第14話 騎士くんとトリシャ
この作品はカクヨムに投稿した物です。
フローラたちは初めの宿に到着したが、トリシャはアランと話したいと言ってアランの部屋に行くのだった。
無事に1日目の護衛の任務が終わり、部屋で1人気を抜ていたら
部屋のドアをノックされたので、誰かと思えばトリシャ様であった。
「やあ騎士くん、遊びに来たよ」
トリシャ様はこう言って、部屋に強引に入ってきましたが
遊びに来たと言われてもトリシャ様とする事はありません。
「トリシャ様、遊びに来たと言われても困るのですが」
「あたしが話をしたいだけだから、気にしない」
トリシャ様はこう言いますが、こちらが気にします。
「こちらが気にします」
「別に変な事をするわけじゃないから、話だけ聞いてよ」
トリシャ様は椅子に座り、部屋を出ていく気がないようなので仕方なく話を聞きます。
「わかりました、話は聞きます」
「ありがとう。騎士くんは正直、頼りないけど、その若さで姫様の護衛に付くって事は優秀なんだよね」
確かに、若手の騎手がフローラ様の護衛に推薦されたのは優秀な証。
騎士学校の訓練課程では成績上位で次席で卒業をしている。
ただ、問題は自分は精神面が弱い。
弱いと言っても。騎士としては十分な精神力はある。
しかし、諦めが早く、またいざという時に焦ってしまい卒業の模擬戦では
決勝まで残ったものの、あと少しで勝てた場面であったが諦めてしまい次席で終わってしまった。
騎士隊に配属されてからはそつなく仕事はこなしていましたが、いざという時に失敗をしてしまって評価を落としていた。
しかし、騎士隊長が自分の能力と素質を見込んで、フローラ様の護衛に若手ながらも抜擢された。
自分もその期待に応えようとするが、すればするほど失敗を重ねてしまって
自分は騎士に向いてないのだろうと、悩んで辞めようした所に今回の護衛の話が来たのだった。
「優秀と言われれば優秀ですが、詰めが甘く失敗ばかりです。
実は騎士を辞めようと考えていましたら、今回の護衛の話が来ましたので引き受けました」
「そうなんだ。でも、断る事は出来たよね」
「もちろん出来ましたが、評価を下げる事になります」
「でも、辞めるつもりでいたんだから、評価が下がっても問題はないよね」
「そ、そうですが……」
「それじゃ、なんで護衛を引き受けたんだ。姫様に何かあったら断るよりも評価がもっと下がるよね」
自分はそれに答える事が出来なかった。
確かに、フローラ様に何かあった方が護衛の任を断るよりも責任が重い。
さらに、今回の任務は自分1人だけで、何かあった時の責任は全て自分1人が負う事になる。
しかし、成功させればその分評価が上がる……だから引き受けたのが本音だ。
「今回の任務が成功すれば評価が上がるからです」
「そうなんだ。それじゃ、辞めるつもりはないんだ」
「……かもしれませんね」
「だったら、成功できるようにしよう。でも、何かあった時はあたしに任せればいいから」
トリシャ様はニヤニヤと微笑みますが、それでは自分がいる意味がありません。
「それでは自分がいる意味がありません」
「あたしは勇者ファーガスと一緒に、魔王を倒したエルフの魔法使いだよ。
騎士くんがいなくても、賊の集団であれ魔族であれあたし1人で十分だから」
確かに、自分1人では賊の集団や魔族は敵わない。
特に、魔族と戦っても勝てる自信は全くない。
自分が出来る事は犠牲になってフローラ様を逃がすことぐらいだろう。
しかし、トリシャ様なら1人で賊の集団や魔族に勝つ事ができる。
「確かに、トリシャ様ならお1人で賊の集団も魔族も倒せます。
倒せますが、騎士としては自分の命を犠牲にしてでもフローラ様をお護りします」
「そうか、その言葉が聞けて良かった。騎士くんは騎士くんって事か」
そう言うと、トリシャ様は椅子からすくっと立ち上がりドアへ向かうと
「楽しんだから、あたしは姫様の部屋に戻るよ」
と言って出て行ったのであったが、この話のどこが楽しかったのかはわからなかった。
「トリシャ様は一体なんだんだろう……」
1人部屋に残された自分はトリシャ様がさったドアをただ見ているだけだった。
――――――—
「戻ったよ」
トリシャ様はアランの部屋から思ったより早く戻ってきました。
「もう戻ってきたんだ」
「話ができたからね」
「それで、どうだった?」
「騎士くんは騎士くんだったよ」
「そうか、それじゃ大丈夫か」
トリシャ様とアルニルの話を聞いても何が大丈夫かわかりません。
「あの、何が大丈夫なのですか?」
「あの騎士くんは騎士として姫様を守る決意があるって事」
「はぁ……それは普通の事では」
「普通の事だけど、初対面のエルフにそうそう言えないよ」
「そう言う物ですか?」
「騎士の誓いをするけど、人間は偉くなると腐敗するもだから誓いなんて忘れるよ。
実際に、主君を護ると言って主君に反旗を翻した騎士を何人もみてるからね。
そう言う騎士は自分が主君のために犠牲になるなんて言わないよ」
「でも、アランはまだ若いですよ」
「若いって言っても、姫様の護衛に騎士は最低5年は騎士をしてるはずだよね」
「はい、騎士になって5年以上の者が条件ですので」
「5年もすれば人間、初心を忘れて出世と相手を蹴落とす事を考えるようになるし
初対面の相手にぽろっと本音がでるんだよ」
「はぁ……」
「姫様はわかってないようだけど、ただ一つ言えることはあの騎士くんは信用できるって事だよ」
よくわかりませんが、アランの事は護衛なので信用はしています。
トリシャ様の言う事も何となくわかりますが、全て理解が出来ません。
ただ、長生きをしているトリシャ様なのでわたしが知らない事を多く知っていますので
理解は出来なくても、トリシャ様の言葉を今は信じる事に事にしたのでありました。
お読みいただきありがとうございます。
今回、わかりにくい話かもしれませんが、アランの騎士として信用できるかと言う話です。
トリシャとアルニルは信頼できると判断しました。
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@shiizu17