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その黎明に祈る  作者: 願音
学園生活編
12/73

新しい日常で

 3月18日、136PVです。遂に1日で100PV。読んでくださっている方に感謝しております。


「............で」


「..................はい」


「ふっざけてんのっ?!」


 ミラはぶちギレた。やってられない。目をつり上げて、喚き散らす。図書館の個別自習室。ある程度の騒ぎまでは消音結界が消してくれる。


 指し示すのは、机の上に置かれた紙。その紙は赤い印でまみれている。


「調子悪かったどころじゃないよね、これ?!」


「だって分からないんだもの!!」


「『分からない』じゃない!!初級魔術でしょうがぁっ!!」


「誰も炎魔術なんて使わないわよ!!」


「私使うんだけどっ?」


 水魔術の式以外壊滅的に何も正解していない問題用紙。特に炎魔術の式はぐちゃぐちゃだった。確かに、フランツェルの水属性は炎属性と相性が悪く使うのが難しいのではあるが、ミラに言わせればこんなものは黒こげのクッキー以下である。


「まず正解なんて知らないのよ。だって、他の属性で魔術使うなんて考えたことないもの。ないでしょ?」


 悪びれもせずそんなことを言うフランツェルに目元をピクピクさせる。

 ミラが提示した条件は、五メートル先の的に魔術をあてるというシンプルなもの。例え他の属性で魔術を使うことを考えたことがないとしても、即興作成できなければ困る。


「入学初日の訓練はどうしたの.....」


 確か、ノルマとして比較的一般的とされる風、炎、雷、水、土、氷属性の初級と中級魔術のうち全部で五個達成しなければいけなかったはず。ミラは炎以外の初級魔術をそれぞれ全属性行使して、早々に寮で荷物の整理を始めていたのだが。


「嫌ね。全部水系統の魔術使ったに決まってるじゃない」


 各属性の初級魔術と中級魔術は合計して全部で五種類以上ある。あるにはあるのだが、『出来るだけ多い属性』と告げられているのだから他の属性も使用すべきだろう。

 そのうち、『自分の得意属性ではない属性』と指定されることが予想できるため、フランツェルの姿勢は非常に危ない。


「例えば......イードルさんが炎属性だったとする。敵が水属性なら、どうする?」


「............逃げるわ」


 沈黙のあとキッパリと告げられて、またイラっとしながら解説する。


「それを逃げずに対応するために、他の属性の魔術も使えるように訓練するの。敵の属性は自分には決められないから」


「でも水魔術なら、フランは誰にでも負けないわ」


 かなり勢いを失いながらも、往生際悪く繰り返すフランツェルに呆れが上回る。大して気が長くないミラは結論を出した。


(これはもう......理解させるしかないかな)



「ほら、体験させてあげる」


 かなりの怒りもはらんだ瞳でニッコリと笑いかける。ひぇ、とフランツェルの喉がひきつったような声が聞こえた。


*_*_*_*_*_*


 休日にも解放されている訓練所で職員に魔法戦用の結界を張ってもらう。

 魔法戦とは、魔力を消費した行為によって戦闘能力を競うもの。相手の攻撃によって自分の魔力が消費され、ゼロになったら負け。場合によって結界にさまざまな効果が付与されたり、勝利条件が変わったりする。ドロシーが優勝したというセレナイト学園魔法交戦大会も魔法戦用結界を使用していた。特殊な結界で、通常結界とは異なる点がいくつも存在する。


「ふふん、フランの水魔術は最強なのよ?」


「......じゃあ雷魔術で対応するから、ご自由に」


 得意気に胸を張るフランツェルに、静かに目を向ける。既に余計な感情(余計なもの)は捨てている。


 ただ静かに、冷静に自分を見つめるミラが面白くなかったのか、フランツェルはゆっくりと大きめの声で詠唱を始める。


(この詠唱は......確か、水系統上級魔術第3目)


 分析して、雷の遠隔魔術の詠唱をする。これは初級魔術だから、上級魔術よりも早く詠唱が終わった。ついで、半円球型の二級結界を短縮詠唱で発動。

 少し遅れてフランツェルも詠唱を終える。彼女の周囲に水流が生まれ、こちらに向かう。それが結界に触れるのと同時、遠隔で雷の魔術を起動。()()()()()()()()()()()()()()()()()()、攻撃する。


 ―その効果は一目瞭然だった。


「痛ぁああああああああああっ?!」


 フランツェルが悲鳴をあげてうずくまる。電流が彼女の魔術をつたって届いたようだ。

 水流の制御が乱れ、術が崩壊する。

 ミラは無表情のまま初級の水魔術を使い、フランツェルの魔力を削りきった。


「......はい、おしまい」


 魔法戦用の結界が解かれ、フランツェルが地面に座り込む。ミラは腕を組んで見下ろした。


「......実戦での色々な属性の魔術を使えることの優位性、分かった?イードルさん」


「........................よく分かりました」


 項垂れながらしゅんとした様子で頷くフランツェルに、ミラは満足して鼻を鳴らし―我にかえった。


(......あれ、私......何してるんだろ)


