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4.【覚醒者】という仲間







 キリアンの体調が問題ないと医師の診断受け、私とディーン、ユージスは土妖精ボアの先導の元【覚醒者】への祝福を行う事になった。

 本部横の魔法師訓練場は風がそよぎ髪の毛を揺らめかせる。

 普段は数十人が訓練を行っている場所だが、今回は関係者以外は立ち入りを禁じている為私たち4人と妖精たちしかいない。

 姿は見ることはできないが、ボアはキリアンに話をしているようでキリアンが返事をしている声だけが響き渡り、時折ディーンが間に入るように助言を伝えていた。

 【覚醒者】であっても自分の属性の妖精の声しか聞こえない。例外は【全覚醒者】のみ全ての妖精の声を聞くことができる。

 声を聞くことができない私とユージスは黙って事の成り行きを見守るしかなかった。


 見守っていると突然キリアンは光に包まれ数秒程で光は消えて元に戻った。

 「キリアン!髪色が変わっているわ!!」

 「よかった。成功したみたいだね。」

 「す・・すばらしい。初めて覚醒の瞬間に立ち会いました!!」

 私たち3人はキリアンの【覚醒者】への覚醒に興奮して捲くし立てるようにキリアンに声をかけた。

 「ちょっとちょっと落ち着いてくんない?自分じゃあんまよくわかんないから」

 呆れたような顔をしつつも少し照れくさそうなキリアンは視線を外しつつまんざらでもなさそう。

 「折角だし特殊魔法使ってみようか?」

 「使って大丈夫なものなの?」

 特殊魔法といえばとんでもない威力の攻撃魔法だったりとかしないだろうか。ふと心配になり声をかけるが、キリアンは唇で弧を描き右手を前に出した。

 [[リアゴレム]]

 前に出した右手が淡く光の渦を巻き始め次第にぷよぷよとした物体が集まり形を作っていく。

 恐らく体感時間5秒もかかっていないだろう短時間で彼の右手の上には美しい透明なバラの花が1輪現れた。

 「素晴らしい!これは土製かい?」

 「粘土だよ」

 あまりにも美しい形状でしかも丈夫な造りのバラにディーンが感嘆していると、キリアンはドヤ顔で答えた。

 土魔法の造形は、基本土または泥で造形する。ある程度強固に作ることも可能なのだが、強度は魔法師のスキル次第でもある。特に、粘土のような固まると強度の強いものは、【覚醒者】以外では扱うことは無理らしい。

 バラの美しさにほうっと見惚れていた3人に更にキリアンは強気な発言を続ける。

 「俺のリアゴレムなら、強度な建物だろうが、武器だろうがすぐに作り出せる。持続だって魔法力次第だから俺なら1年以上持続させられるね!」

 「すごい!!キリアンの【覚醒】した力は本当に皆の役に立つ能力なのね!」

 きっとキリアンの創造する能力があれば、どんな災害が起ころうと、敵からの襲撃にあおうと、人々の救いになるに違いないのだろう。武器だって創り出したら相当な戦力になりえるだろう。

 未来の可能性を感じて、キリアンに向き合い誇らしく見つめていると、彼は私の前で跪いた。

 「ルーシア先輩。俺は自分の能力なんて好きじゃなかった。幼い頃から周りから距離を取られ危険人物扱いで、仲間だと思える奴もいなかった。両親だって俺に対しては感心なんて持っちゃいなかった。学園に入った時、妖精の声が聞こえても自分にとっての災いとしか感じられなかった。でも、先輩は惜しみなく能力を他人のために当たり前のように使ってた。俺自身が誰かのために何かしたいなんて思えなかったけど、もしかしたら自分もいつか先輩のように他人のために何かしたいと思えるんじゃないかって思えた。だから先輩が卒業した後、俺に会いに来てくれた時に自分が先輩と一緒にいたら変われるチャンスなんじゃないかって思った。・・・思いが拗れていきなり恋人条件なんて出しちゃったけど・・でもこの短期間一緒に過ごす時間思ったんだ。先輩となら俺は俺らしくいられるって。だから王子じゃなくて俺を選んでよ。今度は俺が先輩を守りたい。」

 真剣な眼差しで1輪のバラを私に捧げてくれるキリアン。私は学生時代キリアンと話をしたこともなかったし、会った記憶もない。それでも自分の行動を見て慕ってくれていたのだと伝わってきた。

