第17話 後をつける者
この作品はカクヨムに投稿した物です。
王都を出発して3日目、この日にレンゼ山の麓の町に到着予定です。
麓の町までは人家もほとんどなく、宿場町もないものの茶店があるので途中、休憩のために茶店に立ち寄ります。
王都を出発して、3日目朝を迎えました。
順調にいけば、本日の夕方にはレンゼ山の麓に着く予定です。
昨日はやや予定より遅れはしましたが、それでも日がある内に到着しました。
なので、本日も何とか日が沈む前には麓の町に到着したいです。
「この先もやはり賊が出るみたいだね」
馬車の中でトリシャ様がこうおっしゃりますが、昨日もこう言ったら賊が出たので
本日も出るのではないかと心配になるます。
「トリシャ様、そういう事を言うので賊が出るのですよ」
「また出たら、今度こそあたしがなぎ倒すから」
「トリシャは単に魔法を使って、相手を倒したいだけでしょ」
「アルニル、そんなあたしをファーガスみたいな脳筋みたいに言わないでよ」
「いや、トリシャもファーガス並みに脳筋だよ」
「あたしは魔法使いだよ。それに、誰彼構わずに魔法でなぎ倒してる訳じゃないよ」
「誰彼構わず倒してる気もしますが……そう言う事にしておきましょう」
「トリシャ様は少なくとも、敵意がない相手には何もしてませんよね?」
「姫様も言うとおりだよ」
記憶にあるトリシャ様は誰彼構わずなぎ倒す訳ではなく、敵意がある相手のみなぎ倒しています。
ただ、敵だと判断した瞬間から容赦なく上位の強力な魔法を相手の強さ関係なく使いますが……。
トリシャ様がいらっしゃれば魔族以外の相手ならば簡単に倒す事が出来ますから賊が出ても安心ではありますが。
本日の予定ではレンゼ山の麓の町まで行きます。
レンゼ山の温泉街まで行っても良いのですが、温泉街はある程度山を登りますが
麓の町までは馬車では行けず、徒歩になります。
なので、宿場町に着いた頃には夕方になるので、その時間から山に登るのは
整備された道ではありますが危険な上に、体力的な事も考えて翌日にします。
馬車の進む道はさらに山深くなり、人家もも宿場町も無くなりました。
昨日は山道と言っても所々に人家がありましたが、昨日泊った街を最後に
レンゼ山の麓の町までは2,3軒の店と所々にある避難小屋だけです。
もし何かあった場合に備え、昨日泊った街を出る前に食べる物と水を購入してあります。
昨日は賊に遭遇しましたが、襲う気が無かったので良かったのですが
本日も賊が出るという事ですが、昨日の様にはいかないのでしょう。
今の所馬車は順調に進んでいますが、気は抜けません。
「このまま何事も無ければよいのですが」
「姫様、そういう事言うと賊がでるよ」
トリシャ様はわたしと同じ事をおっしゃりますが、確かにそうですね。
口に出すと言霊で引き寄せると言いますので、余計な事は言わない様にしましょう。
「そうですね、余計な事は言わない方が良いですね」
「もう言っちゃったあとだけどね」
「言ってしまったものはしかたがありません。では、賊が出ないと言っておきましょう」
遅いかもしれませんが、賊が出ないと言っておきますが馬車は順調に進み
馬の休憩を取るため途中の店で馬車を止めました。
「これはこれはお姫様がこのような茶店によっていたきありがとうございます」
馬車を止めた店はお婆さんが1人で切り盛りしている茶店です。
代々、この馬車で茶店をやっているそうですが、後継ぎのお子さんは
この商売を継がず、王都などへ行ってしまったそうです。
「お姫様にこのようなお話をして、申し訳ござません」
「いえいえ、このような場所で御商売しているとは、尊敬いたします」
「そうだよ、こんな場所でこんな甘いものを食べられるのはすごいことだよ」
「エルフの方にそのように言って頂き、なんといったらようのやら」
「甘いものは貴重だからね。おいしかったよ」
「ありがとうございます」
出された甘いものは小麦粉と蜂蜜を練り込んで焼いたものだそうです。
シンプルなものですが、これがまたおいしいです。
「しかし、お姫様がここにいらっしゃるということは、レンゼ山へお向かいになられるといことですよね」
「はい、そうです」
「魔導通信でおっしゃっていましたが、お姫様は伝説の勇者様の生まれ変わりだそうですが、エルフ様がいらっしゃるという事は……」
「あたしはファーガスと魔王を倒したエルフだよ」
「ああ、やはりトリシャ様でありますが。トリシャ様に美味しいと言われて光栄です」
「そんな大袈裟な。美味しいものを美味しいっていっただけだよ」
「ああ、トリシャ様にお会いできるとは長生きして良かったです」
お婆さんんはトリシャ様にむって手を合わせますが、トリシャ様も困っています。
「お婆さん、トリシャが困ってるからそれぐらいに」
「ああ、困らせてしまいましたが。あまりにも嬉しかったもので」
「別にいいよ」
「馬の休憩も出来ましたので、そろそろ出発しましょう」
御者は馬に塩と水を与えて休憩が出来たので、時間的にそろそろ出発ですね。
「馬に水と塩を与えてくださり、ありがとうございます」
「いえいえ、この店はそのためにありますので。この先はさらにさらに険しくなり、賊も出ますのでお気をつけて」
「ありがとございます。では、出発します」
「その前に、フローラ様にお話がありますので、すみませんがこちらに」
「わかりまました」
アランがわたしにお話があるとの事ですが、2人でないといけない話なのでしょうか。
「お話とはなんでしょうか?」
