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第二十五話 忍び寄る影

 夜が明け、二人は自然に目を覚ましたあと、順番に風呂に入った。そして、流れ作業のように食事をとる。


 二人はそれ以降特に言葉を交わすことなく、各々自由に行動した。冬美は役所に潜入し、綾人は、昨日の夜に新しく起こった殺人の犯行現場を調査していった。変わったことといえば、今回殺されたのは綾人が初日に関わりのあった人物だということだけだ。


 そうして、ターゲットの尻尾を掴むことができないまま、四日目も終わりを迎えていた。



「なんか手がかり見つかった?」



「特に何も」



「そっか。 ここまで来てわかったことといえば、ターゲットの性格だけか」



「あと三日もあるから焦らずに行こう?」



「そうだな」



 綾人は、自己暗示をかけるかのように頷く。ふたりとも、ここまで時間が過ぎても手がかり一つ見つけられないのはそうあることではないので内心少し、焦っている。しかし、ここで冷静さを失っては暗殺者として失格だ。


 何かを見落としているわけではないはず。だからこそ焦る気持ちが生まれているが、そこをぐっと抑える。


 まだ、任務期間が終了したわけではないし、どこぞの組織とは違い失敗しても自分の命がなくなるわけではない。



「早く見つけないと犠牲者は増えていく一方だ」



「だけど、冷静さを失って見落としがあれば、更に増えるよ?」



「……」



「今日はもう休んだほうがいいわ」



「悪いな」



「大丈夫。 私も同じ気持ちだから」



 暗殺者として手がかりがつかめるまで長い期間を要するのは至極普通のことだ。そんなことでいちいち心を乱されては、この先やっていけない。


 しかしこの場にいる少年少女はまだ十六、七歳。重い使命を背負うには早すぎる年齢だ。顔見知りが自分のせいで殺されたと思い詰めるのも無理はない。組織として、この二人を現場に送るのは早計な判断だろう。


 しかし、そうせざるおえないほど、殉職するものが多いのは確かだ。育成にも何年もの時間を要するためおいそれと人員を増やせるものではない。


 枕元に冬美は小型ナイフ、綾人は刀を置いて寝ている二人の顔は険しい。どんな悪夢を見ているのだろうか。


****


 男の目の前に夜の暗さよりも更に暗い、15センチ位のまるでブラックホールのような空間がポツリと空いている。


 男は、本来転移先の世界では使用できないはずの携帯水晶板を右手に持ち、誰かと連絡をしている。


 そして左手には、この世界の地図を持っていてそれを見ながら話しているようだ。おそらく、完全な推測ではあるが、ブラックホールのような穴から外部の世界と通信をしているのだろう。



「ほんとにここにいるんだな?」



 男は再三確認をし、携帯水晶板を、ズボンのポケットに仕舞った。同時に穴も吸い込まれるように消える。


 男は鼻歌を歌いながら足元においていた瓶酒を一気に飲む。そのお酒は、綾人と冬美が見つけた手がかりのものと同じだ。どうやら血の匂いに紛れ込まないと、かなり匂いの強い飲み物になるらしい。


 このお酒はかなり強いものらしいが男はお酒に強いらしく、大きめの瓶を空にしても酔っている様子はない。


 かなりお酒臭いけど。



「にしてもこんなにちかくにいたとはな〜」



 男は瓶を路面に捨て、地図を再び眺めた。そこにはいくつかの赤い丸が記してある。何かを探していたらしいがそれも不要になったのか、くしゃくしゃと丸めて瓶と同じように捨てる。



「今夜はこの世界に来て一番楽しめそうだ」



 男は気分が上がったのか、鼻歌から声を出して歌うようになり、スキップもし始めた。


 生ぬるく体にまとわりつくような湿っぽい風が、少しだけ強く吹き付ける。まるで不吉な予感を連想させるような、そんな風が。

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