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11.悲しみを乗り越えて







 「魔力抑制薬の密輸ルートを確保できたことによりソウェトナ侯爵家、ザワン子爵家は取り潰しとなった。しかし、王妃派だった家紋はいくつも残っているし、魔力抑制薬に全く関わりがないとは言い切れない。」

 「それはソウェトナやザワン以外の元王妃派が今後も暗殺を企てる可能性があるという事ですか?」

魔法師団本部のディーンの執務室で【覚醒者】の会議が行われている。


 断罪が終わった翌日、部屋のソファにはディーン、ルーシア、ユージス、キリアンの4人が腰掛け【魔力抑制薬】についての状況報告が行われていた。


 「そうだね。ソウェトナが王妃と共に一番動いていたのは間違いないのだけど、魔力抑制薬にどれだけ他の家紋が関わっていたかはまだ正確にはわかっていないんだよ。もし魔力抑制薬を所持し、他のルートで密輸を行っていたり、ソウェトナが抱えていた暗殺集団とどのような関わりがあったのかも判明していない。特に西のソウェトナの下についていた元王妃派の家紋は要注意だと考えているよ。」

 「確かにソウェトナの下についていた家紋だったらおこぼれもらって魔力抑制薬や暗殺集団と関わっていてもおかしくはなさそうだよね~俺のこと拉致したザワンだって暗殺部隊借りてたみたいだしありえるよなー」

 ソファに深く腰掛け頭の後ろで手を組んだキリアンは他人事のように自分が拉致された時のことを思い出し口にした。

 「俺もそう思うよ。恐らく土魔法の家紋はキリアンの件でザワン子爵のこともあったのでキリアンに注視してほしいがしばらくは大人しくはしているだろうと踏んでいるんだけどね。

だけど、それ以外の属性家紋は今後どのような動きを見せるかはわからないだろう。火の属性家紋の注視はユージスに頼みたいんだ。水属性家紋はルーシアに頼みたいと考えている。」

 「風属性家紋はどうすんのさ?」

「俺は一番注視が必要だと思っている。ソウェトナ侯爵の雇っていた暗殺集団は恐らく隣国ノスラホート王国の暗殺集団が関わっているという事まで確認が取れているからね。ノスラホートは知識を求める学者の国と言われているだけあって様々な知識を求める学者が集う国でもあるけど、武力に弱いからこそ昔から各家紋には必ず優秀な暗部が家紋を守ってきたらしくて、優秀な暗殺者を多く輩出する国としても有名なんだよ。知識があるものは学者に。力があるものは暗部にという2つの選択肢で成り立っている国らしい。魔法は暗部の人間がどこまで使えるのかはわからないのだけど、今まで戦ってきた暗殺者で推測するとそこまで有能ではないようだよ。だけど基礎魔法の応用でうまく戦闘に活かしているのはわかるから非常にやりずらいだろうね。今後ソウェトナ侯爵家がなくなったことでメルリドの暗殺集団が解体するならよいのだけど、ノスラホートに近い西の風属性家紋とどのように関わるかは今後も注視していく必要があるんだよ。風の妖精からも呼び出しが来ていてね。近いうちに【覚醒者】である君たち3人と西側へ行くことになると思う。また決まり次第その件は話すつもりだよ。それまではキリアンに注視を頼みたい。」

 「え?俺???なんで?」

いきなりの重要な任務を振られてキリアンは思わず素っ頓狂な声を出した。

 「俺は君の能力は偵察に優れていることをわかっているからね!空中戦は不利かもしれないけど、陸地戦なら土属性はかなり有利だろう?メルリドは戦争をしたいわけではないからね。一国を滅ぼすだけなら俺たちの誰か一人でも十分可能だと確信しているけれど、メルリドは民を守り国の安寧を第一優先にしたい。その為にはいかにスマートに身をひそめつつ敵の情報を得て対処するかが重要だと思うんだよ。

陸地なら土魔法での探索魔法も役に立つだろう?特にキリアンの特殊魔法も用いれば無限に可能性がある。俺はとても評価しているんだよ?」

 「な・・なんだよ王子気持ち悪いんだけど!!しょ・・しょうがないなっそれ位俺がやってやるよっ」

 突然褒められたキリアンは耳を赤くして口を尖らせ照れている姿が微笑ましく、ルーシアの心が温かくなるのを感じた。

 「それじゃ皆今後も各属性家紋の注視を頼むよ。何か動きがあればすぐに教えてほしい。」

 「「「 承知しました 」」」

 ユージスもキリアンも執務室から退出していくがルーシアはその場から動けずにいた。

 元王妃とクリシス王子が断罪されたことによってディーンは家族を失ったも同然だったからだ。

 一見普通にいつも通りに見えるがきっと心中は想う事が多々あるだろうと思いつつもどう声を掛けたらよいのかわからなかった。

 (ディーン・・・)

 『素直に聞いてみたら?』

 (アシュ?)

