10.断罪
「そこまでにしようか。クリシス」
「兄上?!父上?!なぜここに・・」
扉があったと思われる場所に立つ3人は部屋の中央へ進みでた。
ディーンは中央まで進み出てからすぐにルーシアの前まで瞬間で魔法移動してルーシアを王子の腕の中から奪い返す。
「このような愚かなことを・・恥を知れ」
ディーンの瞳は射殺さんばかりに眼光を光らせクリシスに容赦ない言葉を浴びせた。クリシスは身じろぎできずベッドに座ったまま顔面蒼白になり震えながらルーシアを手放すしかなかった。
「ディーン!ディーンっ!」
「ルー・・待たせてしまったね。解除させてあげれなくてすまない。」
ディーンはルーシアの拘束具を解除し、腕の中で涙するルーシアを下ろしぎゅっと抱きしめる。
「ルーシア。君が魔力抑制薬を盛られていた証拠を陛下に御覧に入れてもよいかい?」
「はい・・。」
ディーンにエスコートされながら陛下の御前にて2人は跪いた。
「国王陛下。今回私ルーシア・エルガディオとミルティ・エルガディオは王妃陛下とクリシス王子殿下により魔力抑制薬とその他諸々の薬を盛られ監禁されました。その証拠を御覧に入れてもよろしいでしょうか。」
「許可しよう」
国王の許可の上でルーシアは右手薬指の指輪を国王に見えるようにかざした。
「この指輪は私が事前に入手した魔力抑制薬をもとに体内に薬を服用した場合赤い石が青いい色に変化するよう作った指輪です。今エルガディオ嬢の指から外せば元の赤い色に戻るはずです。
エルガディオ嬢指輪を外して私にいただけますか?」
「承知いたしました」
淡々と話すディーンに応え指輪を外しディーンに差し出した。
「このように外れれば元の赤い魔法石に戻ります。また、エルガディオ嬢の血を少しだけ今すぐいただき他の薬物も盛られなかったか確認をしたいと思います。」
「わかった。許可しよう。エルガディオ嬢。血をサーディンに分けてもらえるかな?」
「承知いたしました。」
「エルガディオ嬢少しだけ右手を拝借致します。」
ルーシアが返事をすると隣に跪いていたディーンがルーシアの右手を救い上げ小指の先端に少しだけ風魔法で傷を作り血を摂取し、すぐ癒し魔法で傷を塞いだ。
ディーンは跪いたまま宙に浮いた採血した血を魔法で解析していく。
水魔法の応用らしきその解析魔法は青白い光の魔法陣で解析され含まれた薬物の名前が浮かび上がった。
「国王陛下。解析の結果エルガディオ嬢の体内から見つかった薬物は魔法抑制薬、催眠薬この2種類でした。投与された時間帯はおおよそ5時間前後のようです。」
「サーディン。そなたは何故魔力抑制薬を所持しておった?この国では違法薬物であるぞ?」
「キリアン・ヴィトラ令息監禁事件の際に押収しており、報告書として一部研究用に所持の許可を宰相殿に申請し使用しておりました。」
「・・マジェスティ?聞いておらぬぞ?」
「申し訳ございません。サーディン王子殿下の結婚式が終わるまで報告を私の所で留めておくつもりでおりました。王妃陛下が関わる事でしたので申し訳ございません。」
「・・・・処罰は覚悟致せよ?」
「はっ。覚悟はできております。」
はぁ・・とため息を吐き国王は跪いたままのルーシアを見下ろす。
「エルガディオ嬢、サーディン二人とも面をあげよ。立って構わない。エルガディオ嬢は最後に飲食をしたのはいつか覚えておるのか?」
「ありがとうございます。私は気を失う直前王妃陛下からいただいた紅茶を飲んでから気を失っておりました。」
「ご・・誤解ですわ。陛下まで連れ出してくるほどのことではございませんわ!魔法抑制薬も睡眠薬も身に覚えがございません。私は拘束されていたと報告を受け救出にここにクリシスと来たのです!」
明らかに苦しい言い訳とわかっていても王妃は自分たちの非を認めるつもりはないようだ。
「王妃陛下。それではルーシアがお茶会最中に薬を服用して倒れて気を失っていた間どこで何をされていらっしゃったのでしょうか?たった5時間程度の間の行動内容をお聞かせください。」
「兄上。王妃陛下に対して不敬な物言いではございませんか?」
「その必要はないよ。すでに魔力抑制薬の密輸ルートは確認済みで、だれが所持しているのかも裏が取れている。最後の確認をするだけだからね。罪人の取り調べは最低限必要なことなだけだよ。」
ディーンは首をわざとらしく横に振り淡々と王妃に告げる。
「なっ?!罪人とは誰のことを言っているのです?!」
「王妃陛下。貴女です。」
鋭い視線で王妃を見つめるディーンに目を逸らさずに王妃は反論を続ける。
「私は魔力抑制薬など知りません。何故そんな意味の分からないことを言うのです。気でもおかしくなったのでは」
「ご自分からお認めになったほうが潔いと思いますよ?証拠はもうあるので逃げられませんよ。」
「さっきのが証拠だというなら私は認めないわ!!」
王妃はびくっと肩を震わせ声を上擦らせたのをディーンは見逃さない。
「おや?魔力抑制薬を入手したのが王妃陛下のご実家ソウェトナ侯爵が魔力抑制薬を密輸していた証拠を見つけ、更にすでに侯爵を尋問し終えておりまして。18年前の私に魔力抑制薬を使用したこと、【覚醒者】キリアン・ヴィトラ令息の拉致監禁でも使用したことまですでに王妃陛下が関わっていたと自白しています。他にどんな証拠が必要ですか?」
「そ・・・そんな・・」
「クリシス。そなたも今回王妃陛下と共にエルガディオ嬢二人を監禁していたことの証拠はすでに用意してある。覚悟して待ちなさい。」
「・・・・・・」
クリシスはベッドに座ったまま言葉を失い俯き、王妃は顔を青ざめさせ震えながら崩れ落ちるように床に座り込んだ。その2人の姿を無表情でディーンは見つめ続けた。
「証拠も含め全て確認後処分を決める。王妃、クリシス、この部屋の王妃側の護衛と次女は全員捕らえよ。」
「承知いたしました。」
宰相はその場で魔法伝達を行い、すぐに兵士によって罪人たちは投獄された。
10日後、全て証拠が揃いソウェトナ侯爵は18年前よりアストラ王国で製造された【魔力抑制薬】をキシュドナ伯爵から密輸し、ソウェトナで管理したものを王妃の権限で暗殺、拉致に使用していたことが取り決めの契約書の存在で明らかとなった。
サーディン王子の暗殺未遂事件に関しては証拠不十分で時効扱いであったが、キリアン・ヴィトラ令息の拉致監禁事件にてザワン子爵やその他証言できるものを確保。また魔力抑制薬を現品押収できたため、その対策魔道具も研究は更に続けられている。
王妃殿下の関わりに関してはソウェトナ侯爵と王妃陛下の側近である侍女長より証言が取れたため有罪は確定。【覚醒者】の拉致監禁は処刑か幽閉のどちらかの刑罰であり国王は王妃を廃妃とし無期限幽閉。
ソウェトナ侯爵家は取り潰しの上侯爵は密輸、【覚醒者】暗殺未遂、王族の婚約者拉致監禁補助をしたことで処刑。
クリシス王子は火属性のダンダル辺境伯爵の元で末端の一兵士として10年の兵役。そしてもう一度王族として正しい知識を学びなおす機会を与えられた。
ディーンは母親である元王妃ともクリシス王子とも対話することはなかった。




