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STAGE 2-10;遊び人、■■■■■になる!


「そーいえばさー」


 【神と邪神】――相反する存在の〝同居〟を許したアストの衝撃から。

 ようやく落ち着きを取り戻し始めた犬耳美少女悪魔――リルハムが言った。


「アストは、どうして【悪魔】のリルの言うことを疑わずに――【契約】までしてくれたのー?」


「む? ああ、()()()()()か」


 アストはひとつ前置いてから、リルハムの目を真っすぐに見つめて。

 躊躇うことなく淡々と言った。


「リルハムが〝良いやつ〟だと思ったからだ」


「うあ!?」


 リルハムはその〝お気に入りの単語〟を聞いて、ぱあと顔を明るくした。


「リル、いいやつー? やったー、いいやついいやつー!」


 るんるんという音が聞こえてきそうなほどに。

 リルハムは両手を天にあげて、その場で飛び跳ねはじめた。


「ついでに俺もひとつ聞いていいか?」


 まさしく犬が駆けまわるように喜んでいたリルハムが答える。


「もちろんー!」


 そして悪魔すらも振り回した非常識な少女――アストは。

 いつもの淡々とした口調で、とある疑問を口にした。


「そういえば――今回の契約の【代償】というのは、一体なんなんだ?」


 リルハムはその質問に。

 跳ねまわっていた足をぴたりと止め。

 アストに向かって目をぱちくりさせてから。


「――あはー!」


 お腹を抱えて笑い始めた。


「あははー! おかしー! 【代償】がなにか知らずに【悪魔】と契約してくれたんだねー」


 そんな人間はじめて聞いたよー、とリルハムは笑いすぎが原因で滲んできた涙を爪で拭った。

 彼女はどうにか呼吸を落ちつけてから、アストに向き直って答える。


「最初に言ったでしょー? リルの〝ご主人様〟になってよって!」


「む――ああ、そういえば」


「だからねー、【代償】は――リルのことを()()()()()()()()それでいいよー」


 リルハムはそう言って無邪気に笑いながら。

 アストに向かって顔を近づけた。


 急に近寄られたアストは恥ずかしそうに視線を逸らして、


「それだけでいいのか。てっきり〝魂〟のひとつでも持っていかれるのかと思っていた」


「逆に(そこ)まで予想した状態でよく契約したねー!?」


 リルハムがぴくんと耳を立てながら突っ込んだ。


「うーん、でもそっかー。〝魂〟かー」


 それもいいかもだー、とリルハムは悪戯をする子供のように呟いた。

 さらり。リルハムの銀色の髪の毛がアストの顔に触れた。

 こそばゆさと恥ずかしさで耐え切れなくなったアストは逃げようとするが。

 リルハムは「まだもうちょっとー」とアストの背中に手を回した。


「契約は終わっちゃったもんねー、もう後悔しても遅いよー」


 嬉しそうに笑って彼女は、顔を赤らめ抵抗するアストの胸元に。

 ごろごろとそのふわふわの耳付きの頭をこすりつけながら。


「これから〝魂が消えるまで(ずーっと)〟よろしくねー」


 などと。そんな()()()()()()()()を。


 悪魔とは程遠い、無邪気な笑みを浮かべて――言った。


「ご主人様ー……じゃなくてー。リルの()()()()()()☆」


「む……むう――」


 アストはごくりと唾を飲み込んで。

 とても〝世界の(ことわり)を変えた〟偉業をしたとは思えないほどに()()()()と震えていた。


 しばらくのあとに、ようやくアストはリルハムの抱擁(ハグ)から抜け出して。


「し、しかしこうなってくると、」頬の紅潮を誤魔化すように、頭を振りながら言った。「はやく【邪神】の≪職業魔法(スキルマジック)≫を試してみたいものだな」


 リルハムは離れていったアストのことを名残惜しそうに指を咥えて見つめながら、


「うーん……リルはあんまりお薦めしないけどねー」


 なにが起きてもおかしくないもん、と〝あの時の衝撃〟を思い返しながら冷や汗を垂らした。


「そもそも」アストが思いついたように言った。「俺は邪神からどんな『職業(ギフト)』を授かったんだ?」

 

「それが……リルにも、分からないんだー」リルハムはぴくんと耳を跳ねさせたあと、ふるふると何かに怯えるように首を振った。「正確には〝分かる〟んだけど……この世界の言葉(ことわり)に当てはめることができないんだよねー。無理やり()()をしてみるなら――『■■■■■』みたいな感じー」


 リルハムが最後に放った、明らかに()()()()()()()()()()その異音に。

  アストが感心したように言った。


「ほう――確かに発音することどころか、聞き取ることすらひどく難しそうな概念(コトバ)だ」


「うんー。でも何回も言うけど……こんなことってふつうはありえないんだよ!? アストを魅入った邪神様は、もしかしたら――」


 リルハムは言いかけた言葉を飲み込んで、ふたたびふるふると首を振った。


「うあー! なんでも、ないよー」


 アストは特に気にしていない様子で、両方の拳を二三度開閉させながら言った。


「ますます〝試す〟のが楽しみだな――どこかに〝ちょうどいい相手〟がいないものか」


 アストの視線を感じたリルハムが、短い悲鳴を上げた。


「うあっ!? まさかと思うけどご主人ちゃん、()()()()()()()()じゃないよねー……?」


「悪魔というからにはさぞかし強いのだろう」


試す(ヤル)気満々だー!」


 リルハムが震えながら叫んだ。


「ひどいよー、ひどいよー」


 などと尻尾の毛を逆立てながら頭を抱えていたところに。


 未だかつてないほどの圧気(オーラ)()()()


「「――っ!」」


 気づいたのはふたりほぼ同時だった。

 微かにリルハムが先に。

 遅れてアストがゆっくりと。

 上空を見上げた。


 そこには。

 あの帝国が誇る戦闘職一行(パーティ)の戦意を。

 相対(あいたい)しただけで削ぎ取った異質な化け物――


『ほウ――やっと見つけタ』


 リルハムとはまるで真逆の。

 禍々しい圧気(オーラ)を放つ()()()()()()()がいた。



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