1日目
俺の名前は剣道葵。何てことないしがない学生だ。
俺のことを一言で表すと平凡。これに尽きるだろう。
「早く起きないと学校遅れるわよっ」
朝は弱くて母さんに毎日起こしてもらっている。
「もう、お兄ちゃんいい加減一人で起きれるようになりな?」
ちょっと気の強い妹の小言もすでに日課となっている。
妹は毎日俺に小言を言ってから家を出るのだ。
支度をしているうちにいよいよ時間がなくなり、どうしても朝食が食べたい俺は
漫画みたいにトーストを加えて家を出た。
通学路で犬に吠えられ、靴の裏にガムがくっつき、後ろからやってきた小学生に蹴られ、俺はようやく学校に到着した。
「剣道くん、おはよ~。どうしたの?疲れた顔して」
教室に入り窓際の自分の席につくと隣の席の本宮あかねが話しかけてきた。
「聞いてくれよ本宮。今日も朝からいつもの犬に猛烈に吠えられるわ、クソガキに蹴られるわ、ガム踏んじゃうわで最悪なんだよ。」
「ププッ。いっそ清々しいよ」
「・・・本宮お前面白がってるだろ?」
「ごめん、でもプッ。ふふ。呪われてるんじゃないのww」
「言ったな?お前も道連れにしてやるっ!!」
「ちょっと!ガム付いた靴こっちに向けないでよ!」
本宮あかねはとても美人だ。茶色ががったサラサラな髪が風でなびく姿は
神々しいといってもいいだろう。小動物を彷彿とさせる大きなアーモンド形の瞳と長い睫毛。
透き通るような白い肌。クラス委員長も務める秀才。
幼馴染でなければこんなに親しく話すことなんてできなかっただろう。
「お二人さん今日もいちゃいちゃしてんなぁ。」
声を掛けてきたのは高校からの友達で金城望。
金髪で耳と口にフープピアスをしていて、学ランの中にどこで売ってるんだというような派手な柄シャツを着ている。ひたすら喧嘩に明け暮れているような見た目に反して普通に気のいい男だ。
「そんなんじゃないっていつも言ってるだろ。」
「はいはい。それより転校生見た?」
「転校生?まじで?本宮知ってる?」
「いいえ。先生からは何も聞いてないわ。どこで見たの?」
「さっき、職員室で見かけてさ。ちらっとしか見てないけど女子だったぜ。」
「へぇ。夏休み明けに転校か。親の転勤とかかな。」
「知らね。ここのクラスかもな」
「ふーん。美人だった?」
「いや、顔はちゃんと見てない・・・嫁が隣でむくれてんぞ」
金城に言われ横を見ると本宮が分かりやすくほっぺを膨らませていた。
「本宮?どうした?」
「なんでもない!!」
横を見て不貞腐れている本宮の方に椅子を寄せ目を合わせようとしたとき教室のドアが開き、担任と一人の女子が中に入ってきた。
「ほらな!」
金城はそそくさと自分の席に戻っていった。
「お前らさっさと席につけ。よし。じゃあ白鳥さん自己紹介よろしく」
「白鳥じゃ。偽名だからなんとでも呼ぶがよい。突然じゃがお主らに残念なお知らせがある。
この世界の秩序は本日を持って終了じゃ。みんな短い間じゃろうが宜しく頼む。」
おおすべりした転校生のせいで、クラスの気温が氷点下になった。
「ぬぬぅ。殊勝な態度であるな。なるほど我の慈悲をこうておるのだな。」
さすがに、これ以上は看過できなと担任が注意を使用とした瞬間。
「ほおおおれぇぇぇ」
白鳥さんは気の抜けるような掛け声をあげる。
その瞬間、目も開けてられぬようなまばゆい光が俺たちを包んだ。