第96話 お茶とセーター
この作品はカクヨムに投稿した物です。
フローラとトリシャはお茶で一服つきます。
お茶を飲みながら、トリシャがフローラの防寒着の話をします。
女性職員はテーブルにお茶を置きます。
トリシャ様はわたしの後ろに隠れていますが、先ほど言ったことは
女性職員には聞こえていないと思います。
「トリシャ様、聞こえていないと思いますので、隠れることはないと思いますよ」
わたしがトリシャ様にこのように言います。
「そうだとしても……」
トリシャ様はバツが悪いので、わたしの後ろに隠れているようですね。
「お茶が冷めないうちに召し上がってください。準備の方は間もなくできますので、お待ちください」
女性職員はこう伝えると、頭を下げて部屋を出ていきました。
「トリシャ様、職員は出ていきましたよ」
「うん、わかった……」
トリシャ様は、わたしの後ろから出てくると、向かいのソファーに座り、お茶を手にします。
「冷めないうちに飲まないとね」
とおっしゃると、お茶を口にします。
「そうですね、冷めないうちにいただきます」
わたしも、お茶を口にしますが、はちみつが入った少し甘めの紅茶でした。
「少し甘めですが、紅茶は温まりますね」
わたしはこう言って、ふうっと一息を吐きます。
「あたしはこれぐらい甘い方が好きだよ」
わたしには少し甘めですが、トリシャ様にはちょうど良い甘さのようです。
「わたしには少し甘めではありますが、おいしいですね。
こう言っては何ですが、良い茶葉を使っています」
山の中の宿場町なので、茶葉は良いものではないと思っていました。
しかし、風味と程よい苦み、そしてはちみつの甘みとは違う、甘みを感じます。
「あたしは紅茶の良し悪しはよくわからないけど、おいしいのはわかるよ」
トリシャ様はこのようにおっしゃって、紅茶を飲み干します。
わたしも残りのすべて飲みますと、カップを置きます。
「ごちそうさまでした。身体が温まりますね」
甘い紅茶を飲んで、身体が温まりました。
「おいしかったよ、ごちそうさま」
トリシャ様も満足したようです。
「お茶を出してほしいと、おっしゃっていましたから、良かったですね」
わたしは少しからかうように、トリシャ様にこう言います。
「姫様、勘弁してよ。あたしだって冗談で言っただけだから」
トリシャ様は困り顔をしています。
「冗談ですよ。これからさらに山の上に行きますので、身体が温まってよかったですね」
これから峠へ向かいますので、身体が温まるのはよいですね。
「そうだね。でも、姫様は山の上へ行くのに、着るものがあるの?」
トリシャ様が、着るものがあるか尋ねますが、わたし自身の防寒着を忘れていました。
元々、トリシャ様の防寒着の買い物でしたので、峠に行く予定はありませんでした。
なので、わたしは薄手の上着しかありません。
これだけでは峠の上では寒いと思います。
しかし、トリシャ様へのプレゼント用に買った、セーターがあります。
「先ほど店で、買ったセーターがありますので、それを着ます」
わたしがこう答えますと
「それって、あのぶかぶかのセーターだよね」
わたしの言っているセーターが、あのセーターだとトリシャ様は気づきます。
「ええ、それです。本来は……いえ、なんでもありません。
わたしには多分、ちょうど良い大きさだと思います」
ソファーに先ほど買っておいたものを置いてあります。
わたしは、袋からあのセーターを取り出します。
「試しに着ておきましょう」
わたしは薄手の上着を脱ぎますと、セーターを着てみます。
セーターは問題なく着られましたが、胸元にあまり余裕がありません。
ただ、きついわけでもなく、袖も裾もちょうど良い長さなので問題ありません。
「少し胸元に余裕がありませんが、問題はありませんね」
わたしがこう言いますと
「そうだね」
とトリシャ様が棒読みで言います。
「トリシャ様、どうしたのですか?」
わたしが尋ねますと
「姫様、女性の胸の大きさは関係ないよ」
とトリシャ様が答えますが、これで察しがつきました。
「そうですよね」
わたしは一言だけ答えると、この話はこれ以上続けないことにします。
「何を食べたら大きくなるのかな……」
トリシャ様は呟きながら、ご自分の胸元に手を当てています。
(気にしているようですね……)
トリシャ様の胸は、つつましいですが、それがいいんです。
一番年上なのに、身長も小さく、かわいらしいのがトリシャ様の良いところなのです。
エルフも人間と同じで、体型は個人差があります。
わたし自身は、トリシャ様以外のエルフを、あまり見たことはありません。
ありませんが、女性で身長が高いエルフもいますし、胸が大きいエルフもいます。
なので、あくまでも個人差であり、エルフが全てトリシャ様のような体型ではありません。
「人間もそれぞれ体型が違いますので、気にすることはないと思いますよ」
わたしはこうフォローします。
「それは、わかってるよ。ただ、姫様のそれは……」
トリシャ様はこうおっしゃると、わたしの胸元を凝視します。
「あまり見ないでくださいよ」
さすがに凝視されますと、トリシャ様でも恥ずかしいです。
「そうなんだ。胸は大きくても、小さくても凝視されると恥ずかしいんだね。
よかった、よかった、うんうん」
トリシャ様は頷いて、何か納得したようですが、気にしないことにします。
そして、この話題はこれで終わりです。
「それにしても、まだ準備に手間がかかるのかな。早く行きたいよ」
トリシャ様はつぶやきます。
「トリシャ様、お茶のこともありますから、口にしますとそのとおりになりますよ」
わたしは先ほどのお茶のことをからかいます。
「姫様やめてよ……」
トリシャ様はまた困った顔をしますが、それと同時にドアをノックする音がするのでした。
お読みいただきありがとうございます。
元々はトリシャの防寒着を買うのが目的なので、峠へ行く準備はしていないです。
トリシャは買った物がありますが、フローラにはトリシャのプレゼント用のトリシャではぶかぶかの
セーターしかないです。
セーターはフローラだと胸がちょっときつめになるものの、サイズ自体は問題ないです。
紅茶ははちみつ入りの紅茶で、フローラにとっては少し甘めでも、トリシャにはちょうど良いです。
砂糖はないので、甘味ははちみつが主な甘味料となります。
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