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5.お茶会







 「よくきたわね。」

 肌は透き通るように白く、淡くエメラルドグリーンの美しい髪を緩くまとめ、シアン色の瞳を細めて優雅な微笑で王妃様は私を出迎える。

 「この度はこのような美しい温室での茶会にお誘いくださいまして誠にありがとうございます。王妃様とご一緒できて大変光栄でございます。」

 「貴重な治癒能力を持つ【覚醒者】に会えて私もとても嬉しいわ。席に座って頂戴。」

 「ありがとうございます。失礼いたします。」

 優雅にカーテシーで挨拶をし、特に問題なく席に着く。

 出迎えた王妃は得意何か企んでいるような点は今の時点では見当たらない。

 先日のデビュタントで対面した時の様なおびえた様子も全く感じられず、王妃らしい威厳すら感じるほどだ。

 「エルガディオ嬢は今は王国魔法師団に在籍していると聞きました。サーディンに嫁ぐのであればそろそろ妃教育もしないとならないでしょう?学園では非常に優秀だったと聞きましたがそれでも早めに妃教育に入ったほうがよいのではなくって?」

「お心遣いありがとうございます。私も妃教育は早く受けるべきと存じております。ただ、現在王国を守るための状況改善に私の力が少なからず重要視されておりますので、落ち着き次第開始する予定でございます。」

 「まぁ!王国を守るために【覚醒者】としてあなたの力が必要であることは私にもわかるけれど、【覚醒者】は貴方だけではないでしょう?あなたは未来の国母となるのですよ?妃教育は替えがきかないわ。王宮に住まいを移し、妃教育を始めれば民も安心することでしょう。私もあなたのサポートができるわ。」

 「お心遣いありがとうございます。サーディン殿下と相談して妃教育の日程も決めて参ります。」

 「そうしてちょうだい。私は貴方たちの行く末を案じるが故に助言しているのです。」

 「ありがとうございます。」

 和やかに話はしていても、王妃様の妃教育への誘導がどうも強い気がする。確かに今から始めても決して早いという事はなく、むしろ妃教育は3年以上かけて行うのが通例の為、王妃様が憂うのは当然とも思う。

 「それにしてもとても美しい温室でございますね。お見かけしたことのないような花も先ほどチラッと拝見いたしました。」

 「そうなのよ。この温室事態もとても広いでしょう?是非温室内も見てほしいわ!」

 「ありがとうございます。是非拝見させていただきたいです。」

 「ただね?私そろそろ次の予定があって、私が案内することは難しそうなのよ。だからクリシスに案内させるわね!」

 「え?!!」

 驚いている間に王妃様は侍女に第2王子を呼ぶよう指示を出してしまった。

 「王妃様お忙しい中、第2王子殿下にまでお時間を頂戴するなど恐れ多くてできません。私一人でも十分でございます。」

 「あら心配しないでちょうだい。この温室は私とクリシスは良く利用するから案内するなら適任だわ!それに同じ年なのだし気も会う事でしょう。ゆっくり二人で楽しんだらよいと思うわ!」

 にこにこと微笑を絶やさない王妃様の笑顔は私を気遣っているように見せてはいるが、恐らく今日の目的こそがソレなのではないだろうかと嫌な汗が背中をつたう。

 「母上!お呼びでしょうか?」

 落ち着いた少し低音の声音で笑顔で温室に入ってきた美青年は、美しいシアンの瞳と金髪をなびかせ少し額に汗をにじませている。途中まで慌ててきたのではないかと感じるような雰囲気が同年代特有のあどけなさをほんの少し感じさせた。 

 学園時代は同学年で、成績もお互い良かったので同じクラスになることが多かった。友人と呼べるかはわからないが、それでも適度な距離感で楽しく会話はできたと思う。

 私はダリオと婚約していたこともあって第2王子殿下から積極的に話しかけられることはなかったものの、時々好意を感じる眼差しを向けられたことはあった気がする。その為私は第2王子殿下が少し苦手だった。

 「クリシス。私は今から他の用事があるのでエルガディオ嬢にこの温室を案内してあげてくれるかしら?」

 「私で良ければ喜んで!」

 まるで示し合わせたのでは?と感じるような二人の会話により警戒心を強めつつここからどうするか三段を立て始める。

 ディーンが迎えに来てくれると言っていたが、問題なければあと30分もせずに来てくれることだろう。第2王子殿下とはこの温室から離れずすぐここにいることがわかる場所で話をするのが妥当だろう。

