二人の関係
「アレク!!」
リークとアレクの二人が地上に向けてゆっくりと降下していると、ロコがアレクに駆け寄ってきた。そして、そのままアレクに飛びつき、抱きしめる。空中で抱き着かれるという経験をしたことがあるはずもなく、アレクはバランスを崩す羽目となった。
「危ないって!」
「だって……心配だったから」
アレクは危ないというが、彼女は彼を離すどころかより一層腕に力を入れ、彼を力いっぱい抱き締める。彼女は気づいていないが、彼が今どれだけ赤面していることだろうか。真っ赤になる彼をリークはにやにやと見ている。
その視線を不快に思いながらも口には出さず、アレクはロコに話しかけた。
「大丈夫だって」
「本当に?」
「ああ。っつ」
どうやら、ロコに抱き着かれたことで、腕が痛むようだ。そしてアレクが表情を変えずとも、彼女にはそれがわかってしまったらしい。
「アレク、怪我してるの?」
ロコはアレクの左腕に目を向ける。そこには先ほどリークによって巻かれた包帯があり、血が滲んでいた。
それを見て、ロコは抱き着くのをやめ、すぐさま離れる。
「ごめん!」
「いや、いいって。見た目ほどひどい怪我じゃないからさ」
「でも……」
「平気だから」
「本当に?」
アレクはロコに対して元気そうに振舞うが、実際には見た目よりもひどい傷だろう。リークの素早い処置によってきれいに見えるだけで、かなりひどい切り傷のはずだ。
ロコを騙しているという事実にアレクは罪悪感を感じるが、ロコにいらぬ心配をかけさせぬためと、割り切る。
「ひとまず、地上に降ろしてくれ。さすがに疲れた」
「わかった」
「じゃあ、ロコ。あとは頼んだぞ。お前らの親が仕事から帰ってきたら、俺のほうから何があったか伝えておくから。アレクの世話をしといてくれ。俺は来客があるから」
「わかりました」
二人の一連の流れを見て、このまま二人きりにさせておくのが最善と踏んだリークはその場を離れることにした。リークがいてはせっかくの雰囲気も台無しである。
「ロコのウェディングドレスが見れる日はいつかねぇ」
二人からある程度距離を取ってからリークはつぶやいた。彼自身も気持ち悪いことを言っているとわかっているのだが、それでも止められるものではなかった。二人の関係が面白くて仕方がないのだ。
竜が突如現れるというハプニングはアレクの腕を傷つけることとなったが、二人の関係を親友や幼馴染からさらに近づけるにはいい仕事をしたのではないか。そう考えれば、アレクにとって腕の怪我は安いものだろう。
にやにやとはたから見れば気持ち悪い笑顔を浮かべたまま、リークはロイドのもとへ戻っていった。
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