第57話 畑の農民
この作品はカクヨムに投稿した物です。
山賊を警戒しながら峠を下りますが、木々も減り畑も見えて来たので宿場町が近づいてきました。
馬車を進めながらトリシャ様の精霊が先行して偵察をしますが山賊の姿は見つかりません。
「山賊の姿はないね」
「そのようですね。このまま何事もなければ良いのですが」
山賊の姿は今の所ありませんが、このまま出来れば山賊に出会わずに
無事に宿場町に着けたらよいと思います。
「山賊は隠れるのが上手いからね。精霊は小さいから偵察と言っても
見える範囲が狭いからなかなか見つけられないよ。
一応、人の気配や体温を感知できるけど、これも範囲が狭いからなかなか難しいかな」
トリシャ様はこうおっしゃりますが、精霊のサイズは手の小指程しかありません。
小さい理由は大きいと魔力で発見されやすくなるためですが、元々は魔族相手だったからだそうです。
魔力を感じとれな山賊ならばもっと大きくても良いですが、魔王城で使った当時のままなので
精霊を大きくすることはできない事もありませんが、魔力の消費が増えるのと
精霊の安定性の問題がでてくるそうなので、リスクを考えて出来ないそうです。
「一応、近くにはいない様だよ」
「かなり峠を下がってきましたから、このまま無事にたどり着けそうですね」
「でも、エモリーは峠が終わる頃を狙うと言ってたよ」
「確かに行ってましたが、エモリーだったならばの話ですよ」
アルニルはこう言いますが、油断はできません。
「無事に宿場町に到着するまでは油断してはいけません」
「確かにそうですね。でも、襲うならばそろそろじゃないと木もなくなってきています」
アルニルが言うとおり周りの木々は減って来ており、かなり開けて来ています。
「どうたらこの辺りは畑がある様だよ。人の姿があるけど農民かな」
トリシャ様は精霊から送らてくる物をみながらこうおっしゃります。
「もしかしたら、山賊が農民のふりをしているかもしれませんよ」
アルニルはこう言いますが、確かに可能性はありますね。
「その可能性はありあますね。見分ける事は出来ますか?」
「流石に無理だよ。ただ、さっきの峠の景色みたく紙に写して宿場町で聞いてもいいかもしれない」
「確かにそうですね。トリシャ様お願いします」
「わかった」
「では、紙を出します」
アルニルは手持ちの荷物からメモ用の紙を数枚出します。
そしえ、トリシャ様は農民の姿を噛み写し取ります。
「日焼けの感じや手の汚れから本物の農民だと思いますね」
トリシャ様が写し取った物をイザベラが見てこういいます。
「農民の割に日に焼けていませんよ?」
同じく写し取った物を見たアルニルがこう言います。
「この辺りは高さがありますので、夏でも涼しい所の様です、
なので夏でも王都での春や秋の服装なのであまり日に焼けないと出発前に調べた本に書いてありました」
「そうですか。と言うか、イザベラもちゃんと調べたんですね」
「ええ、ちゃんと下調べをしておきましたよ」
「でも、それは山賊も一緒ではないのですか?」
アルニルは山賊も同じではないかと疑問の思いイザベラに聞きます。
「そうかもしれませんが、全く日焼けをしない訳でもありませんからね。
顔や手は完全に隠れていませんので、顔や手は日焼けをしています。
あと、農民は土を弄りますので、爪の間に完全に落ちきれなかった土の汚れが残っていますよ」
「なるほど」
イザベラの答えにアルニルが納得します。
「山賊は顔がわからない様に目だけ出しますからね。なので、顔が全く日焼けしてない方が怪しいです。
ただ、すべての山賊がそうとも限りませんが」
「いえ、それだけ見分ける所がわかれば十分です」
「そうですね、これならフローラ様でも判りそうですね」
アルニルはこう言いますが、わたしでも見分けがつきやすい特徴ですかね。
しかし、すべての山賊がそいう訳でもないので気を付けないとなりません。
馬車は峠道沿いに拓かれた畑の中を進んでいます。
するとわたしたちの馬車に気付いた農民がわたしたちの馬車に気付いて頭を下げます。
「皆さん、頭を下げていますね」
「そうですね。滅多に王族を見る事はないと思いますから、馬車を止めましょうか」
「そうですね」
わたしが馬車を止めと言ったので、アルニルが御者に言って馬車を止めます。
すると、頭を下げていた農民たちが頭を上げるとこちらへ近づいてきました。
「なんでしょうか」
わたしがこう言うと、馬車の後ろにいたエモリーが慌てて馬車の横に馬を付け
窓を叩きますのでアルニルが窓を開けます。
「何ですか一体?」
アルニルがこう言いますと
「バカ、この時間と時期に農民が農作業をして訳けないだろ!あれは山賊だぞ!」
とエモリーが怒鳴るようにいいます。
「確かに畑に作物がないですね」
畑をよく見たアルニルがこう言います。
「そういえば、この時期の収穫は既に終わっており冬の休耕時期に入っていますのでもう畑に入る事はありまでした」
「イザベラ、さっきは自信満々に農民と言ってたよね」
「間違いはありますから」
トリシャ様に指摘されましたが、イザベラはニコっと笑って誤魔化します。
「イザベラの事は後でいいですので、早く馬車を出してください」
「わかりました」
アルニルの声で御者は急いで馬車を走らせると、エモリーの声を聞いたアランも
馬車を守るようにエモリーの横に馬をつけます。
「遅いぞ、騎士様」
「気づくのが遅れたのは確かだが、それより賊が襲って来るぞ!」
「俺たちも姫さんたち逃げるぞ」
「戦わなくてもいいのか?」
「ああ、ここは逃げる方が正解だよ。多分、仲間は他にいるはずだ」
「なるほど」
「だから、エルフの魔法使いが魔法をぶっ放せる所まで行くぞ」
「ああ、わかった」
アランとエモリーも馬で馬車の後を追いかけると、ふたたびエモリーが走りながら窓を叩きます。
「多分、仲間は他にもいるはずだが、この先で道を塞ぐ算段だろう」
「エモリーが言うならそうですね」
「確かに、この先に複数の体温の反応があるよ」
「わかるのか?」
「うん、精霊で偵察をしてるからね」
「そうなのか。なのに、それでいておかしいと思わなかったのか?」
「警戒はしましたが、イザベラがもっともらしい事言うので農民と思てしまいました」
「まぁいいじゃないですか」
「そうだな、姫さんたちが農民を普段から見てる訳じゃないから、気づかなくてもおかしくないか。
それより、この辺りは開けてる上にもう畑は休耕になるから魔法を思いきりぶっぱなしてもいいぜ」
「そうだね。遠慮はいらなそうだね」
トリシャ様はすこしニヤっと笑いますが、なんか悪い事を考えているみたいです。
そして、話しているうちに馬車の速度が落ちていきましたが数人の人間が道を塞いでいたいのでありました。
お読みいただきありがとうございます。
高地なので山に雪が降る頃になると畑仕事も終わりになります。
また時間的にも昼すぎになっているので、収穫としても作業が終わっています。
しかし、フローラたちはこの事を知らないのと、滅多に王族が来る事がないので
触れあおうとして馬車を止めてしまいました。
あとイザベラも説得力があるのでみんな信用してしまいました。
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@shiizu17