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蒼翼の修道女 壱話

挿絵(By みてみん)


次なるJOBは?

ギルドから紹介された山間の村に辿り着くまで、馬車に揺られてきた。


半日で辿り着く予定が、一日を要してしまったのには・・・




「お嬢さんは流れのシスターさんなのかい?」


乗り合った親爺の眼が痛い。

掛けられる言葉もどことなく厭らしく聞こえる。

下心が見え見えの親爺を無視していたのだが。


「こんな辺鄙な所に教会なんてあったのかい?

 どこに行こうとしてるんだい?」


無粋な詮索に飽き飽きして来る。


「その赤の法衣を着ている処をみれば、アンタはそれなりの地位に就いているんだろ?

 なに教のシスターなんだい?」


うざい・・・うざ過ぎる。


しかもまじまじと下から上まで見詰めて来るのを辞めようともしない。


親爺の眼に映るのは、うら若いシスター。

紅い法衣を着た、茶髪の乙女。


ワンピースの法衣に隠されていても、身体のラインが親爺には良く解っているのか。

強調されても居ないのに、盛り上がった胸からのラインに目を向ける。

観えもしないというのに、ブーツから想像した腰のラインが親爺に嗜好を誘う。


襟に着けられた白の頭巾。

その首元からうなじに登り、耳から顎のラインが若さを窺わせている。

ピンクの口元、すっと伸びる鼻筋。

瞳は深い緑鳶色、永く垂れた茶色の前髪。

左髪を紅い髪飾りで纏め、肩下まで伸ばした髪が、馬車の揺れに併せて靡いている。


後席に座るシスターの膝には、ペットだろう観た事もない小型生き物が抱かれていた。


「そのマスコット・・・いや、ペットを伴にしているなんざ。

 かなり訳アリなんじゃないのかい?」


膝の上に載せた狐モドキに羽根が付いた、ヘンテコなペット。

毛に青みが付いていて、目玉もブルー。

ペットだというのにチョッキのようなベストを着させられている。


「シスターのペットなのかい、大事にしてるんだねぇ。

 シスターが着させてるんだろ、そのチョッキみたいなものを?」


着させた訳ではないのだが、魔法力があがった自分に併せて着ているだけ。

宿る女神ミレニアに因って、翔龍ドラゴニスの衣を与えられているだけ。


説明するのも面倒だから。

・・・と、いうよりも関わり合いになりたくないから。


「それにしても俺はついてるよ。

 アンタみたいな綺麗処と同乗出来るなんてな。

 ほら、こいつでも呑んだらどう?目的地に着く迄まだ時間があるだろ?」


下心一杯の親爺が差し出してきたのはフラスク。

勿論入っているのは酒の類だろう。


差し出されたフラスクをちらっと見たシスターが。


「いいえ、結構です」


親爺が口をつけたかもしれない瓶先に目を向けて断った。


「いいじゃないか。一口くらい」


無碍に断ったシスターに、押しの一手になる。


「怪しい飲み物じゃないんだから。ちょっとアルコールが強いかもしれないがね」


・・・十分に怪しいだろ?


片耳を親爺に向けて俺は、頭の中で毒づく。


「ボクは酒類を呑みませんから。勝手にどうぞ」


プイとそっぽを向くシスターに、諦めたのか親爺が引き下がる・・・訳もなく。


「酒は駄目なのかい?じゃあ、これはどう?」


品を変えて差し出してきたのは。


「これなんかはどうかな。疲れているときなんかには最適だよ?」


銀紙で包まれた板状の物を差し出して来る。

見た目で考えればチョコレートか?


「甘さは控えめだけど、効き目は抜群だよ?」


・・・効き目?

もしかして・・・ガラナチョコ?


「すっぽんの活き血と人参。それにガラナと不思議な薬品が混ざった逸品なんだ」


ぶぇえええっ?

なんなんだよそれは?!


狐モドキもシスターの膝からずり落ちそうになる。


「いらないって言ったらいりません!」


そっぽを向いたまま、シスターが半ば怒り加減で言い返した。


「なんだよ、人が勧めてるのに!」


親爺も半ギレになって言い返して来る。


・・・そもそもだな、そんないかがわしい物を勧める方がおかしいだろ?

下心しか観えないじゃないか。


紅い法衣を着た茶髪の、うら若きシスターと同乗した親爺。

そもそもどうして馬車に乗ってるのか。

商売人には毛頭観えない。

頭に載せたカウボーイハットが、これまた全然似合っていない。

多分帽子の下は禿げ頭なのだろう、これだけ厭らしい目付きをしてるのなら。(偏見)


「シスターさん、アンタはどうしてソンポなんて村に行くんだい?

 あそこには変な噂しかないんだぜ?なんでも村に入れば二度と出れないとか?」


どうやら、親爺はソンポの村を少々知っているようだ。


「あの村に布教に行くのなら辞めた方が身のためだぜ?

