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第八話 平和な朝

「おにぃ、早く起きて。 遅刻するよっ」



「もうちょっと……あと五分」



「とりゃっ!」



「がはっ!」



 あんずは、綾人のみぞおちに肘をめり込ませた。いくら鍛えたからと言って無防備な状態であればなんの意味がない。綾人はお腹を抑え、うなりながらベッドの上でのたうち回っている。そんな様子を見て何故かあんずは誇らしげにガッツポーズを決めていた。



「ほら早く朝ご飯食べていくよっ! 準備準備っ」



「ちと……まって」



「もう一発いっとく?」



 綾人は激しく首を横に振る。それはもう頭が取れそうなくらいの勢いで。


 窓から眩しいほどに太陽の光が入ってきている。綾人は家に帰ってきてから一時間しか寝ることができずしっかりと休むことができていない。とはいえ仕事上そんなことは日常茶飯事だ。オールすることも珍しくはない。それなのにいつまで経っても寝坊することは変わらない。


 やっと痛みが収まってきたお腹を擦りながら、階段を降りる。なんか部位は違えどデジャブを感じる。



「いただきます」



「いただきますっ!」



 昨日作り置きしておいたおかずをご飯といっしょに食べる。朝は胃腸の働きが弱いのでいつも軽めの食事を摂るように心がけている。しかし、あんずは物足りないようでいつも朝から購買でパンなどを買っているらしい。


 昼ご飯は購買なので特に作ってはいない。



「「ごちそうさまでしたっ」」



 二人で食器を洗ったあとそれぞれ部屋で着替えてから玄関に向かう。



「それじゃあ、行ってきますっ」



「行ってきます」



 靴箱の上に置いてある家族写真に挨拶をしてから外にでる。朝特有の眩しさに二人同時に目を細める。曇り一つない見事な晴天だ。



「暑いね〜」



「そう思ってるなら離れてくれ」



「やだっ」



 あんずは毎回綾人と出かけるときは腕を組んでいる。あんずは兄に対してまぁまぁな独占欲を持っているようだが、それを向けられている当人は妹ならみんなこんな感じだろうと特に気にしていない。


 はたから見ると、距離が近すぎる気がする。この兄妹に対してこの様子じゃ誰も横槍を入れる勇気があるものはいないだろう。むしろ全くの赤の他人からみたらカップルと間違えられそうだ。



「おはよ。 綾人くん、あんずちゃん」



「おはよ」



「おはようございますっ」



 あんずは綾人の腕を無理やり引っ張って、空いてる腕を冬美の腕に絡ませる。



「わ〜、暑いねっ」



「またあせもできちゃうよ?」



「大丈夫っ。 その時はまたお兄ちゃんに薬塗ってもらうから」



「いい加減自分でぬれ。 ていうかそもそもくっつくな」



「いいじゃん別にっ」



 あんずは甘えん坊でもあるのか登校のときは学校に入るまで綾人か冬美のどちらか、もしくは両方にくっついたまま歩く。冬なら温まり合えてwin-winなんだろうけど、夏場ははっきり言って地獄だ。見てるだけで汗が出てしまいそうだ。しかし幸いなことに、二人とも汗はあまりかかないほうだ。暑いのには変わらないけど。一方あんずは汗をよくかくのであせもにならないように注意が必要である。……本人が注意しようとしないが。


 学校の敷地内に入ると微笑ましく思っている視線や嫉妬のような視線が所々から浴びせられる。冬美とあんずは異性からよくモテるが綾人の方は良くも悪くも普通だ。嫉妬の視線はすべて、綾人にむけられている。冬美とあんずがくっついて登校しているときはもちろん、嫉妬の視線はゼロだ。



「それじゃまたねっ」



「授業中寝るなよ〜」



「頑張ってねっ」



 あんずは中等生なので綾人達とは早めに分かれることになる。あんずは二人の見送りを受けながら、パタパタと元気よく廊下を走っていった。


 

「今日も仕事あるのか?」



「二件くらいかな」



「また寝たりするなよ」



「昨日のはしょうがないでしょ」



 ここで話している仕事とは、冬美の転生の仕事である。冬美もあまり眠ってないはずなのに仕事と勉学どちらもしっかりとこなせている。いつか過労で倒れたりしないか心配なところだが体調管理も万全なので全くの隙もない。



「じゃ、また放課後に」



「がんばれよー」



 冬美は一年生なので三階、綾人は二年生なので二階とそれぞれ階層が違うため二人は階段を登りきったところで分かれる。冬美の背中を見送ってから、綾人は自分の教室へと向かった。

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