「実は……街から後をつけている者がいるのです」
アランのお話では、街から後をつけている者がいるそうです。
直接姿を見た訳ではありませんが、時々気配を感じたそうです。
「姿を見ていないのなら気のせいではありませんか?」
「初めはそう思いましたが、何度もするので間違いありません。
更にその気配は、昨日の賊の気配です」
「そうなのですか?」
「はい、間違いありません」
アランは自信をもって言いますが、姿を見ていないものの
ここまで自信があるのならば、信じても良いと思います。
「では、信じます。しかし、なぜわたしにだけお話を?」
「あの老婆も怪しいからです」
「そうですか?」
「年齢の割に、足腰がしっかりしすぎです。、もちろん、足腰がしっかりしている老婆も居ますが
足の歩みが不自然で、演じているように見えるのです」
「と言う事は、変装か変化の魔法を使っているという事ですか?」
「あるいは、変化の魔道具ですね。どちらにせよ、本物の老婆とは思えません」
アランはあのお婆さんが、賊が化けていると思っているようですが
賊は魔導通信を見る事が出来ませんので、違うように思います。
「賊は魔導通信の事はわからないのではありませんか?」
「それを言われると、お答えしにくいですが……ただ、あの老婆も怪しいと思います」
「あのお婆さんが賊の仲間や化けた者かはわかりませんが、証拠がなく疑うのはよくありません」
「そうでしたね。ただ、賊が近くにいる事はだけは確かです」
「それについては信じます。しかし、昨日の賊は何をしたいのでしょう」
「わかりませんが、少なくともフローラ様を襲うつもりは無いようですが……」
昨日の賊は一体何をしたいかはわかりませんが、少なくともわたしたちを襲う事は無いようです。
あと、この話はトリシャ様とアルニルにもしても良かったのではないのでしょうか?
「なぜ、わたしだけにこの事を話したのですか?」
「トリシャ様に話しますと、絶対に探しますし、アルニルさんも話さない方が良いかと思いましたので」
「そうですか、わかりました。では、馬車に戻り出発をいたしましょう
「わかりました」
話しが終わり、馬車に戻ると出発をします。
アランも馬で後をついてきますが、昨日よりも馬に乗るが上手くなっているようです。
先程の話はトリシャ様とアルニルに黙っておくわけにもいかないので、お話しましたが
トリシャ様も賊が後をついてきている事には気付いていたそうです。
しかし、襲うつもりはないので、あえて話さないとおっしゃりましたが
アランもトリシャ様も賊がいる事に気づいていて、感心したのでありました。
わたしたちの後を賊が着けている事がわかりまたが、襲う訳でもないので言った何をしているのでしょう。
気になりますが、襲ってこないのならばこのまま気付かない振りをして先に進みます。
―――――――—
「姫さんと騎士がはしてるから木塚らと思ったが、そうでもないのか?
いや、あんな恐ろしい殺気を出す奴がいるんだ、気づいてるが手出しをしないから無視しているだけか」
街で話を聞いたが、どうも姫さんが伝説の勇者の生まれ変わりで、その中の生まれ変わりも集めてるみたいだが
1人はエルフの魔法使いって言ってたが、あの恐ろしい殺気はそのエルフかもしれないな。
魔法使いと思えない殺気だったが、魔王を倒したエルフだからただ者じゃないか。
しかし、姫さんが勇者の生まれ変わりと言う割に、その気配を感じない。
エルフの魔法使いの殺気が強すぎて気づかないだけかもしれない、そんな事はない。
馬車には3人乗ってるが、エルフの魔法使いと多分、戦士か剣士が乗っているが
こいつもエルフほどじゃないが、それなりの殺気を感じる。
しかし、もう1人は殺気や強い奴独特の気配を感じない。
むしろ、優しいぐらいだ。
多分、これが姫さんだが、本当に勇者の生まれ変わりなのか?
ただ、魔導通信で王が神託があり大袈裟に発表したって言うから、間違いないだろう。
王が嘘をついてる可能性もなくもないが、それはどうでもいい。
1つ言える事は、姫さんが勇者の生まれ変りだろうが、無かろうが、やけに気になるという事だけ。
俺がつけている事は姫さんたちやあの騎士に気付かれてるが、気にせずついて行く事にする。
「あんた、ちょいとお待ち」
茶店の婆さんに声をかけれたが……ちっ、こいつに気付かれたか。
「他所の賊がシマを荒らしに来たのかい」
「いや、姫さんについて来ただけだ」
「そうかい、ならいいけどさ」
「ありがとよ。しかし、伝説の女盗賊が茶店の経営と未だに信じられないね」
「盗賊なんてあんたが生れる前からやめてるよ」
「その割に、賊同士のもめ事に首を突っ込んでる気がするぜ」
「こっちだって、好きに首を突っ込んでる訳じゃないさ」
「ま、まだまだ老いぼれてはいない様だが、俺は姫さんを追うよ」
「もめ事は起こすんじゃないよ」
「それは無理な話さ、奴がいるからな」
「そうかい、ならさっさ行きな」
「わかたっよ」
茶店の婆さんあ伝説の女盗賊で名を馳せだあって、眼光が鋭いぜ。
しかし、婆さんと話してたら姫さんは先に進んでいるがどうせ1本道だし
あいつが足止めをするからすぐに追いつくさ。
お読みいただきありがとうございます。
茶店のお婆さんも元賊だったりしますが、引退して大分経ってもまだまだ顔が広いです。
今後も出るかは未定ですが。
次回はまた賊に襲われます。
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