6話(下)記憶
師匠の体がすべて消えた。俺は声に出して泣いた。さっきまで生きていた人が死んでしまったことからの絶望感。救えなかったことからの無力感。様々な感情が俺を襲った。
「スノー・シャル、スノー・シャル、スノー・シャル、スノー・シャル…」俺は師匠の名前を言い続けた。
絶対に忘れないために。絶対に。
その瞬間、俺の体に緑色の何かがまとわりついた。これは多分師匠から教えてもらった回復魔法だろう。HPゲージを見ると、みるみるうちに回復していった。HPが全回復すると共に、ほうきが俺を乗せてものすごいスピードで飛び始めた。このほうきから降りて、地面に着けば師匠のことを忘れてしまう。そんなの嫌だ!だから俺は、ほうきに浮遊魔法をかけようとした。飛び続けるために。しかし、俺の魔法ははじかれてしまった。
「くそ!俺は師匠を忘れたくない!」俺の目から、再び涙がこぼれた。それから30秒くらい飛ぶと、ほうきが森の方に急降下を始めた。ほうきが地面に突き刺さると、俺は地面に放り出された。そしてほうきが、ポーチに形を変えて腰のベルトについた。
その瞬間、俺の頭に激痛が走った。何かが抜けていくような、そんな感じがした。そのまま俺は痛みに耐えきれずに、気を失ってしまった。
目が覚めると、俺は森の中にいた。そういえば、どうして俺はこんなところにいるんだ?さっきまで王都の図書館に住み込みで働いていたはずなのに…。いや、考える時間がもったいない。俺は歩き出した。森を抜けるために。ここがどこかわからない以上、森を抜けるしか方法がないからだ。一応図書館の本を読んで学んだ魔法やスキルをいつでも放てるように、万全な状態で歩いた。
しかし、何時間歩いても森は抜け出せなかった。王都の近くにこんな大きな森はなかったはずだ。ということは、ここは王都の近くではない遠いところということだ。そして、めちゃくちゃ腹が減った。ずっと構えながら進むと、結構体力使うんだな。それからまた数時間歩いた。体力を温存しながら。しかし、俺はつかれて倒れてしまった。もう歩ける気がしない。しかも、森を抜けられる気配がしない。そんな時、気の後ろから、様子を窺うように、人の頭くらいの大きさのピンクい【なにか】がこちらを見ていた。
そのなにかはピンクの毛玉?つぶらな瞳と小さなねこのような耳。ふさふさの尻尾が揺れている。
「なんだお前」「!!」声をかけると、驚くようなそぶりをした。尻尾がピンと跳ね上がる。
「な、なぜ気付かれたモ!?」「いやー、だってそんな気配ビンビンに放っていおいて、気付かないわけないだろ。」「…」「…」「…」「なんか言えよ」「な、なんで驚かないモ!?」「驚いたよ?気付いてくれーっていうような大きな気配放っておいて、のぞくようなそぶりしてるんだぜ?そりゃ驚くさ」「そうじゃなーーーい!モ」「?」「私は伝説のポンノモ族ですモ!?」「え?なにそれ。」「いや知らないんかーーーい!!モ」
これが、俺とポンノモ族のポモンとの出会いだった。
ポモン絶対かわいい。絶対!!