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第二十一話 血痕

 離脱を完了した綾人と冬美は、一応誰の目にも止まらないように大きな道を避け、少し遠回りをしてから仮家に帰った。家を出る前に一度仮眠をとっているが、任務中は極限まで精神を張り詰めているためベットを見ると力が抜け、睡魔が襲ってくる。



「おやすみ」



「おやすみなさい」



 互いに背を向けて掛け布団をかぶる。数秒立つと、二人から寝息が聞こえ始めた。いつ寝れるかわからないときにはいつでもどこでもすぐに寝れるという技術は間接的に殉職のリスクを減らすことが出来る。生存率を上げるには、何気ない日常の中でも常に訓練しなければならない。


****


 日の出が出るのと同時に二人は目を覚ます。そこからは昨日と同じように過ごす。昔からこの場所にいたかのように振る舞う。たとえ他人の目が向いてなくても。



「今日は現場に行ってみない?」



「場所特定したのか?」



「綾人くんが別の所を見てたときにこっそり書類取ってきたの」



 そう言うと冬美は、ポケットの中から一枚の紙を取り出した。そこには被害者の簡易な検死結果と、犯行現場の写真が貼られていた。綾人には、この道に見覚えがある。



「裏路地の、結構深いところか」



「偶然にも、私が昨日交渉していた店の近くよ」



「そっか。 探し回らなくて済むな」



 本日のやることが決まった綾人達は、早速皿を洗い、昨日新たに購入した服に着替えて外に出た。


 外は雨が降っていたが、傘をささなくても二人が濡れることはなかった。実はこの服には雨を凌ぐことが出来る魔法がかけられている。そのせいでまぁまぁ高い価格だったのだが、あらかじめ用意されていたお金のおかげでどうにかなった。


 用意されているお金の出どころは、実は事前に盗んできたもの……だったりそうじゃなかったりするのだが特にそこは気にするところではない。手がかりを見つけるためにはお金など惜しむ余裕などないのだから。



「この雨だと流石に血痕消えちゃうかな?」



「野次馬もいただろうからその人たちから話聞くしかない」



「でも夜中だからね〜」



 なかなか思うようにいかない捜査である。とはいえ、憶測ではあるもののターゲットがどうやって身を隠しているのかの見当がついているだけまだましだ。期限前日までなんの見当もつかないことだって、そう珍しくはない。



「綾人くん、あそこじゃない?」



「なんか、変な四角いやつに覆われてるな」



 現場をそのまま保存するためだろうか。魔法と思われる四角い物体の中に雨が染み込んでいる様子はなく、事件当時の悲惨さを生々しく残している。



「冬美、興奮しない」



「みゅう〜」



 四方八方に広がっている血溜まりを見て顔を赤らめている冬美の頬を、綾人は少し強めに引っ張る。

変なうめき声を出しながら、冬美の頬は餅のように伸びる。痛くならないように加減しているようで、綾人が離し元の形に戻った血色の良い頬には、跡が一切残っていない。


 綾人は近くに落ちていたガラスの破片を拾い、匂いを嗅ぐ。



「お酒の匂いか…………」



「今日買ってみる?」



「そうだな。 どんなの飲んでいたのか気になるし」



「酔っぱらいながら歩いて注意力散漫なところをシャキンとやられたのかな?」



「とりあえず殺りたいときには絶好の相手だったかもな」



 あるいは、なぶり殺す為にわざと激しく暴れなさそうな人を選んだのか。そもそも被害者はお酒を飲んでいなかった可能性もある。ターゲット像を絞るには、まだまだ情報が足りない。



「冬美は被害者の状態どこまで予測してる?」



「ん〜、細身の男性でバラバラにされたのは死んでからっていうところくらいかな」



 綾人は目を丸くしてぽかんとしてしまった。被害者像をそこまで絞り込める理由がさっぱりわからなかったからだ。




「えっと…………どうして?」



「ここに何故か太い線上の血痕があるでしょ?」



 冬美は、自分の足元近くにある血痕を指さした。



「うん」



「これは足の形に沿って血が流れてきたんだと思う。 そうなるためには一度倒れないといけない」



「でもなんで足だと?」



「血痕の長さと太さかな。 あとは特に擦れたあともなさそうだし建物の壁についている血痕の高さとかも判断材料になるね」



「…………」



 血痕だけでここまでの情報を得ることができるとは。冬美の血液好きは侮れない。

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