月が落ちる
注意:百合ではないですが、読者さんの自由に読んでもらって大丈夫です
〈 初夏 〉
ミーンミンミンミーンミーンミンミンミーン
まったく朝の8時だというのに、家の前から蝉の大合唱が聞こえうんざりした。
ちょっと前までは雨が降っていたのにとうらめしそうに思い、このあいだ梅雨明けしたとニュースの人が言っていたのを思い出した。
雑にローファーを履きながら、気怠けに行ってきます〜と母に言う。
奥から母の、お弁当ちゃんと持ったー?という声が聞こえる。
持ったーと大きな声で返し、私はいつものように家を飛び出した。
白河町という長野県の奥の方のこんな田舎だから通学路には田んぼや畑が一面に広がっている。
空を見上げても見渡す限りどこもかしこも山山山だ。
自然が豊かでいいわねーなんていうおばさんもいるけど、私はただ田舎なだけだと思う。
舗装もされてないんじゃないかという道を学校まで片道45分も歩き、帰る時もただひたすらまた45分歩く。
ワイヤレスイヤホンが欲しいのだがあいにく万年金欠のため、有線の古いイヤホンをスマホに挿した。
イヤホンさえしてしまえばこんな山奥の僻地の小さな町でも、初夏の生ぬるい風でも、清々しく感じられる。
早くこんな町を出て大学は東京に進みたいと思っていた。
それなのに、ある日母に東京に行って何をしたいのかと聞かれた時、すぐには答えられなかった。
学校の成績は中の上
得意な科目はないが苦手な科目もこれと言ってなく、体育は座学じゃないから楽でいいなーと言う程度。
担任にもう二年の夏なんだから早く方向性を決めろと散々言われている。
昔っから自分の好きなことがなく、中学の時も周りに流されて周りとおんなじ部活に入った。
高校も親の流されるままに入り、なんとなくめんどくさそうと言う理由で部活は入っていないままだ。
自分が本当は何をやりたいのか何が好きなのか分からない。
同じ時間、同じ場所、同じ服で、ずっとこれからも毎日こんな退屈な生活が続くと考えたらおかしくなりそうだ。
あー朝から嫌なこと考えた忘れよ、とスマホの音量を上げた。
いつも通り朝の教室はガヤガヤとしていた。
その中でも一際人だかりができている机がある。
藤白皐月の机だ。
彼女は昔から続くここら一帯の大地主の孫で蝶よ花よと大切に育てられた藤白家の一人娘。
彼女の両親は彼女が幼い頃に事故で亡くなってしまい、今は母方の祖母と2人で暮らしている。
この白河町には神体山と呼ばれる山があり、なんでも神様が宿っているらしい。
そこにはお社があり、代々藤白家の人間が宮司を務めている。
新年にその年の豊作を祈る祈年祭と、秋にある収穫祭は大いに盛り上がる。
特にこの秋の収穫祭の時だけは県外からも観光客が大勢訪れる。
こんな田舎の数少ない貴重な収入源で、祭りの時だけは桃源郷のような異国情緒の雰囲気に包まれる。
町中で行燈やのぼりが飾られたり、お社のある藤白家の社殿に行き、奉納する作物やお布施を持っていく。
藤白家の娘は白い巫女装束を着て、神に祈りを届けるために鎌倉時代から続くという伝統の神楽を舞うらしい。
私は今まで一度もその舞を見に行ったことはないが、ため息が出るほど美しいらしい。
彼女が町を歩けば住民が「藤白のお嬢さん」と声を掛けるし、まるで彼女が生き神であるかのように扱う。
町中の人が彼女を慕い、崇め奉っており、それが当たり前のような空気感だ。
町全員で一種の宗教活動をしているようで、私はその光景に言いようのない気持ち悪さを覚えていた。
自分だけが彼女を慕わないせいなのか、周りから変人扱いされいつも疎外感を感じていた。
教師でも同じだ。
