驚きの報告
ストーリーの進行上、今回はかなり短めです。
その日の授業は最後に解答用紙を返却されて終わった。さっさと寮に戻ろうとするミラをレベッカが呼び止める。
「おい」
「はい、何ですか?」
振り向くと、封筒を二つ渡された。
「これ、今日中に読んどけ。返事は明日な」
「......分かりました」
頷いて、今度こそ寮に向かう。誰からの手紙なのかが疑問だった。
片方は教員が使う焦茶の封筒だから何か特別課題についてだろうと思われる。それなら、きっとレベッカからだ。
しかし、もう片方が分からない。こちらは普通封筒。ミラに手紙を送る可能性がある人間はあまり多くない。
(お父様か............あとは、<雷霆の魔術師>様とか?......多分、同年代の子ではないだろうな)
普通に悲しいことを考えつつ自分の部屋に辿り着き、ペーパーナイフで開封する。まず確認したのは、焦茶の封筒だ。
予想通り、中身はレベッカから。
『次期八階生ミラ・バーバラン。
入学試験、定期試験、特別課題の優秀な成績からお前は八階生として授業を受けられることが決定した。
だが、いきなり一〇組の生徒が八組に昇格したとなると、確実に騒ぎになる。そこで、成績は八階生だが、九組でも授業を受けられるように手配してやった。九組で受けるのならば、さっさと申し込むこと。
十一月末にある魔術特訓合宿は最優秀クラスに推薦しといてやる。
ついでに、あのレポートはなんだ?』
そこまで読んでヒッ、と喉を鳴らす。見当違いだったのだろうか。不安に思いながら最後の一文を見る。
『あんな画期的なレポート、卒業生でも書けねぇやつばっかだぞ。勝手だが学会に提出しておいた。上手くいけば、魔術特訓合宿と合わせて昇格だ。お前はいちいち手続きが面倒だからさっさと卒業しやがれ』
べた褒めだった。最後に早く卒業しろと書かれている理由は『面倒だから』だが、『上手くいけば』とも記載されている。応援してくれていると考えてもいいだろう。
「..................ふふっ」
思わずにやけて、何度か読み直す。ムズムズとした感覚に、意味もなく口を動かす。途中でそういえばもう一つあったな、と思い出してそちらも開封した。
そして筆跡に驚愕する。
「これ............っ?!」
手紙はかなりの悪筆で書かれている。よく見ると分かる、やや右上がりの文字だ。ミラはこの文字を知っている。
――<泡沫の魔術師>ドロシー・リルグニスト。ミラの元家庭教師で、上級魔術師。
「どうして、師匠から............」
セレナイト学園の生徒へ外部から手紙を送ることはできる。だが、あまり多く見られることではない。なぜなら、日曜日には学園を訪れて面会できるからだ。それだけでなく、緊急の連絡ならすぐに取り次いでもらえる。だから、手紙は珍しい。
ミラは何か間に人を挟みたくないことがあったのかもしれない、と急いで読み進める。体は緊張に固まっていたが、読み進めるにつれ力が自然と抜けていく。
『ミラへ。
久しぶり......では全然ないね。元気にやっていますか?入学から一ヶ月半ぐらいかな?一緒にいた時間もそれぐらいだけど、その時より長く感じるなぁ。
今あたしが、仕事以外で珍しく手紙を書いているのは、報告したいことがあったから。あんな感じで送り出したのに報告のためだけに会いに行くのはちょっと照れ臭いし、取り次いでもらうのは何か違う気がしたんだよね。
軽く報告があります。
セレナイト学園の<従事者>のうち、ある方が亡くなった関係で、後任が決まるまでその穴をレイチェルが埋めることになりました。訓練所監督だったかな?とりあえず、一回ぐらいは顔だしてあげてね。
ここからが本題。
一二月にある学園祭で、新しく開発した幻術についての論文発表することになったの。参考になるかもしれないし、見学しに来てくれると嬉しいです。
じゃあまた、その時に。
<泡沫の魔術師>ドロシー・リルグニスト』
レイチェルが学園に勤務するということにも驚きつつ、論文発表することになったという言葉に目を輝かせる。
(師匠の新しい幻術......!!今すぐにでも知りたい.........っ!!)
おそらく、それは一級相当の幻術だ。初級魔術や中級魔術ならともかく、既存しているものと全く別の魔術式を作るのはとても難しい。
そして結果を出したらしい。本当に凄い人だなぁ、と息を呑む。魔法史に名前が載ってもおかしくない功績だ。
「 私も師匠みたいになれるかな」
虚空を見つめながら呟いて、ペンを握る。返事の手紙が書きあがるまで、大して時間はかからなかった。
次話投稿は、3月28日午後5時の予定です。




