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第十九話 手がかり探し

 ひたすら無言で走り続ける冬美の後ろを、同じく無言のままついて行く綾人。二人の間には気まずい空気が流れている。


 役所も近くなって来たところで冬美は突然立ち止まった。綾人もそれに続いて止まり、少し緊張を帯びた声で話しかける。



「どうしたの?」



「私、やりすぎちゃったかな」



 無言で走っていたのはどうやら落ち込んでいたせいだったらしい。冬美の怒りが解けたことに安堵しつつ、綾人は冬美を慰める。



「そんな事ないと思うよ。 あれだけ暴言言われたんだから怒るのも仕方がない」



「それが理由じゃないんだけど……」



 冬美は悩んでいる素振りを見せる。何かを言おうかどうか考えているのだろうか。


 詳しい理由を知りたくなった綾人だが、これ以上聞いても仕方がないことだと思い、冬美の頭に手を乗せる。



「無理に言わなくてもいいから嫌なことは忘れよう?」



「…………そうだね」



 まだ吹っ切れてはいなさそうだがとりあえず任務をこなせば気が紛れるだろう。綾人は再び走り始めた。そのすぐ後に冬美も走り始める。


 しばらく走り続けると、周りの建物より一際大きい建物が現れた。この建物が役所である。


 ここからは失敗の許されない仕事だ。余計な思考を頭からふるい落とし、集中力を高める。



「それじゃ、使ってみるよ」



「了解」



 冬美は、先程手に入れた道具を壁にそっと当てる。すると、一瞬なにもないはずの空間までもが淡くひかり、すぐに消えた。魔法の効果が切れた、ということなのだろうか。


 綾人は自分の腰ベルトから鉤縄を取り出し、一番高い外壁の縁に引っ掛ける。引っ張っても外れないことを確認してから素早く登る。途中で止まり、小さい鏡を取り出し、下に誰もいないことを確認して登りきる。もう少ししたら、冬美も来るだろう。


 一度鏡で周囲を見る理由はもう一つある。万が一狙撃や攻撃されても致命傷を負わないようにするためだ。


 冬美が登りきったことを確認したら、鈎縄を回収し、地面に向かって音無く飛び降りる。



「書類の場所は?」



「受付の場所にある部屋の奥」



「急ぐぞ」



 裏口らしきドアのロックを解除して、受付に向かう。部屋の中に入ると、壁一面に棚があり、紙の書類で埋め尽くされていた。この中に、目標のものがあるはずだ。



「役所と警察署を一括にしてるなんて、事件とか少ないのかな?」



「そもそも起きても厳重な捜査をしないからっていう可能性もあるぞ」



「兵士のほうが権力持ってそうだしね」



 幸い、日付ごとに書類がまとめられていたので目的のものはすぐに見つかった。



「首の切り口は刃物で切られたとは思えないほどの滑らかさだった……か」



「ビンゴかもしれないけどこの書類、他のものより明らかに情報量少ないよ?」



「改ざん、されてるかもな」



 他にも書類を見ていくことにする。今日起きた事件はまだない。どうやら事件が少ないという予想はあたっていそうだ。


 不正入国を許したのは一昨日だ。なのでそれよりも前の書類を見ても意味がないのだろうが、あまりにも事件が少なさすぎるのですぐに見終わってしまった。一応一週間前までの書類はすべて目を通す。



「コスモポリタン、ちょっといい?」



「どうした?」



「これ見て」



 そう言われて書類を受け取ると、そこに書かれていたのは新役員のリストだ。どうやら四日前に新人が五人入ってきたらしい。もし、書類を改ざんしたのがターゲットだとすると、なりすますには格好の相手だ。



「カルーソー、天井裏に隠れるよっ!」



 潜入して手がかりを探していると、外が何やら騒がしくなった。急いで元にあった場所に書類を戻し、素早く天井裏に隠れる。

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