他の生徒は呼び捨てで呼ぶのに、彼女に対してだけ「さん」をつけ、しかも敬語で話す。
当の本人も常にニコニコとしていて人当たりがよく、誰にでも好かれる。
成績もいいらしく、よく掲示板に成績優良者として名前が載っているのを見かける。
天は彼女二物も三物も与えたようで、背が高く、スタイルがいい。
ダークグレーのスカートから伸びたスラリとした長く細い脚に何人の男子が釘付けになっていることか。
それでも彼らにとって彼女は高嶺の花なのか、実際に告白する人は少ない。
本当に自分と同じ制服を着ているのかと疑うほど、制服がよく似合う。
真っ白なブラウスは彼女の清潔で純粋な美しさを底上げし、濃い赤の紐リボンは肌の色に映え、より一層華やかさに彩りを加えている。
艶やかな長い黒髪はサラサラと風に揺蕩い《たゆたい》、ニキビなど知らない肌は雪のように白い。
色素の薄い瞳は静かな湖のように澄んでいて、光に透けているような輝きを放つ。
形のいい唇にほんのり桃色に色づいているのが、彼女がただ美しいだけでなく、嫌味の全くない清楚な色気もある印象を抱かせる要因だろう。
以前は彼女の美貌に嫉妬して心無い言葉をぶつける者もいたが、人を惹きこむ不思議な魅力に取り憑かれ、彼女を悪く言う者はもういなくなった。
藤白皐月は360度誰がどこから見ても完璧でこれ以上の跡取り娘はいない、
私には彼女がそう見える様に振る舞っている様に見えた。
彼女の笑顔の裏に、壊れかけの時計に何度も修理を行い、必死に動かそうとしているような脆さを感じた。
そんな彼女のことが私は苦手だった。
放課後
珍しくひとりで教室に残る彼女を不思議に思い、ふいに声をかけた。
「帰らないの?」
彼女は少し驚いたような嬉しそうな顔をした後、すぐに元通りの柔らかな顔に戻し答えた。
「迎えの車を待っているの」
そういえば、と彼女の家は少し遠いからと毎日車で送迎されているのを思い出した。
「そうなんだ、じゃあね」
「あ、そうだ。ちょっと私と話そうよ」
「いいけど、どうして?」
彼女は一瞬考えた後、愛らしい笑顔で答えた。
「私、南と友達になりたいってずっと思ってたんだよ」
「え、」
笑顔の奥に何もかも見透かしたような、何かを訴える様な目があった。
その目は真っ直ぐと私をとらえ、その引き込まれそうな目の輝きに、少し私はドキリとしてたじろいた。
「あ、ごめん、私、今日用事あるんだ」
「そっか、ううん、大丈夫!」
「また今度話そうねー」
特に用事があるわけでもないのに、用事があるなんて咄嗟に見え透いた嘘を言ってしまった。
逃げる様に足早に帰る際、目の端で彼女の長いまつ毛が伏せられた悲しげな表情をとらえた。
私は彼女のその顔が忘れられず、胸にちくりと少し罪悪感が残った。
それから数日後の晩、電話が掛かってきた。
非通知だ
出ないほうがいいかなと思いつつ電話を取ってみる。
「急にごめん」
聞き覚えのある、意外な人物の声だった。
「え、皐月?」
「うん」
「どうしたの?」
しばらく沈黙が続き、もしもしと言いかけた時、今にも泣き出しそうな弱々しい声が聞こえた。
「私を、助けてくれる?」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は両親を起こさないようにこっそりと家を飛び出した。
急いでいたため何も羽織ってこなかったことを少し後悔した。
流石に夜はまだ肌寒い。
彼女の家はここから少し遠くて、神が宿っているという神体山の中腹にある。
私は先を急ぐため走り出した。
しばらく走っているとだんだん体が温めらていき、頬にあたる夜風にもう夏の香りがした。
彼女の家に着くと壮厳な屋敷の入り口前に彼女が立っていた。