 言葉使いは乱暴だし、私以外とは喧嘩腰だけど、彼が自分の【優しい部分】を大切にしたいというのも本当な気がした。

 「キリアン。ありがとう。なんで私なのかな?って最初思ったけれど、その思いが知れて本当にうれしいわ。」

 「先輩!」

 「だけど、私はディーンの事以外愛せない。ごめんなさい。」

 見開いた彼の瞳は一瞬揺れて視線を逸らすと苦笑しつつかれは立ち上がった。

 「王子には叶わないよね。・・でもこれでも地味に3年ルーシア先輩に片思いしてたんだ。だから想いが覚めない限り俺は好きだよ。このバラはもらってね!」

 「・・キリアン。ありがとう」

 「ルーシアは譲らないが、今後は仲間として頼りなさい。」

 「私も先輩として力になりますよ!」

 ディーンとユージスもキリアンを激励し私たちは【覚醒者】の仲間を手に入れた。



***



 「お嬢様お手紙が届いております。」

 いつものように朝食後執事長のルスターが1通の手紙を持ってきた。

 「・・これは・・」

 王家のシーリングということはあまり良い知らせとは思えない。

 封を開封し1読するとすぐに魔法師団服に着替え始める。

 「ルスター。今から本部に行ってくるわ。お父様とお母様に伝えておいてちょうだい。」

 「承知いたしました。」

 「ディーン。今良いかしら?」

 着替えをしながら左手の指輪に魔力を込めながら声をかける。

 《ルーどうしたんだい?》

 [話がしたいのだけど、今本部にいる?」

 ≪いるよ。執務室にいるからおいで。≫

 「わかったわ!直ぐ行きます。」

 手短に言葉を交わすと、移動魔法で本部へと移動した。




***



 「ルーシアです。失礼します。」

 執務室に入るとディーンとユージスが出迎えてくれた。

 まだ昼に差し掛かる前にも拘わらず2人は少し疲れたような表情をしている。

 「あら?お二人も何かあったのですか?」

 「大したことはないよ。それより話を聞こうか。さ。座って?」

 書類の束を恥に寄せて立ち上がるとディーンは私をソファへ座らせユージスにも同席を求めた。

 「ありがとうございます。実はこんな手紙が今朝届きまして・・」

 今朝受け取ったばかりの王家からの手紙をディーンに手渡した。

 「・・・これは困ったことになりそうだね。」

 「・・・ですよね」

 「なんと書かれていたのですか?」

 ユージスの問いかけにディーンは手紙の詳細を離し始めた。

 王妃様がディーンと婚約した私とお茶をして話をしたいから王宮に来るように。というお茶のお誘いだった。

 第1王子派である私たちと王妃派は水面下で対立している。それは18年も前から始まっていることで、現在【全覚醒者】である第1王子であるサーディン・メルリドが時期国王最有力候補というか実質内定している。しかし、第2王子が18年前に誕生してから王妃派は第2王子を次期国王に据える為、サーディンことディーンをずっと暗殺するため命を狙ってきていた。これまではディーンは表に出てこなかったためそこまで争いが表面化することはなかったのだが、ディーンと私の婚約により王妃派はかなり焦っている状況なのだ。私たちの動向を探りキリアンのことも拉致して覚醒者の仲間を増やすことの妨害もしている。そんな状況で婚約者の私を王妃様がお茶会に招待するということはどう考えても危険な行為としか考えられない。

 「行っても行かなくてもこちらとしては良い状況にはならないという事ですね。」

 「そうだね」

 「今の時点ではお茶会に参加すべきですよね・・」

 「そうだね。行かせたくはないけれど・・母上が何を目的に動いているのか確信してからでないとね・・」

 ただのお茶会の誘いなのに指の先が冷たくなっていくのが感じる。私の不安を感じたのかディーンは横に腰掛け頭をそっと撫でながら私を気遣う。

 「私が護衛で一緒に付いて参りましょうか?」

 「いや。状況が把握できていない段階では警戒しすぎてもね。私がある程度時間を見て迎えに行くようにするよ」

 「そうですね。私はいつでも動けるように準備しております。」

 「あぁ。そうしてくれるかい。念のためキリアンも召集かけておいてくれる?」

 「承知しました。」

 話を終えるとユージスは自分のデスクに戻り、ディーンは私を膝に座らせて私をぎゅっと抱きしめた。

 「本当は行かせたくないけど・・必ず迎えに行くからね。」

 「大丈夫ですよ。私も万が一の時は移動魔法で逃げますから!」

 冷たくなったままの指を彼は手に取って、私の指を温めるように彼の頬で優しく頬擦りする。彼の温もりが不安で震える心を包み込んでくれた。



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