 もの凄くしょうもないことをしてしまった気がする。ミラが無言で考え込むと、フランツェルがすぐに笑顔を顔に浮かべた。キラキラとした目をする。


 ―これは、面倒なことが起こるときの目だ。


 その予感に口元を震わせる。



「じゃあ全属性の全魔術の式全部くれる?」



 予感は的中。指定された魔術式を全て紙に書き出すと、何枚必要になるか。


「却下。図書館で魔術総論でも探して自分で勉強して......まぁ、分からないとこあったら教えるから」


 小さく付け足された言葉に、ブンブンとフランツェルが首を縦に振る。ミラは「疲れた......」と息を吐く。


「君、すごいね」


「わあぁっ?!」


 完全なる意識外からの声に飛び上がった。反射的に炎魔法を使う。―が、予期されていたようで、結界で防がれる。


「............誰?」


 学園の生徒だった。若緑のワッペンの色からして、同じ組。新入生だろう。

 くすんだ茶髪の中、一房だけ紫がかっている部分がある。いかにも軽薄そうな笑みを整った顔にはりつけていた。


 彼はいかにも驚いた、と言いたげな顔をする。


「危ないじゃないか」


「それはごめん......だけど、結界張って近づいてきた人には言われたくない」


「フィンっ?!どうして......?」


 フランツェルが驚きの声をあげるのを聞いて、ミラはもう一度同じ問いを繰り返した。


「誰?」


 フランツェルにフィンと呼ばれた少年は右手を軽くあげた。


「僕はフィンレスト・セーラス。そこのフランツェルの幼馴染という名の監視役だよ、ミラ嬢」


 『幼馴染という名の監視役』という言葉。フィンレストの女受けしそうな爽やかな笑顔。


 それらの刺激にミラは―


「へぇ。頑張ってね」


 ―驚くでもなく、照れるでもなく、ただ平常心で返事をした。

 フィンレストが呆気にとられたかのようにまばたきをする。


「............それだけ?」


「そうだね」


「............何で?」


 一気にフリーズした彼にミラは逆に驚く。これ以外の返事は何を言えばいいのだろう、と。

 フィンレストが期待していた反応とは、「きゃぁカッコいい」か「監視役......ってどういうこと?」だろうが。ミラに求めるには少し厳しかったようだ。


「だって、イードルさんなら監視役がいてもおかしくないし」


「酷いと思うわ!!」


 フランツェルの抗議を無視してミラの言葉は続く。


「それに、一応昔から一緒にいて慣れさせてるなら『幼馴染という名の監視役』っていうのも間違ってない。あとは、なんかキザったらしい感じがしたから離れたいなって」


「最後!!最後は酷くないか!!」


 フランツェルとフィンレストが涙目で訴えてくるが、正直どうでもいいので放置する。


(早く寮に帰りたいなぁ)


 はぁ、と死んだ目で佇んでいると、フィンレストが手招きした。小声でこちらに告げてくる。


「あまりフランツェルの前で貶さないでくれないか?」


「............()()()()()()?」


 目を見開いて訊ねる。フィンレストはニヤッと笑った。実に楽しそうに。



「あぁ。()()()()()()なんだ」



「っ!!」


 ミラは目を輝かせる。恋愛事は大好物だ。恋愛小説にハマっていた時期もあった。

 ミラの中で『フィンレストを応援する』という使命が浮かび上がる。


「ぇ、え?」


 そして、動揺するフランツェルを置いて二人はガッチリと握手。


「頑張ってね!!応援してるっ!!」


「ありがとう」


「ちょっと待ちなさいな!!」


 一瞬で構築された歴戦の盟友のような雰囲気についていけなくなったフランツェルが仁王立ちで訴える。


「なんかフランが置いていかれてると思うのだけれど!!」


 必死な声に二人は目を見合わせ、何か言おうとしたところで―


「何してんだ、お前ら」


 その声に。反射的に二人は背後に攻撃する。ミラは再び炎魔法、フィンレストは雷魔法だ。

 背後にいた人物は危なげなく攻撃を避けると、「危ねぇな」と言う。いつか見た灰色髪の少年。顔は恐ろしくいいのに、口が悪い、杖を忘れた―


 そこまで思い至って、ミラは「あ!!」と声をあげる。指で少年を指す。ちなみに、自分も杖を忘れていたことは既に記憶から抹消していた。


「杖忘れた子!!」


「うるせぇ間抜け女!!」


 少年は顔をしかめて暴言を吐く。今度はフィンレストまで呆気にとられていた。


「入学できたんだね」


「当たり前だろ馬鹿か」


「何点ぐらいとれたの?」


「確か二〇三点」


「わ、すごいね」


「なんかそっちの子刺々しい雰囲気なのに会話が成立どころか弾んでない?!」


 フランツェルのツッコミを他所に、二人の会話は弾む。昼食準備終了の鐘が鳴り、いつの間にか食堂に向かって軽口を叩き合いながら歩き出す二人を見て―


「......行くか」


「......そうね」


 フランツェルとフィンレストも、少し後を遅れてついていくのだった。


 次話から、4月初旬ぐらいまでできるだけ毎日更新したいと思います。ある意味、作者大出血サービスですね。これからもスキマ時間にでもお付き合いくださいませ。


 それと、3月19日、合計五〇〇PV達成です。これからもモリモリ頑張ります。


 なお、次話投稿は3月21日日午前5時の予定です。

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