どうしたのだろうか、酷く顔色が悪く、幽霊のように真っ白だ。
それに泣いたのだろうか、涙の跡があり、少し目が充血している。
それでも、いや、それによって、よりゾッとするような、こちらが尻込みしてしまうほどの美貌が際立っていた。
しかし、何より目についたのは彼女の着ている服だった。
レースがふんだんに使われた彼女の真っ白なシルクのネグリジェが、赤黒い血で染まっていた。
「ありがとう」
「こんな時間に来てくれて」
「電話、驚いたよね、ごめんね」
「ひとりじゃ無理そうだったから来てくれて助かった」
彼女はいつもの天女のような美しい微笑みをしていながら、声には感情が全くこもっていなかった。
私はその異様な姿に震えが止まらなかったけど、不思議なことに頭は冷静に動いていた。
入ってと言われて私も屋敷の中に入った。
今は彼女しかいないのか、それとも夜だからなのか、だだっ広い屋敷の中はシーンと静まりかえっている。
明かりはついておらず、今日が満月だったおかげでかろうじて前が見える程度の明るさだった。
飾られている豪華な掛け軸や置物が異様な空気を放ち、初夏らしく生けられているカサブランカがなぜか不気味に感じられ、鳥肌が立つ。
かなり奥まで進むと中庭に出て、渡り廊下を渡る。
時折中庭から鹿おどしの竹を割ったような音が人のいない屋敷に響き渡った。
屋敷の一番奥の方まで進むと他の建物よりも一際高潔な雰囲気を纏う離れにたどり着いた。
「ここだよ」と言われ、離れの部屋に入る。
どうやらここは祭りのための神楽を練習する堂ような場所らしく、歌舞伎の能の舞台に作りが似ている。
壁に紅白の天幕が張られ、帳が風によって舞うように揺れ、月光に透き通っている。
奥の方には神楽で使う道具や着物がしまわれている桐箱や漆喰の櫃や箪笥があった。
ふと下を見ると、格子の窓から入り込んだ月明かりに照らされて黒々とした血液が黒曜石のように光っているのを見つけた。
そして、その血の池地獄の上に着物を着た老婆が横たわっていた。
そばにはその老婆を殴った凶器だと思われる重そうな置物が転がっている。
心臓の流れがドクドクドクとだんだん早く波うち、変な汗が額に滲み出てきた。
「死ん、で、いる、の?」
掠れがすれな声で聞く。
「うん」
「この人うちのおばあちゃん」
「とにかく死体を隠すのを手伝って欲しいの」
と彼女が髪を耳にかけながら冷たい声で淡々と答えた。
よく見ると、手にも彼女の頬にも血がついている。
私はまだこの状況が分からず、彼女の言うことを理解できなかった。
それなのになぜか胸が高揚し、退屈な日常が覆る最高に面白いことが始まったんだと心が踊っていた。
私の「わかった。協力する。」と言う声に彼女は満足そうに微笑んだ。
まず彼女は廊下にひいてある長い茣蓙を持ってきて死体を包んだ。
それからふたりで死体を裏庭から持ってきた台車に乗せ、彼女の家の裏から山の奥の方に続く道を進んでいく。
草木が伐採されているだけの道だったため、台車がガタガタと絶えず鈍い音を発する。
普段、昼間には野花が咲き、清流や小鳥たちの歌音が聞こえる明るい山も夜になると全然雰囲気が違う。
持ってきた懐中電灯以外には明かりが全くなく、ただ暗闇が広がっており、私はなるべく後ろを振り返らないようにした。
意識のない人間ひとりは想像以上に重く、思いの外時間がかかった。
結構山の奥まで進んだ後、「よし、ここにしよう」と彼女が足を止めた。
「どこに隠すの?土の中?」
「ううん、そこの洞窟の中」
「え?」
「ほら、後ろにあるでしょ」
後ろに振り返っても大きな岩しか無い。
「え、どこのこと?」
