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名前がコンプレックスの女の子を好きになってもいいですか?  作者: 宮野ひの


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第10話 告白



◇



 お昼休み。私はいつものようにアキとナナミンと机を合わせて、お昼ご飯を食べようとしていた。


 気がかりなのはララのことだ。先ほど体育の先生から喧嘩のことで、お昼休みに職員室に来なさいと呼び出されていた。お昼ご飯を食べてから行くのだろうかとララの姿を探すも、教室には既にいなかった。


「ねぇ」


 アキが言う。


「たまにはご飯、屋上で食べない?」


「いいね」


 ナナミンが賛同する。私も特に反対する気持ちは持ち合わせていなかったので、自動的に屋上でお昼ご飯を食べることになった。


「まさか、甲斐と立花さんが喧嘩みたいになるとは思わなかったよー」


「うんうん。マコ、さっきは大丈夫だったの? 立花さんの髪の毛も解けてたし……」


「大丈夫だったよ! ケガもなかったみたいし……良かったよ!」


 屋上に向かう中、3人で体育の時の話に軽く触れる。


 初めて足を向けた屋上は、開放感があって気持ちが良かった。他の生徒は誰もいなくて、ここに来ても良いのだろうかと一瞬、不安がよぎった。けど、もし怒られたら、その時はその時だ。後で謝れば良いと気持ちを切り替えることにした。


 ナナミンは背伸びをして、「風が気持ち良いね」と言った。


 アキは何故か緊張した面持ちをしていた。


 軽く屋上を散策して、なんとなく目についた場所で輪になることにした。ふと、ララも、この場にいたらなと思った。


 私は、お母さんが作ってくれたお弁当を広げる。やった、私の好きな鶏の唐揚げが入っていた。デザートには甘夏もある。


 ナナミンは、今日も三段弁当を持ってきていた。見かけによらず大食いなのだ。しかも、いくら食べても太ることがないということだから羨ましい。


 アキのお弁当は、市販のサンドイッチだった。レタスサンドとたまごサンド。どちらもボリュームがあって美味しそうだった。


 いつものように楽しくお昼ご飯を食べていたら、アキが「あのさ。マコ」と神妙な顔で切り出した。


「ん? なに?」


「……さっき立花さんと更衣室で何してたの?」


「ええっ! ら、ララの髪を結んであげてただけだよ……」


「そ、そうだったんだ!」


 やましいことは何もしていないはずなのに、あらためて話題を出されるとドキドキした。


「……二人、仲良いんだね。知らなかったよ」


「うん。最近よく話すようになったんだ」


「そうだったんだ! 良いことだよー」


 しみじみとアキが言う。


「……そういえば、私、前にマコに言いたいことがあるって言ったよね?」


「うん」


 そうだった。アキとララが、クマーヌのマスコットキーホルダーを、お揃い(?)で付けてきた日、私に何か言いたいことがあると言っていた。


「……そのことだけど、今、マコに言いたくなったんだけど。良いかな」


 空気が変わる。


 真剣な目をしたアキが私を見る。たじろいで、咄嗟にナナミンを見ると、すべてをお見通しというように穏やかな表情をしていた。


 おそらく、ナナミンはアキが今から言うことをすべて知っているように思えた。


 もしかすると、アキが言いたいのはララのことかもしれない。今だって、私と更衣室で何をしていたか気になっていた。クマーヌをお揃いで持っている理由を今、教えてくれるのかもしれない。


「……わかった」


「うん。私ね……」


 緊張感が走る。アキが次の一言を言うのを待った。


 ーーその時、スマホに着信が入った。アキの携帯だった。


 床に置いていたスマホの液晶画面には『凛香』の名前が表示されていた。凛香……。確か、ナナミンの妹だ!


「……ごめん。ちょっと電話出てくる」


 アキはスマホを持つと、急いで屋上から出ていった。


「あはは。間が悪いなぁ」


 アキがいなくなった方向を見ながら、ナナミンは、ほのぼのとした顔で笑う。


「ふぅ。気が抜けたよ! ナナミンはアキが今から言うことを知っているんだよね?」


「うん。知ってるよ!」


「そっかー……」


「……私の場合は、知るべくして知ったって感じだけどね。マコのように、あらたまって言われたわけではないんだ」


 そうだったんだ。あのアキが、私に伝えたいことってなんだろう。……早く戻ってきてほしい。


「……そういえば、今アキのスマホ画面がチラッと見えたんだけど、『凛香』ちゃんってナナミンの妹だよね? 二人って仲良いんだね」


 ふと疑問に感じたことを口にしてみた。


「まあね」


 ナナミンは、ふっと笑って続ける。


「二人は中学でも陸上部の先輩・後輩だったし。……言うなれば、姉妹の私たちよりも、二人の絆の方が深いかもよ!」


 しみじみと言う。


 へぇー! 良いなぁ。中学の後輩の子と、今でも仲が良いなんて、羨ましい。


 私も中学はバスケ部に入っていたけど、後輩とそこまで仲良くなることができなかった。例えば、何でもない日にふらっと電話できる後輩なんて一人もいない。あらためて、アキのコミュニケーション能力の高さを尊敬した。


 結局、アキが戻ってきたのは昼休みギリギリだった。アキは残りのサンドイッチを食べるのに必死で、とてもじゃないけど告白を聞ける雰囲気じゃなかった。


 ……残念だけど、また今度があるだろう! ゆっくり聞ける時に聞けたら良いな。

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