 万が一にもクリシスと二人きりで口説かれようものなら色々後が面倒くさい。

 「それではエルガディオ嬢ご案内しますね!どうぞお手を」

にっこり微笑みながらクリシスはエスコートする為に右腕を差し出した。

正直温室内だけなのであればエスコートなど必要ない。・・・と言いたいところなのだが、王子であるのだから仕方ないのだろうかと葛藤し仕方なくそっと右腕に添える程度でエスコートを受けた。

 「もっと寄り添ってくれてよいんだよ?私はエルガディオ嬢に温室を案内できて嬉しいんだから」

 「花を間近でも拝見したいと思っていますので、お気になさらないでくださいね!」

 お互い微笑つつ距離感のせめぎ合いは続いたが、いざ温室内を歩き始めるとくるくる私が動き回るのでいつの間にかエスコートではなくクリシスがルーシアを追いかけながら花々の説明をする状態になっていた。

 それでもさりげなく距離を縮めようとしているのを感じると、さりげなく避けて適度な距離感を保っていた。

 「ねぇ。エルガディオ嬢のことをルーシアと呼んでもよいかな?もうすぐ家族になるのだし良いだろう?」

 「殿下。確かに私共は家族になるかもしれませんが、私が嫁ぐのは殿下ではなく、サーディン殿下です。ですのでこのような二人で過ごすことも、本当は適切とは呼べません。ですので呼び方もこれまで通りでお願いいたします。」

 明らかに距離を詰めようとしてきていることをしっかりと拒絶の言葉で離そうとするが、クリシスは動じておらずルーシアの左手を取り恍惚とした表情で手の甲に口付けをする。

 「つれないなぁ。兄上より私の方がルーシアを幸せにしてあげられるよ。兄上は皆に嫌われているからね。私は皆に好かれているし、王としても望まれている。きっとルーシアもすぐにわかると思うよ。」

 勝手なことをペラペラと話始め、名前すら勝手に呼び捨てる行為に腹だち思わず指輪に魔力を込めながらクリシスを睨みつけた。

 「殿下。温室を案内してくださることには感謝いたします。しかし、どのような妄想をされているのか存じませんが、私の婚約者はサーディン殿下ただお一人です。私を呼び捨てするのも口づけるのもご遠慮下さいませ。」

 「ルーシア!!」

 きっぱりとクリシスに拒絶の言葉を浴びせた直後、自分たちの少し後方が光ディーンが移動魔法で現れた。

 「サーディン殿下?!」

 慌てて走り寄るディーンにルーシアはクリシスの手を振り払いかけ寄る。

 ぎゅっとルーシアの体を抱きしめると熱い抱擁を交わしディーンは視線をクリシスに向ける。

 「クリシス。何故俺の婚約者と温室で二人でいるんだい?」

 「兄上。母上が用事ができてしまったので私が代わりに頼まれお相手していたのですよ。」

 「・・・それなら俺がここからは案内するからもう必要ない。クリシスは戻って構わないよ」

 二コリと微笑むディーンとクリシスの間には殺伐とした空気が流れていた。それでも先ほどまでのあのクリシスの距離感や言葉に腹が立って仕方なかったので仲裁は遠慮させてもらった。

 「あーぁ。せっかくルーシアと仲良くなれたのに残念だな。ルーシアまた今度二人でお茶しようね」

 クリシスはわざと煽るようにルーシアに好意を見せ、鋭い眼光のディーンに目もくれず温室を去っていった。


 はぁぁ・・・

 溜息を吐いたディーンは何も言わずにそのまままたルーシアをぎゅうっと抱きしめた。

 「王妃の狙いがクリシスをルーに近づけるためだったとはね・・ルーが指輪で教えてくれてよかったよ。躊躇わずに飛んでこれたから・・もしもう少し遅かったら・・俺はクリシスを殺していたかもしれないね・・」

 普段のディーンなら【殺す】なんてワードはまず出てこないのに余程腹が立ったのだとわかる。

 ルーシアの首元にディーンは顔をうずめながら人目をはばからずぎゅーっと抱きしめ続けた。

 学園時代クリシス王子からあそこまでひどい距離の詰め方をされたことがなかったのでルーシア自身も腹はたったが、あまりの予測不能な王子の行動に唖然としてしまった方が強かった。

 ここまでルーシアに対して距離を詰めてくるという事は、間違いなくルーシアを国母に据え、クリシスが国王になるという未来図を完成させようとしているのだろう。

私を手に入れることで【覚醒者】を手に入れることができ、ディーンを暗殺することができれば大どんでん返しの逆転も夢ではないと考えているに違いない。

そのとんでもない妄想の未来図にルーシアはぞっとした。


ディーンはルーシアと本部に戻り、状況をユージスとキリアンに共有したあと、ルーシアを連れてディーンの執務室にこもり浄化という名のキスの雨を数時間かけて降らせたのだった。








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