彼女はさっきの大きな岩のそばに行き、ここだよーと言いながら岩の後ろに回る。
すると、彼女の姿が見えなくなってしまった。
焦った私をからかうように「びっくりした?」と言う声が聞こえた。
すると岩の影から彼女がひょっこり出てきた。
「ここ、前からはただの大きな岩に見えるんだけど、ここから入るとなかに洞窟があるんだよ」
「ちょっとこっちきてみてよ」
言われるままに岩の中に入ると中は空洞になっていた。
意外と奥まで続いているように見える。
彼女が懐中電灯で奥の方を照らすと、この洞窟はただの洞窟ではなく、鍾乳洞であることがわかった。
鍾乳石が天井から氷柱のように伸び、床には石筍があちらこちらにあった。
奥で水音のような音が反響している。
洞窟の中は暗い外とはまるで別世界のようでその神聖な空気に、自然と目を奪われていた。
私は気づいたら「綺麗」と声を漏らしていた。
「ね、綺麗だよね」
「ここ私のお気に入りの場所なの。」
「小さい頃にこの場所をお父さんに教えてもらって、それからずっと私の秘密基地になった」
「嫌なこととか悲しいことがあるとこっそりここにきて泣いてたなあ」と懐かしそうに語る。
「この洞窟の奥に隠そう」
「ここなら私たち以外誰も知らないし、ここは鍾乳洞で何もかも酸性だから骨の分解も早いから安心だよ」
入り口が小さいため、死体を代車から下ろしふたりで担いで運ぶことになった。
途中何度か滑りそうになって死体を落としてしまった。
茣蓙から飛び出た足にはもう血が通っていないようで、真っ白だった。
私は見なかったふりをしてひたすら奥まで進んでいった。
運び終わった後簡単にお墓を作り、彼女は死体を包んだ茣蓙の上に道中で採った野花を並べた。
その際、彼女が何か言ったようだったが、疲労困憊していて聞き取れなかった。
家まで戻って帰り、血痕を綺麗に片付けたあと、彼女がバカラのグラスを二つ持ってきた。
「お酒、飲もうよ」
「南も疲れたでしょ、お疲れ会しようよ」
「私、ちゃんとお酒飲んだことないんだ、だから、、」と私が気まずそうに言う。
「え、飲まないの?」
「これは私の一番好きなやつなの」
「南にも好きになって欲しいな」
上目遣い気味にあまりに可愛らしい表情で言われたので、断れるわけなかった。
グラスには大きなダイヤの原石のような氷が1つずつ入っていて、綺麗な琥珀色の少しとろみのある液体が入っていた。
グラスを少し傾けると、氷がカランと軽やかな音を立て、バカラのグラスに馴染んでいた。
以前父のお酒を一口飲んだ時、苦すぎて大人たちは何がそんなに美味しいんだと思ったが、乾いた喉を流れるのが心地よく、今まで飲んだどんなものよりも美味しかった。
もう日付は変わったのだろうか、月はもう西に傾いていた。
酔いが回ってきたのか、なんだかポカポカとしてきて、疲れが和らいでいく感じがした。
私は、ずっと疑問に思っていたことを思い切って聞いてみた。
「今日、どうして私だったの?他に皐月に協力してくれそうな人いっぱいいたでしょ?」
「うーんそうだなあ」
「南、私のこと苦手だったでしょ?」
「え?そんなこと」
「いいよ、正直に言って」
「ーうん、ちょっとだけ」
「知ってた」
「だから南に電話したんだよ」
「他の人とは違うから」
「他の人は私を神様かなんかと勘違いしてるんだよね」
「もし私が殺人したなんて知ったら、どうなっちゃうか」
「南はちゃんと私を『人間』として見てくれてた。南だけなんだよ、身内以外で私を呼び捨てにするの」
「私を見る南の目が他の人とは違ってて、この人なら私の気持ち理解してくれるかもって思ってた」
「だからこのあいだ南と話そうって思ったんだ」
