第101話 崩落現場
この作品はカクヨムに投稿した物です。
崩落現場はあまりにも大規模に崩壊していて、フローラも町長も声が出ません。
しかし、トリシャは冷静と言うか、いつもの変わらないまま。
わたしたちの目の前には、崩落により崖になっている光景が広がっています。
本来なら道であった場所でしたが、道があった痕跡は全くありません。
そして、時折石が転がる音がして、現在も崩落は止まっていません。
「すごいですね……」
わたしから出た言葉はこれだけで、崩落が思った以上の規模で言葉がこれ以上出ません。
「報告は聞いていましたが……目の当たりにしますと、言葉が出ませんね」
町長もこう言いますが、それほど大規模な崩落です。
そして、町長も実際に見るのは初めてのようです。
「あー、すごい崩れてるね。これじゃ、魔法でも元どおりにするのは無理だね」
トリシャ様は冷静というよりも、いつもと変わりません。
「トリシャ様はこの崩落を見て驚かないのですか?」
わたしが尋ねますと
「驚くけど、ここまでなったら、逆に諦めがついて慌てないよ」
と答えます。
確かに、ここまでですと諦めるしかありません。
馬車5台分と聞きましたが、目測によるもので、実際はもっと広い幅が崩れています。
さらに、現在も崩落が続いているうえ、高い断崖になっているので、直すにも直せません。
なので、諦めるしかありません。
「ここまでの崩落は初めてですね。ここは沢があり、元から崩れやすい場所でした。
今までは木で橋を作り、崩れる度にそれを延伸するを繰り返していました。
しかし、これはさすがにですね……」
町長も完全に諦めています。
「これだけすごいと、音もすごかったんじゃないの?」
トリシャ様はこう言いますが、確かに音もすごかったはずです。
「はい、町にまで響くぐらいでしたからね。なので、慌てて様子を見に行ったのです」
町長は町にまで、音が響くほどで、その音を聞いて様子を見に行ったそうです。
なので、この崩落がいかに大規模かわかります。
「そうだよね。ここまで地形が変わったら、なおしようがないし、う回路を作るしかないよね」
トリシャ様はこうおっしゃいますが、庁舎で話していたトンネルの話ですね。
「う回路と言いましても、山を掘るしか方法が……まさか、掘るのですか?」
町長はトリシャ様が山を掘るのかと尋ねます。
「ふふふ~、そのまさかだよ」
トリシャ様は得意げな顔で、胸を張りこう答えます。
「トンネルですか……。短いトンネルはこの先にいくつかありますが、長いトンネルになりますよ?」
町長はさらに尋ねます。
「この先の道へ、ちゃんとつながるようにしないとだから、長さがどれぐらいになるかわからない。
でも、魔法で掘れば、数日で掘れるよ」
と、さらにふふふんっと鼻を鳴らし、答えます。
「トリシャ様ならできると思いますが……数日でできるのですか?」
町長は本当に数日でできるか、疑問を持ちます。
しかし、これは普通のことです。
どれぐらいの長さになるかわかりませんが、数日で掘れる長さでないことは確かです。
「ちゃんと地形と道を確かめる必要はあるけど、あたしにまかしてよ」
トリシャ様が珍しくやる気と言いますか、得意げになってるので、それだけ自信があるのでしょう。
「私たちとしても、早く峠が通れるようになるのはよいですが、できるのですか?」
町長はまだ疑問に思っていますが、こればかりは仕方ありません。
う回路であるトンネルができることは、安全性が高まります。
しかし、かと言って数日の内に完成するとも、根拠なしに言うわけにもいきません。
なので、町長が慎重になるのも、仕方がないことです。
「それはあたしにもわかるよ。人間って色々面倒だからね。
でも、ここがなおらないと、あたしたちもファーガスへ行けないよ。
だから、やるしかないから、あたしにまかせてよ」
トリシャ様が珍しく大人な発言をしますが、言っていることは間違っていません。
ここが通れないと、わたしたちはファーガスへと行くことができないのです。
これを聞いた町長は
「そうですね、できるできないではなく、しないといけませんね」
としなければならない、と答えます。
「そうだよ。だから、この辺りの地形と道がわかる地図があればいいけど、あるかな?」
トリシャ様が町長に、地形と道がわかる地図がないか尋ねます。
しかし、この質問に答えられないと、わたしはすぐに思いました。
「すみませんが、地図は……」
思ったとおり、町長は言葉を濁します。
町長のいう地図は精密な地図で、王族、一部の貴族にしか見ることができない地図だと思います。
つまり、トリシャ様に見せることができないのです。
「町でも地図が売ってるけど、違うの?」
トリシャ様は尋ねますが
「私たちの地図は、もっと精密なものなので、町で売っているものと違うのです」
と町長が答えます。
「そうなんだ。200年前の地図も、結構詳しかったけど、それだったのかな」
トリシャ様はこうおっしゃいます。
ファーガスの記憶をたどりますと、確かに精密な地図を使っていました。
200年前は魔王討伐という、公式な王からの命令でしたので、精密な地図を見ることができたと思います。
見られた理由の詳細な記憶は、ファーガスの記憶にはないようです。
ただ、精密な地図は頻繁に見ています。
「トリシャ様、精密な地図は誰にでも見せることができないのです。
200年前は魔王討伐という、公式な命令がありましたので、特別に見られたのです」
わたしが町長の代わりに、説明をします。
「そうなんだ。やっぱり、人間って面倒だな。
だったら、どうやったら見れるの?」
トリシャ様が尋ねますので、わたしは
「王族か領主の許可を得た者が見ることができます」
と答えます。
「そうなんだ。この町長だっけ、見ることはできないの?」
トリシャ様は、町長は見れないのかと尋ねます。
多分ですが、町長は道の管理のため、領主により許可を受けているはずです。
「町長は道の管理のため、見ることができると思いますよ」
わたしがこう答えますと、町長は
「はい、わたしは道の管理のため、他に許可を得ている者たちと精密な地図を見ることができます」
と答えます。
「そうなんだ。でも、あたしは見れないよね」
トリシャ様は、さらにわたしに確かめます。
「そうですね、トリシャ様は見ることができません」
わたしはこう答えますが、残念ながらトリシャ様は見ることができません。
「でも、今回も王国からの正式な旅だから、見れないの?」
さらに尋ねますが、確かにお父様の許可は得ています。
しかし、公式な旅なのかは、何とも言えないところです。
この旅にも精密な地図は持っています。
しかし、見るのはわたしとアルニルだけです。
アルニルは、わたしの侍女として許可を出しています……。
そうです、わたしが許可を出せばいいのです。
王族であるわたしが許可を出せば、トリシャ様も精密な地図を見ることができる。
そのことに、わたしは気づくのでした。
お読みいただきありがとうございます。
あまりにも大規模で、木の橋で応急的に対応していたのが不可能なレベルになりました。
なので、う回路としてトンネルを掘ることになりますが、正確かつ安全な位置に掘らないとならないです。
なので、精密な地図が必要であるものの、精密な地図は機密なのでトリシャは見れないです。
しかし、フローラが王族なので、フローラが許可を出せばよいと気づきました。
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