 『考え込みすぎだと思うよ?素直に聞いちゃってもいいんじゃない?』

 執務机で書類を書くディーンの耳がぴくっと反応する。

 「おや?ルーは何か俺に言いたいことがあるのかな?」

 「っぇ?!な・・と・・とくには・・ないんだけど・・その・・っっ!」

 びくっと肩を震わせ突然のディーンの声に思わず後ずさった。

 「おや?アシュと内緒でまさか俺の悪口でも言っていたのかな?」

 張り付けたような笑顔で椅子から立ち上がりルーシアに近づくディーンにどう答えてよいかわからず思わず後ろに後ずさり続け壁に背中が着いた時にはディーンの鼻がルーシアの鼻とくっついてしまいそうな位近づいていた。

 「ちょ・・ちょっと近すぎないか・・な?」

 (アシュのばかーーーーーーっっ!!ディーンにバレバレじゃないーーー!)

 引きつる笑顔を浮かべながら内心は半泣きでアシュに抗議するしかなかった。

 『私は腹のうち探り合うんじゃなくって素直に話せばいいんじゃない?って思っただけよ!それじゃ頑張ってね!私は外にでも行ってくるー』

 自分の言いたいことを言ってアシュの気配は消えてしまった。本当に外に行ってしまったのだろう。

 部屋の中には妖精の魔力の気配もなくディーンとルーシアの二人きりとなったいた。

 「ルー?俺に離したいことがあったの?内緒にするくらいなら話してほしいんだけど?」

 悲し気に話しかけるディーンだが、顔が近すぎて話したくても心がざわついて話せない。

 「でぃ・・ディーン少し後ろに下がってほしいな・・ちゃんと話すから」

 ディーンの両手はルーシアを囲うように壁についていて、逃げ場のない状態では彼の胸を押して離れさせるしかないのだが、押しても全く動かないディーンの体に更にルーシアの顔は火照り紅潮していく。

 「真っ赤なルーがかわいい・・このまま食べちゃっても良いのかな・・良いよね?」

 「だっ・・だめだよ??ディーンそ・・ソファで座ってお話しませんか???」

 猫撫で声でとんでもない発言をされて更にルーシアの顔は熱くなり、なんとか踏みとどまらせようと思わず両手をディーンの顔の前にかざしてソファに促した。

 「俺はここでも話せるのに・・」

 ディーンは残念そうに訴えながらも、ルーシアの掌にチュッと口づけてからくすりと微笑む。何度も軽い口づけをルーシアの掌に落としたあとペロっと舌で舐め上げ誘惑するような眼差しを向けてくる。

 「っひゃっーーーーーぅぅ」

 あまりの出来事にストンと腰が抜け床に崩れ落ち、ドクンドクンと高鳴る鼓動に困惑しながら必死でソファに向かおうと膝をつきながら四つん這いで向かおうとした。

 「ちょっと攻めすぎちゃったのかな?」

 ふふっと微笑んだ後ディーンは膝をついたまま進もうとするルーシアを抱え上げ、ソファに腰掛けて自分の膝に座らせた。

 「悪口のお仕置きはもうおしまいにしてあげるよ。ちゃんと俺に離してくれる?」

 ルーシアの両頬を両手で挟みこむとコクコクとルーシアは頭を縦に振った。

 「あーかわいい。俺のルー。早く結婚したい♡」

 きゅうっと抱きしめルーシアから香るほのかな甘い花の匂いに酔いしれる。

 「私も・・結婚したい」

 ディーンの甘い言葉と抱擁の温かさで少し心が落ち着いてきた。

 「私・・ディーンのお母様とクリシス王子がディーンと仲直りできなかったこと・・気になって・・最後に話もしなかったみたいだから・・」

 「母上たちのこと?」

 きょとんとした声音で返事を返すディーンに余計なことを言ってしまったと彼の肩に顔を埋める。

 「あー・・ルーは心配してくれたんだよね?」

 「・・うん・・」

 「ありがとう。俺は個人としてだけじゃなく王族としても周りを見ないとならないからね。正直彼らのことをゆっくり考える事もしていなかった・・ってゆうのが本音かな。」

 抱きしめたまま優しい声音で話しながらディーンは右手で優しくルーシアの頭をなで続ける。

 「でもそうだね。確かに仲直りできたらどんなに良かっただろうとは思うかな。ただ彼らは罪を重ねすぎてしまったからね。18年前の時点で止めてくれていたら仲直りはまだできたんだろうけどね・・キリアンとルーシアに手を出されてしまったら俺の気持ちでどうこうできる話じゃないからね。・・すごく残念だなとは思うよ。」

 母親の愛情を得ることのできなかったディーンが最後の最後まで自分の心を押し殺し、国の為に母親を断罪するしかなかったという現実を、まるで他人事のように感じて話すディーンの言葉に胸がきゅうっと締め付けられるような痛みを感じつつも自分がこれから王族の妻として同じように国の為に自分の心を押し殺し決断していかないとならないことがあるのだろうと感じた。

 「それでも・・私はディーンのそばにいるからね。」

 「ルー?」

 きゅうっとディーンを抱きしめたあと体を離しディーンの瞳を見つめ慈しむように微笑んだ。

 (私だけはどんなときでもあなたの味方でありたい。)

 「大好き・・私を離さないで」

 「俺も大好きだ。離してって言ったって離さないよ」

 乞うようにお互い見つめ合い優しい口づけを交わした後、ルーシアはディーンの肩に顔を埋め彼の体温を感じ時間を忘れて抱きしめ合った。

  国を背負うとゆう責任の重さを感じつつも互いの絆を確かめ合ったのだった。











※第一章はここまでです。

次からは第二章に入ります!

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