 あの村で一生を終える気なのならかまわんがね?」


どうやらギルドから教えられた事は間違ってはいなそうだった。


「村に行けばもう外には出れないんだと。

 だったら、最期にイイコトして思い出にしとかないかい?」


・・・まだ、諦めてなかったのか。


「あのね、誰に物を言ってるの?誰が村で一生を終えなきゃいけないんだよ?!」


流石に堪忍袋の緒が切れたのか、狐モドキを膝からどけたシスターが。


「ボクはこう見えても魔物ハンターなんだよ!

 悪人達が束になって掛かって来ても、全員吹っ飛ばす事だって出来るんだよ!」


立ち上がり様、指を親爺に突き付ける。


「こう見えても?どう見たってお嬢ちゃんのシスターにしか見えんが?」



 ぴくくっ 



引き攣るシスターの口元が歪む。


「言っても判らないのなら・・・」


魔法の呪文すぺるを唱える。


「ほほぅ、なにをする気なんだい?ぽよよんちゃん?」


前かがみで指を突き付けたシスターの胸の膨らみによだれを溢す親爺。

知らぬが仏・・・いや。

もうじき本当に仏となる身か・・・


「いっ?!どこ見てんだよ!糞親爺ぃっ!」


スペルを唱え終えたシスターが、本当は明後日の方に放つべき魔力を親爺に撃った。


 

 ちゅどーーんっ!!



その一撃は、哀れな親爺の姿をどこかへ飛ばした。


シスターの一撃を喰らった親爺と、親爺が座っていた馬車前方が噴き跳んでいた。


「・・・あのなぁミコ。どうすんだよ?」


ため息を吐く俺が、トンデモ魔法を撃ちやがった偽シスターに言ってやった。


風穴が開いた馬車を観てね。


「あ。ありゃ・・・ま」


馬車は突然制御を失う。

それは当然だろう、行者うんてんしゅまでもが忽然と消えたのだから。


親爺の巻き添えを喰らった、不運な行者・・・


破壊に驚いて、曳いていた馬が暴れ出す。

揺れ動く馬車の中で、ミコが思わず喚いた。


「どうしてこうなるのーっ?!」


暴れ馬に曳かれた馬車をコントロールするのは、ミコには甚だ時間を要する事になる。




・・・そう。


ソンポの村に着いたのは、予定よりも半日過ぎた翌日の事だった。


当然、馬車に損害を与えた賠償も発生させ、行者の慰謝料も加算されているのだが。

それはこの際・・・忘れておこう。









ソンポ・・・この村には奇怪な祠があった。


村人さえも近寄らなかった祠に、今は数十人の信者達が集っている。


頭から頭巾を被り、誰なのかさえも判らない。

男も女も、妖しい言葉を吐き、妖しい動作を繰り返す。


黒い法衣らしき服を着た先導者が、生贄の鳥を捧げ持って傅いているのは・・・


「大いなる指導者アクマンよ!その力を我等に齎せよ!」


讃える先に掲げられているのは黒い逆十字。


「皆の者!アクマン様に永劫の忠誠を!」


先導者が振り返り、平伏す者達に命じる。


「永劫の忠誠を!我らに全能の異能ちからを!」


応える信者達。


「さぁ!この地にアクマン様の教えを拡げるのだ皆の者!」


諸手を挙げて信者に告げる先導者。


その姿を陰から睨んでいる者がいた。

信者の中にあって唯独り、白い頭巾を被った紅い法衣を着た娘の姿があった。


「なるほどね・・・見るからに怪しい教団だよな?」


足元に控えるペットに向けて、娘は話しかける。

白いモフモフの尻尾を揺らす、狐モドキのペットに。


「ここからはアンチョコなんて読んでる暇なんてないかもしれないよミレニアさん」


袖に隠した金の魔法リングにも、白い頭巾を被った娘が言い渡した。

何かが聞こえたのか、白い頭巾を被った頭が頷いたように観える。

そして・・・


「それじゃあ、往きますか。暗黒教団とやらの殲滅に!」


白い頭巾から漏れ出ている口元が、ツイっと笑みを浮かべて観える。


「この翔龍騎ドラゴンライダーミコが葬り去ってあげよう!」


進み出る足元には茶色のベストを着た、狐モドキが何も言わず寄り添っている。

良く見ると口に何かが・・・




そうだよ!

口に絆創膏を貼られてしまったたんだよ!


/(^o^)\ナンテコッタイ・・・




なんだかカルトっぽい匂いが?

怪しげな宗教団体に果敢に挑む?


あれ?

でも、なにか曰く有り気な?


次回 蒼翼の修道女 弐話

なんだかなぁ~っ?!ここの信者達って・・・信じるものは救われる?

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