第79話 宿の食事
この作品はカクヨムに投稿した物です。
フローラはトリシャと入浴を済ませると、食堂で食事をします。
わたしとトリシャ様は入浴をすると、食堂でトリシャ様とテーブルを挟み
向かい合いながら食事をいただきました。
この旅の食事は宿の食事なので、普段城で食べている物と違います。
食事は質素とは言いませんが、かと言って豪華と言う訳でもありません。
各宿もできるだけ良い物を出すように努力しています。
この宿の料理も、山でとれるものをふんだんに使った料理を用意していました。
「きのこ、川魚、畑でとれた野菜などですが、美味しいですね」
わたしは素朴ながら、地の物で作った料理を美味しくいただきました。
「おいしいけど、エルフの森で食べるものと一緒だよ」
トリシャ様はエルフの森の食べ物と同じだとおっしゃいますが、
こうおっしゃいつつも、おかわりをするぐらいたくさん食べていました。
「そうおっしゃいますが、何度もおかわりをしてましたよね」
わたしはトリシャ様をからかうようにいいますと
「魔法を使ったから、お腹が空いてるからだよ。ま......味は良かったよ」
と誤魔化します。
(200年経てば変わるとおっしゃっていましたが、この部分は変わりませんね)
先程は200年経てば変わるとおっしゃっていた、トリシャ様ですが
食べ物に関することに関しては、変わっていませんね。
「確かに、素朴な味でしたが、素材が良いので美味しかったですね」
「姫様がおいしいんだから、あたしもおいしいよ」
「そうですね」
わたしが美味しくいただきましたので、トリシャ様にとっても美味しいですね。
「料理のお話はここまでにしまして、アルニルとは仲直りできそうですか」
わたしは話題を変えますが、トリシャ様は
「イザベラと話したけど、アルニルも熱が下がって元気になれば大丈夫だと言ってたよ」
と答えます。
「熱と疲労からですから、回復すればアルニルも謝罪を受け入れると思いますよ」
「だといいけど、あたしもちゃんと謝るよ」
トリシャ様は頬を染め、少し照れながらちゃんと謝るとおっしゃります。
「今晩はゆっくり休んで、明日の様子を見てから謝罪しましょう」
「あたしも今日は疲れたからそうするよ」
トリシャ様も魔法を使いましたので、お疲れのようです。
「今日は戦いもありましたので、ゆっくり休みましょう」
山賊との戦いもありましたし、この先はもう1つの峠を越えますのでゆっくり休みましょう。
「姫様は何もしてないけどね」
トリシャ様はわたしをからかうように言いますが、事実なのでわたしは
「そうですね」
と苦笑いをしながら答えます。
「冗談だよ」
とトリシャ様はニヤニヤとしています。
(実際にわたしは戦っていませんからね……)
今回の山賊との戦い以外、危険な事はありませんでした。
ただ、最初の旅も、わたしは戦えませんでした。
「わたしも戦えた方が良いのでしょうか」
わたしがつぶやきますと
「姫様は無理に戦う事はないよ」
とトリシャ様が笑いながらおっしゃります。
「聞こえましたか……」
わたしは小声でつぶやいたつもりだったので、聞かれてしまい恥ずかしいです。
「あたしは耳がいいからね。この距離なら聞こえるよ」
とおっしゃりますが、前世の記憶をたどりますと確かにトリシャ様は人間よりも耳が良いです。
「そうでしたね、忘れていました」
わたしはトリシャ様の耳が良い事を忘れていました。
ただ、良いといいましても、人間の耳の良さより少しいいほどではありますが。
「といっても、人間よりちょっといいほどだからね」
「そうでしたね。ただ、少し遠くの音まで聞こえますよね」
「森なら、エルフ特有の集中力と音の聞き分けが出来るけど、街中とかだと人間とあまり変わらないよ」
「でも、わたしのつぶやきは聞こえましたよね」
わたしがこう尋ねますと
「さっきも言ったけど、テーブル程度の距離しかないからね。
あと、姫様の声が姫様が思ってるよりも大きかっただけだよ」
トリシャ様はテーブルほどの距離なのと、わたしが思っているよりも声が大きかったとおっしゃります。
「思ったより声が大きかったのですね」
「そうだよ。人間でもほとんどが聞こえてたよ」
トリシャ様はこうおっしゃり笑います。
わたしは小声でつぶやいたつもりなので、気をつけないといけませんね。
「こんばんは、フローラ様、トリシャ」
わたしとトリシャ様が話していますと、イザベラが食事をしに来ました。
イザベラも普段の聖職者の服装でなく、部屋着姿ですが、長い髪が濡れ、顔もほんのり染まっています。
「こんばんは、イザベラ。湯上りですか?」
「はい、入浴を済ませてきました。温泉ではありませんが、良いお湯でした」
ここの湯は温泉ではありませんが、丁度良い湯加減でした。
「イザベラにアルニルの事をお聞きしたいので、座ってください」
「わたくしもフローラ様にアルニルの事をお伝えしたかったので、丁度良かったです。
では、失礼します」
イザベラもわたしにアルニルの事を伝えたかったそうです。
イザベラはトリシャ様の隣に座りますと
「熱はまだありますが、少し休めばきっと大丈夫ですので」
と教えてくれました。
「そうですか。ただ、熱が出たので少しここに留まった方が良いですかね」
「そうですね。ただ、アルニルの事なので……」
イザベラもアルニルの性格がわかっているので、熱が下がったら
平気と言って無理やりでも出発する事をわかっているようですね。
「アルニルには、わたしから休むように命令しますので」
わたしは微笑みながらイザベラに伝えますと
「そうですね。フローラ様の命令ならアルニルも仕方がないですね」
とニコニコしながらうなずいています。
「わたくしも空腹なので、食事をいただきます」
「すぐに運びますので、お待ちください」
宿の主人がこう言うと、すぐに食事が運ばれてきました。
そして、イザベラはわたしにアルニルの様子を話すのでした。
お読みいただきありがとうございます。
山の中の宿場町なので、食べる者は山の物なので
トリシャとしたら、エルフの森と似たような食材ではありますが
あれこれいいながらもちゃんとおかわりをしています。
トリシャの耳の良さは人間よりもちょっといいぐらいです。
耳の形状はエルフ耳です。
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