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第十四話 潜入任務開始

 それぞれの部屋で準備してから時間ぴったりにゲートの入口前に集合した。そこにはすでに師匠の姿があった。



「今日は遅刻しなかったわね」



「流石に遅刻はしませんよ」



「そうよね。 それじゃ、説明するわ」



 今回の任務はこの世界から不正入国した犯罪者を始末すること。運営しているゲートのうちの一つが何者かに乗っ取られたらしい。幸い今は回復したものの中に一人不届き者が入ってしまったというのだ。もちろん、転生人暗殺部隊である綾人と冬美が任務を任されているということは入ったのは重要指名手配犯であるということ。



「でも、顔も身長もわかってないのよね〜」



「何か一つくらいは手がかりがあるんですよね?」



 冬美が質問すると、師匠は指を鳴らした。



「その通りよ。 手がかりは奴が使う道具。 細い糸が巻いてあるヨーヨーよ」



「ヨーヨー、ですか?」



「そう。 糸は目に見えにくいそうだから気をつけてね〜」



 手がかりはものすごく曖昧なもので見つけるのはかなり困難なことを伺わせる。とはいえいつも似たような状況だ。特別ではない。



「残りの指示は向こうの世界にあるからそれ見て。 期限は一週間」



「Lieは今回の任務には?」



「関わってるわよ。 ただし、騒ぎの残りの犯人を捕まえにね」



「わかりました」



 綾人はそう言うと、びしっと敬礼をした。冬美も同じように敬礼をする。



「「行って参ります」」



 師匠も少し力の抜けた敬礼を返す。



「よろしくね。 生還してくることを祈るわ」



***** 



 ゲートをくぐると、生活感のある部屋が現れた。目の前に椅子があり、その上には綾人達がいる世界ではあまりみられない素材の上着がかけてある。ポケットの中を調べてみると、中から何の植物のかわからない、大きめの葉っぱがでてきた。そこには小さく文字が書いてある。



『スーツは使用しないこと。原住民の服を用意したから箱を開けて』



 あたりを見回すと大きめの木箱が目に入った。開けると指示通り見慣れない服が入っている。葉っぱをもう一度見ると、最初とは違う文が書いてあった。



『ここは魔法が使える世界だけどあなた達は使えない。一週間後に再びゲートが開くからその時にターゲットの血液とヨーヨーを持って帰還して』



 どうやら葉っぱには魔法がかけられていたらしい。葉っぱから視線をそらすと、瞬時に燃えた。だけど熱くはなかった。


 隣で一緒に読んでいた冬美は少し残念そうな顔をしていた。魔法が使えないことを残念がっているわけではないと綾人は気づいていた。



「血液全部提出してよ?」



「ん。 なんで考えてることわかるのよ」



 冬美はそんな事を言いながらキッチン周りを確認し始めた。綾人も家全体の確認を始める。


 調べてみると一階しかない家で、周りには店も家も見当たらない。もともと空き家だったのだろう、庭に生えている雑草は触っただけだがどれも刈り取ったばかりのような断面をしていた。偽装にはぴったりの家だったのだろう。



「こっちの時間はまだ夜中の十二時なんだね」



「そうなんだ」



 冬美は柱時計がなぜか気になるようで、手にとってまじまじと見ている。時計を持ったまま家の端に移動すると時計は元あった柱に向かって飛んでいき、元の位置に戻っていった。



「盗難防止用の魔法かな?」



「よく気づいたな。 なんでわかった?」



「ん〜、勘かな」



 そういった冬美は、綾人に背を向けて大きくあくびをした。連日任務だったせいで眠気がピークに達しているようだ。



「そろそろ寝るか?」



「そうだね」



 綾人もつられてあくびが出た。二人は顔を見合わせて、少しおかしそうに笑う。


 寝室にいくと、ダブルベッドがあった。もちろんダブルベッドなので、寝室には他にベッドは見当たらない。しかもベッドの上にはご丁寧にパジャマがおいてあるが、どっからどうみてもそれはガウンタイプだ。思春期真っ只中の綾人には変な妄想が頭を支配しやすい。下半身に血が集まる前に綾人は口早に提案する。



「俺はソファーで寝るから」



「一緒でもいいんじゃない?」



「いや〜、そのぉ〜」



「私は気にしないよ? 任務のときはいつも一緒でしょ?」



 残念ながら冬美は純粋であった。しかも毎回の任務で一緒に寝ているからか、それが当たり前だと思ってしまっている。



「じゃ私向こうで着替えてくるから」



 と、奥の部屋に引っ込んだ冬美。綾人は冬美の親切心を無駄にすることなどできないので恐る恐るベッドに横たわる。もちろんパジャマは部屋の隅だ。



「誰だよ、こんな男心弄ぶようなことしたやつ」



 綾人は独りごちたがそんな事する相手は一人しか思いつかなかった。



「あの……クソ師匠……め」



 ここで精神力の限界が来てしまい、さっきまで保たれていた意識がふと切れた。しばらくするとコテンと寝てしまった綾人を見て、冬美はクスッと笑ったあと、背を向ける形でベッドに入り、寝息を立て始めた。

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