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第五話 罰

「いったなんのつもりですか?」



「いや、少し罰を与えようと思ってな」



 フードを被った人の正体は桜子だった。道中二手に別れ、桜子は隣りにあるビルで冬美の援護射撃を行っていたはずだ。なのにこんなに早く、しかも敵の隣で堂々と立っていたなんて誰も信じられないだろう。


 もちろん綾人も内心驚いていたが同時にLieならやりかねないなと思う気持ちもあった。



「罰にしても本気すぎません?」



「この程度で私が本気と思ってるのか。 殺すぞ」



 桜子は必死に刀で銃弾を弾く綾人に急接近する。



「っ!」



 流石に距離を詰められては銃弾を捌ききれず一弾肩をかすめた。


 綾人は後ろの壁を思いっきり蹴り弾道を避けながら桜子に接近し接近戦を仕掛ける。綾人が使っている武器は近すぎるとかえって弱点となる。しかし、刀を鞘に納める余裕はなかったのでソファに突き刺しそのまま肉弾戦へと突入する。桜子もそれに合わせて銃を腰のホルスターにしまい、ボクシングポーズをする。


 どちらも訓練のおかげで技量はある。あとは速さで相手にダメージを与えるしかない。



「いい判断だと思うが私に勝てる見込みがあるのか?」



「……」



 桜子にはまだ軽口をたたける余裕があるが綾人は息が上がってきている。桜子のスピードについていくのに必死で一撃もいれる隙がない。しかも避ける余裕もないので打撃の衝撃を腕で流しているがダメージが蓄積していって長くはもたない。


 机の上においてあった紙類はすべて空中に舞い上がっているところを見ると相当な速さで殴り合っているはずだが二人の目にはアドレナリンが分泌しているのかとてもゆっくりした動きに見えている。


 

「よし、ここまでだ」



 桜子は突然そんな事言いながら綾人を壁に向かって蹴り飛ばした。再び鮮血を吐く綾人を尻目にソファーに刺さっている刀を抜き綾人に差出す。綾人は刀を受け取り、鞘に収めた。



「もう終わりですか」



「やる気があるならやってもいいが今はコスモポリタンが気になる」



「どうして冬美が……あっ!」



 綾人は壁にかけてある少し赤い点々がついている時計を見たあと、急に青ざめた。慌てて起き上がろうとしたが胸を押さえてそのままうずくまってしまった。肺が傷ついているらしく呼吸を浅くして少しでも痛みを少なくしようとしている。アドレナリンが切れたのだろう。



「世話のかかる部下だ」



「誰のせいだと思ってるんですかね」



 綾人は痛みを堪えながら軽口を叩く。そんな部下の体をひょいと軽々持ち上げ、桜子はお姫様抱っこをしたまま走り出した。



「ち、ちょっと!?」



「ストレス発散になって私はいま上機嫌だからな。 これくらいはしてやる」



「ストレス発散って」



 綾人はその続きを言おうとしたが肺の痛みが思ったよりひどく、それ以上話す気にならなくなった。


 二人は死体の横を通り過ぎながら一階に降りていった。階段を出るとすぐ目の前に大量の死体があった。どうやら思っていた以上に一階に敵が集まったらしい。



「インカムの反応もなし。 面倒なことになったな」



「近くにもいる気配はないですね」



 綾人も首を目一杯に動かして痕跡を探している。桜子はしばらくあたりを見回したあと、ふと何かに気づいたようで一階の倉庫らしきドアめがけて歩き始める。



「何がありました?」



「若干だが血の跡が並んでる。 あの部屋だ」



 桜子たちが進んでいる先には『保管室』と書かれた部屋がある。確かにその閉じられたドアの下には周りに死体がないはずなのに血の跡がある。となると冬美はその先に……

 桜子がそっとドアを開くとそこには、大量の死体と、荒らされた様子のない棚がある。棚脚には大きな血溜まりも見える。


 綾人は桜子におろしてもらい、恐る恐る近づいていく。そこにあったのは……






 ーーーー血溜まりの真ん中にうつ伏せになっている冬美の姿だったーーーー





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