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第九話 学校

 教室の中はいつも通り大変賑やかだ。まぁ、男子しかいない教室となると、そうなってしまうのも仕方がない。


 ここは男女別々の教室となっている数少ない学校の一つだ。比較的新しい学校なのにわざわざ古風なクラス分けを行っているのにはなにか理由があるようだが生徒は誰も知らない。


 

「よぉ綾人」



「おはよう」



「相変わらず冴えないね〜」



「ほっとけ」



 綾人が席に座ると早速、すでに前の席に座っていたクラスメイトが話しかけてくる。綾人にとっては数少ない友人の一人だ。



「今日は水泳の授業あったっけ?」



「あると思うけど」



「よっしゃあっ!」



 水泳の授業は網目のフェンスで区切られている状態での男女合同授業だ。男子学生が水泳の授業で喜びを表すのは、たんに涼めるからという理由もあるにはあるだろうがそれよりも大きな割合を占めている理由があるのはおわかりだろう。そう、健全な男子高校生あるあるな燃えたぎる獣のような視線をギラつかせながら砂のようにこぼれゆく青春のひとときを堪能しようとしてるのだ。完結にまとめると、『変態』の二文字で表せる。



「昨日聞いたと思うが今日女子は体育館だぞ」



「☓☓☓☓☓☓!」



 希望に満ち溢れた目が一瞬にして絶望へと変わる。さっき吐いてた暴言、先生に聞かれてたら終わってたなと綾人は頬杖を付きながらぼんやりと思った。



「いいよな綾人は。 一年生のマドンナと天真爛漫な妹さんといっしょに登校できるんだから。 しかも腕を組みながら……クミナガラッ!」



「…………」



 どうやら複数向けられていた嫉妬のような視線の一つはこいつからだったらしい。


 煩悩の塊が向けてくる嫉妬の視線を受け流しながら、他愛もない会話を続ける。



「ホームルーム始めるぞ〜」



「起立っ」



 強面の担任が入ってくるとみんな一斉に立ち上がる。優しい先生だとなめられやすいが怖い先生だとたとえ動物園のように騒いでたとしても一斉に静まり返る。担任の振り分けをした先生はよく男子生徒の特徴を理解した、優秀な先生なのだろう。


 学校では一般教科の他に男子生徒は剣術と体術を、女子生徒は護身術と転生のさせ方を勉強する。全員が全員剣の道や転生人となるわけではないが、一応知識として教え込まれる。どちらも正式な資格がないと使えない知識なので卒業したら一切関係なくなる人の割合が大変多い。それでも勉強させるのはこの学校の教育方針が関係している。


 この学校は専門学校と同じ扱いになるのだが将来の夢的にまるっきり関係ない人が大多数占める。その理由は学費が完全無料だからだ。綾人やあんずも、それを理由に入った者の一人である。



*****



「綾人、早く購買行こうぜっ」



「チャイムなったばっかりだろ」



 毎度のことながら気が遠くなるような時間を過ごし、ようやく昼食の時間になった。授業の終わりの挨拶をするやいなやクラスの三分の一は教室の狭いドアに体をぶつけながら廊下に出て猛ダッシュする。綾人もそれに続いて全力ではないが走っている。購買は昼食の時間だけ別メニューを出しており、それを求め飢えた男どもがみっともなく争うのだ。



「よっしゃあっ! 一個限定ロールケーキと肉弁当もらったっ!」



「「「「「越されたァァァァっ!」」」」」



 購買につくと先客が六人ぐらいいた。そこのレジの眼の前で戦利品を高く天井に向かって突きつけているのはあんずだった。その前には膝から崩れ落ちている男達。まるで従者みたいだ。


 あんずはしばらく満足げに先輩にあたる人たちの頭を眺めたあと、綾人を見つけ元気よく走り寄ってくる。



「へへんっ! お兄ちゃんほしい? ほしいでしょ〜」



「いや別に」



「そんなこと言って、ホントはほしいんでしょ〜」



「うるさい」



「あたっ」



 わざわざ近づいて煽ってくるあんずの額に、綾人はデコピンを食らわす。あんずはデコピンされたおでこをさすりしばらく唸ったあと、その手を今度は口元にもっていき、潤んだ目で綾人を見上げた。



「おにいちゃん……ひどい」



「綾人てんめー!」



 隣りにいた友人は綾人の首を締め付け、壁に押し付けた。綾人はその手を必死に離そうとする。



「あんずちゃんを泣かせたな〜!」



「なんでお前が怒るんだよ」



「こんないい子を泣かせるなんて、俺は絶対に許さないっ」



「これのどこがいい子だよっ!」



「んだと〜!」



 まるで中等生に戻ったかのような見るに耐えない争いをする両者を見て、あんずは大きな声でお腹を抑えながら笑い転げた。


 購買にあとから並んだ生徒たちは、未だにうなだれている男たちと取っ組み合いを始めた綾人たち、そしてそれを見て笑い転げるあんずを見てまるっきり状況が読めず目を丸くしていた。

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