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その黎明に祈る  作者: 願音
入学試験編
8/73

幕間 滑稽な真相は


 初幕間です。少し短め。

 ミラの試験が終わったお祝いということで。



 晴れた日。ドロシーはミラが待っている小屋の裏で()()()()を見付ける。


 物音がして小屋の裏に回ったドロシーは息を呑む。


「............っ、」


 そして朝の鐘が鳴るのに気付かないまま、それに近づき手を伸ばした。


*_*_*_*_*_*


「師匠、遅いなぁ」


 小屋の扉を見つめたポツリと呟く。日の出の鐘が鳴って二〇分。普段ピッタリの時間に来るドロシーが遅刻をするのは珍しい。


「......何かあったのかな」


 何かに巻き込まれている可能性に思い至って、立ち上がる。小屋から出て、まずは魔術組合で情報収集することにした。


*_*_*_*_*_*


 ―結論からいうと、何もなかった。


 何か事件が起ったということもなく、ドロシーの姿は見当たらない。記憶を掘り起こしながら少し離れたドロシーの住む集合住宅まで向かったが、留守。


「師匠が失踪した......」


 公園のベンチに座って噴水を眺めながら遠い目をする。どうしよう、と呟いた。少し遠いところまで来てしまった。王都の中心部の近く。決して近くはないが、セレナイト魔術学園の屋根の装飾が僅かに見えるほど。


「とりあえず、家に戻ろうかな......?」


 入れ違いになっていたのなら、笑えない。


 ため息をついて立ち上がろうとすると、声をかけられる。幼い少女の声だ。


「ねぇ、お姉さん」


「どうかしたの?」


 振り向くと、そこにいるのは小柄な一〇歳よりも少し幼いぐらいの少女。完全なる美少女だ。質素なワンピースを着ていて、陽射しを反射して艶やかな白髪が印象的。薄紅色の瞳がキラキラと輝いていた。


「魔術師なんですか?」


「ううん、私はまだ見習いで―って、分かるの?」


 目を見開く。少女がニッコリと笑って、頷いた。


「何となく、分かるんです。魔力がすっごく多いし、杖も下げてるのが分かったので」


「魔力も分かるんだ。凄いねぇ」


「......私、魔術師になりたいんです」


 思いがけない言葉に、瞬きする。少女は静かに言う。


「魔術師になって、いっぱいいっぱい活躍したいんです。どうしたら孤児院育ちでもなれますか?」


 孤児院育ち。


 すぐに難しいな、と思った。孤児院では、十五歳になったときの魔力計測が行われないことが多い。―だが、一つ方法がある。


「あなたも魔力が多い感じはするから......魔力計測してもらえれば、多分セレナイト魔術学園に入学するサポートはしてもらえるんじゃないかな?」


「......魔力計測してもらうにはどうしたらいいんですか?」


 小さく聞かれて、力強く頷き返す。


「魔術組合っていう所で一五リゼル手数料として払ったら、誰でも魔力計測できるはず」


 少女はぱぁっと花が咲くような笑顔を浮かべる。


「本当っ?!」


「うん」


「ありがと、お姉さん!!......名前、きいてもいいですかっ?」


「私?私はねぇ......うん、秘密。あなたは?」


「......私はラトナ。―いつか、また会えますように」


 少女の間が気になったが、まぁいっかと背を向ける。ミラは来たときと同じように屋敷へと戻った。


 ―数年後、ミラは近くの孤児院を片っ端から訪ねるがラトナと名乗った少女は記録さえも見つからなかった。似た少女がいたと証言した孤児院は、違う名前を告げてミラを混乱させることになる。


*_*_*_*_*_*


「......師匠、来てない」


 口を尖らせて小屋に入ろうとしたとき、みゃう、と鳴き声が聞こえた気がした。その出所は小屋の裏。


「............、猫?」


 野良猫が敷地内に入り込んだのだろうか。もしそうなら、外に出してやらないと。

 そう考えて裏に回ったミラは目撃する。



 ―猫を愛でるドロシーの姿を。



「..................」


 沈黙。あまりに予想外の展開。自分が探し回ったのは何だったのか。


(突撃する?......でももうちょっと眺めてようかな?訓練しなきゃだけどなぁ)


 悩んだ結果、突撃。


「こんにちは、師匠」


「ひゃあぁぁっ?!」


 いきなり声をかけると、ドロシーが尻餅をついた。瞳には驚きが滲んでいる。


「こんなところで何をしているんですか?」


「い、いやぁっ、別に......」


 焦るドロシーは端から見れば面白い。既に子猫は逃げ出していた。ミラは今日の鬱憤をどうやって晴らすか結論付けると、「いきましょう」と声をかける。


「訓練しないとですよ」


「そうね......」


 二人は連れだって小屋へと入っていく。


 これは、試験二週間前、しょうもない日常の一幕に起きた出来事。


 ―この後、暫くドロシーはレイチェルに揶揄われることが増えたそう。


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