第97話 馬車の準備ができる
ドアがノックされたので、フローラはそれに応えます。
すると、女性職員の声で馬車の順部が出来たと伝えられます。
ドアをノックする音がして、トリシャ様は、相変わらずわたしの後ろに隠れます。
わたしはまたかと思いますが、ノックがあったので
「ご用は何ですか?」
と尋ねます。
「出発の準備ができましたので、お迎えにあがりました」
と女性の声で答えます。
「わかりましたので、中へ入ってください」
わたしが中へ入るように言いますと
「では、失礼します」
と先ほどの女性職員が入ってきます。
「峠へ行く準備が出来たのですね」
わたしが確かめますと
「はい、馬車の準備ができました。ただ、このような場所にある町ですので
フローラ王女殿下がお乗りになるような、馬車ではないと思います」
女性職員は峠へ行く馬車の準備はできたが、わたしが乗るような馬車ではないといいます。
「構いませんよ。峠へ歩いて行かないだけで、十分です」
と微笑みながら伝えます。
「フローラ王女殿下がそうおっしゃるなら、安心しました。
ところで、峠の上はここより寒いのですが、セーターをお召しになっていますね。
ただ、それだけでは寒いと思いますので、防寒になるものをご用意しております」
女性職員は、防寒着を用意していると、わたしに伝えます。
「ありがとうございます。わたしの防寒着は用意していません。
しかし、トリシャ様は先ほど購入した物がありますので、わたしの分だけあれば良いですよ」
トリシャ様の防寒着はリタさんのお店で購入しましたので、用意するのはわたしの分だけと伝えます。
「わかりました。ただ、フローラ王女殿下に合う、女性ものがあるかどうかですね……」
女性職員は、わたしを見てこう言いますが、胸元を見て言ったわけではないようです。
「宿に戻れば、防寒着はありますが、時間がないですし、サイズが合えば何でも良いですよ」
わたしはこう言いますと
「わかりました。防寒着は馬車に用意してあります。では、馬車へ向かいましょう」
女性職員は承諾し、わたしとトリシャ様を馬車に案内します。
「そうですね」
わたしが立ち上がりますと、背中に隠れていたトリシャ様は先ほど買った物を持って立ち上がります。
そして、立ち上がっても、トリシャ様はわたしの背中に隠れます。
「お茶のカップと暖炉の火は他の職員が処理しますので、気にしないでください。それでは、ご案内します」
女性職員はこう言って、わたしたちを馬車まで案内します。
「わかりました」
わたしもその後についていき部屋を出ますが、トリシャ様はわたしの背中に隠れながらついてきます。
「トリシャ様、隠れることはないと思いますよ」
わたしが小声で言うと
「やっぱり、姫様たち以外の人間は苦手だよ」
とおっしゃいます。
「でも、店の方や宿の方には、普通にお話をしているのではないですか」
トリシャ様は人間が苦手と言いますが、立ち寄った宿やお店では普通にお話をしています。
「それは、必要だからしてるんだよ。でも、さっきのお店の人間の女みたいなのは特に苦手なんだよ」
トリシャ様は必要だから、話をしているのであって、リタさんみたいな方は特に苦手だそうです。
「そうでしたか。しかし、トリシャ様もよいご年齢なので、子供みたく、わたしの背中に隠れるのはやめてもよいと思いますよ」
わたしは笑いながらこう言いますと
「もう、また姫様はあたしをからかうんだから」
とむすっとした声でおっしゃいます。
「事実を言ったまでですよ。ただ、わたしはこれはこれでかまいませんよ」
わたしはこう言いますが、やはりわたしの背中に隠れるトリシャ様はかわいいです。
「むー、言っていることが真逆で、どっちかわからないよ。
ただ、姫様が変なことをかんがえてるのは、なんとなくわかるよ」
トリシャ様はこうおっしゃいますが、顔は見ていませんが、声色でわかるようです。
ただ、わたしはあくまでもトリシャ様がかわいいだけで、変なことは考えていません。
「変なことは考えていませんよ」
わたしは一言だけ答えます。
「そうかな……別にいいけど……」
トリシャ様は納得していませんが、これ以上は話を続けても
わたしがはぐらかすだけとわかったのか、この話はこれで終わりました。
わたしとトリシャ様は女性職員の後をついていき、庁舎を出ます。
庁舎を出ますと、2台の馬車が用意してあり、町長と職員と思われる男性が
わたしとトリシャ様を待っています。
「町長、フローラ王女殿下とトリシャ様をご案内しました。」
「案内をしてくれて、ありがとうございます」
町長は女性職員にお礼を言います。
「これが役目ですので。ところで、防寒着ですが、トリシャ様はご自分の物がありますので、
フローラ王女殿下の分だけでよろしいそうです」
女性職員は、防寒着のことを町長に伝えます。
「そうでしたか。後は私たちがしますので、下がってください」
「わかりました。それでは失礼します」
女性職員はわたしとトリシャ様に頭を下げると、去っていきます。
「王女殿下、お寒いと思いますので、先に馬車にお乗りください。
防寒着のお話は、先ほどの職員がしたと思いますが、馬車の中で確かめてください」
町長はまずは馬車に乗るようにと言います。
「わかりました」
わたしが了承しますと
「みすぼらしい馬車ですが、このような町ですのでお許しください」
と町長は馬車の扉を開きます。
「お気になさらないでください。移動できれば構いませんよ」
わたしは女性職員に言った言葉を言いながら、馬車に乗り込みます。
すると、その馬車はみすぼらしいどころか、しっかりと手入れがされています。
そして、座席も王都からここまで乗ってきた馬車と同等のものでした。
お読みいただきありがとうございます。
トリシャはフローラの背中に隠れるのが、癖になっています。
ただ、フローラの身長155㎝、トリシャは145㎝と言う程背が高くはないです。
でも、トリシャと比べたら背が高いので、フローラの背中に隠れます。
町長はみすぼらしい馬車と言いますが、ちゃんと手入れがされた馬車です。
調度品や茶葉など、山の中の町なのに、質の良い物が揃っています。
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