の兵士は短く返答すると、ジェミソンの両脇を抱え、連行して行った。
ムーシルトの膿となる者の元凶を排除することは出来たと考えて良さそうではあるが、かといって、自分が不在の間に、政を取り仕切る人物に目星をつけることもできずにいた。
『ライブラ、どうしよう。私まだしばらくは皇都から戻れないだろうし、その間ここを無政府状態みたいにして放置するのも気が引けるし。かといって力を貸してくれそうで、信頼できる人の心当たりもないし、何か良い案はない?』
[回:人形の作成及び、私の分体のインストールを推奨します。]
『え?人形?インストール??そんなこと出来るの?』
[回:可能です。]
『え?え?でもでも、人形が政を取り仕切って、皆言うこと聞いてくれるのかな。』
[回:マスターのクリエイトであれば、一般的なヒュームと識別されるクオリティの人形を制作可能です。しかも、複数体を制作したとしても、私の分体は無限に複製可能ですので、全ての個体に同等の知能を付与し、定期的に記憶を並列化することによって、全ての情報を私が集約管理することも可能です。]
『うわ、何それ、もう完全にチートじゃん。』
[回:マスターの存在が既にチートですので、この程度は許容範囲に含まれます。]
『これってさ、世界中にライブラの分体入り生人形をばらまいて、定期的に記憶の並列化をしたら、世界の隅々まで私が掌握する事すらできちゃうよね。最早神様と呼んで良いレベルじゃない?エグっ!』
[回:既にパラディオル領、皇都バミア、ハイゼンスリーブ領では複数の生物等の視界を共有化しているので、マスターの行動範囲の情報は網羅することに成功しています。]
『いやいや、監視カメラとAIロボット量産じゃ、話が大分違うでしょ。っていうか、皇都って名前あったんだ、初めて知った。』
[回:この世界において、名前が存在しないのは、元魔王領で現パラディオル領のマスターが作った街のみです。]
『あぁ、そっか。名前まだ決めてないんだ。どうしよう、リゾート地でしょ。私が作った街だから、キラが作った街、キラ、キラ、キラ、あ!キラキラ!!ミヤビ!ミヤビにしよう、高級リゾート地でミヤビ。うん、これで行こう。って話がそれたね。AIロボットね、とりあえず、私が不在時にやっておいてもらいたいのが、税制改革と、街の一時移転、民事法と刑事法、商法の整備、あ、パラディオルにおける法の理念を示すパラディオル憲章的なやつが必要かな。んで、民事と刑事の裁判所の建造に、刑事犯を収容する場所も必要だね。立法機関は領主制だからいらないとして、行政機関は必要だね。あと教育機関に、警察機構も必須か。とりあえずこんな感じの業務をこなすのに、何体くらいAIロボットがいれば間に合いそう?』
[回:3体で対応可能です。]
『いやいやいやいやいやいやいやいや、おかしいでしょwとりあえず、行政、教育、警察、裁判所は箱すら別々だからね。それに加えて法整備班に移転班でしょ。6部門各3体は配置するとして、最低18体は必要じゃない?』
[回:18体でマスターの希望する業務を執り行った場合、全ての作業が完了するのに必要とする時間はおよそ80分程度と試算します。]
『早っ!!まぁ、後々他にも色々出てくるだろうし、各機関で雇用する人の教育なんかにもマンパワーは必要だろうから、とりあえず、切りのいい所で20体作っていくから、業務配分はお任せします。で、人形の機構についてなんだけど、正直医学的な知識は明るくないので、難しいのは困るんだけど。』
[回:外観および関節機構を人間と同等とするだけで問題ありません。本物の人間と接触することを想定して、皮膚の内側に筋肉のような弾力のある材質を使用し、骨格に関しても、関節可動が可能であれば、材質は特に指定はありませんが、強度の高い材質を採用することで、耐久性が上昇します。]
『そっか、それなら良かった。内臓とか血液循環とかいわれたら詰んでたw』
キラは、それぞれの個体に見た目の特徴を持たせて、20体の人形を作成すると、ライブラ分体のインストールについてはライブラに任せ、自分は外に控える衛兵に、政を取り仕切る役職に有る者の招集を命じた。
完成したライブラ分体を、それぞれイチカ、フタバ、ミツキ、ヨツハ、メイ、ムツキ、ナナミ、ヤエ、ココミ、トウカ、ファー、セーカ、サー、フォー、フィフ、ゼィクス、スィーブ、エイ、ナナイ、トゥーエと名付け、それぞれに役割の説明をするのも面倒なので、イチカに概要を話して後は皆で分担してうまくやるよう指示し、これまで政治や行政っぽい事をしてきた人たちには、イチカ達は私の部下なので、イチカ達の指揮下で業務に当たるよう指示した。ちなみに、一応念のため、これまでの咎でジェミソンが更迭になった件についても話をしておいた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
感謝の言葉しかありません。
よければ次のお話も読んでいただけるとありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
追記~
誤字報告いただきました、それと表現についてのご指摘もいただきました。
本当にありがとうございます、感謝の言葉しかありません。
私の拙い作品に、真摯に付き合っていただけていると理解しております。
今後ともよろしくお願いいたします。