「振られちゃったけどね」
「ごめん」
「ううん、予想してたから」
「この町はおかしいよね」
「1番の張本人が何言ってんだって思うかもしれないけど、この町はとっくに崩壊してる」
「覚えてる?確か4、5年前だったと思うんだけど」
「私に初めて生理が来た時のこと」
「次の日にはなぜか町中のみんなに知れ渡っていて、みんなお赤飯を炊いて私に持ってきた」
「お祝いの言葉を沢山言われたけど、私には苦痛でしかなかった」
「その中には、クラスの男子の親もいっぱいいた」
「もう恥ずかしさとか超えて呆れたよ」
「この町の人はもう私を『人』だなんて思ってないんだろうね」
自虐的に話す彼女に私はかける言葉がみつからず、言葉に詰まった。
彼女のこの細い小さな肩にどれだけの重りがついていたことか、彼女がどれだけ感情を殺して戦ってきたか私には想像できそうもない。きっと彼女はこれ以上傷つきたくなくて、自分を守るために必死に本音を隠し、みんなに求められる完璧で聖母のような『藤白皐月』を演じようといつも笑顔だったのだろう。
しばらく静寂が続いた後、ふいに彼女は縁側から立ち上がって、眼下に広がる町を見渡した。
私も彼女に続く。
まだ町は眠っていて、田舎の町にほとんど明かりはなかった。
そのおかげで空一面に大粒の星が、広く深い藍色の空に眩い光を放っていた。
「この星空、金平糖みたい」
「あー、確かに」
「私、この町で1番綺麗だと思うものはこれかなあ」
「瑠璃色がすっごく深くて、大きくて、どんなことでもなんでもなかったことにしてくれそう」
「星空を見ている時だけが、深呼吸できてる気がする」
そう言って空を見上げる彼女の艶やかな髪が深い瑠璃色の夜空に溶け込んでいて、瞳にはキラキラとした宝石のような星粒が映り込んでいた。まるで世界の全ての光が彼女の瞳の中に集結しているようだった。
私は心臓をぎゅっと掴まれたように彼女から目が離せないまま、心臓が激しく脈打つままに口に出した。
「皐月、私はどうして皐月が自分のおばあちゃんを殺したかなんて聞かない」
「聞いてもそれはきっと皐月にしか分からないことだと思うから」
「今夜のこと、私は誰にも絶対言わない」
一度息を大きく吸って言葉を続ける。
「皐月、どこかに逃げよう」
「え?」
「そんなの無理だよ」
「無理でもいい、私と一緒に私たちを誰も知らないところまで行こう」
「でも」
私はここに居続けたら皐月はダメになってしまうと思った。
このまま残っても大人たちに押しつぶされて、『藤白皐月」がなくなってしまうだろう。
そんな彼女の姿を見ていたくはなかった。
「私たちはもう今夜会った時から運命共同体だよ。生きるも死ぬも、私は皐月と一緒がいい。」
「それに私、皐月には皐月のしたい事をして、好きなように話したりして欲しい。」
「皐月の人生は、こんな町の人たちのためのものじゃない」
「皐月は皐月が生きたいように生きるべきだよ」
「行こう」
もう感情がぐちゃぐちゃで自分でも何を言っているのかも分からないまま彼女に向かって手を伸ばした。
それでも、ふたりならなんでも大丈夫のような気がしていたし、それにこの深い空がわたしたちを隠してくれると思った。
彼女は私の手を力強く取った。
彼女の瞳に溜まった涙がふたりの繋いだ手の上にこぼれ落ちた。
涙で縁取られた彼女の長い睫毛と瞳が星の輝きで煌めき、紅潮した頬が月の輝きに照らされている。
それは、今まで見たどんな彼女よりも美しく、脳天を揺さぶられるような衝撃を放っていた。
fin
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