ファイティング・スィーパーズ! 九話
魔王の情報を掴んだミコ。
そして旅立つ先は・・・どこ?
またしてもタダ働きに終わったのか・・・と。
だけど、代えがたい情報を入手は出来たんだ。
ネクロマンサーから仕入れたのは、魔王らしき者の存在と所在情報だ。
しかもだ。ギルドには、知られているらしいんだぜ?
どうして今迄散々手を尽して調べていたのに、気が付かなかったんだろう?
尤も、ギルドに訊いた事も無かった俺達にも非があるんだが・・・
「ここはオイスターに戻って、タストン女史に訊いてみなきゃならないな」
所属しているギルドマスターに、情報の開示を求めようと俺が言うと。
「そうだなぁ・・・でもリュート。
タストン女史は知っていたんじゃないのかな。
知っていて、ワザと僕達に魔王の情報を教えなかったんじゃないのかな?」
鬱々としたミコの声が耳に痛いぜ。
「どうしてそう思うんだ?」
仮にだ、俺達に魔王の情報を教えない理由があるとすれば?
「もしかして僕達を囲締めしようとしてるとか?」
「・・・あのなぁミコ。ブラック企業じゃあるまいし、そんな事をする理由がないだろ?
しかも俺達はタストン女史に、結構世話になっているんだぜ?」
勘ぐる気持ちは分かるけど、タストン女史に限ってそれは無いと思うぜ?
「じゃぁ他に何が考えられるんだよ?」
「そうだな・・・本当に知らないのかもしれないぜ。
あの村はかなりの辺境にあるんだからさ、情報が入って来ないのかもしれない」
まぁ、大体そんな処だろうと思うんだが。
「そうかなぁ?仮にもギルドマスターなんだから・・・魔王の情報ぐらい入ってもよさそうなモノなのにな」
まだ疑ってやがるミコに、
「それもこれも。帰って聞きゃあ分かるだろ?」
タストン女史に直接訊けば解決すると言っておいたんだ。
「そうだよなぁ・・・でもさリュート。
このまま手ぶらで帰ったりしたら・・・借金どうなるんだろう?」
「ぎくりっ?!そ、そうだった!」
肝心なことを忘れてたぜ!
ギルドからの黒の依頼書を遂行してたんだが、報酬を受けとってない!
仕事を完遂した訳でもないし、ギルドからの報酬は降りない。
おまけに依頼主からは6000ゴールドを貰ってしまった・・・のを、あげちゃったから追加で貰う訳にもいかなくなったし。
「ど・・・どうしよう?」
「馬鹿もんっ!そんなのミコが全部あげたからだろーが!」
マッタク・・・世話のかかる幼馴染だぜ。
「こうなったら、オイスターに戻らずにギルド本部に向かうか?
本部なら必ず魔王の情報を持っているんだからな」
「あはは・・・それもありかな?」
文無し状態だけど、森の中に入れば純粋な魔物だって居るだろうし。
狩りをしながら旅をするのも良いかもしれない。
だってオイスターに腰をおろす迄は、ずっとハンター稼業をやってたんだからな。
「また、旅に出てみるか?魔王を見つける旅に・・・さ?」
「そうだな、ギルド本部に寄ってからだけどね」
答えたミコが、少しだけ表情を曇らせやがった。
「どうかしたのか?」
訝しんだ俺が訊いてみると、背中を向けたミコが逆に訊き返して来やがる。
「どうかしたじゃないよリュート。
書面に書かれてあった<MIKO>って・・・さ。もしかして?」
そう。
俺達の幼馴染でミコの姉である<美子>である可能性があるんだ。
だけど、それは俺達が勝手にそう思っているだけで・・・
「どうかな?ミコなんて名前は抽象的すぎるぜ。
他人かもしれないし、他に意味があるかも知れないんだぜ?」
「どんな意味だよ?」
突っ込んで来るとは思わなかったぜ。
「そうだなぁ。
<MIKO>って、なにかの頭文字を採っているだけなのかも知れないってことさ」
「なるほど。そう言えば全部大文字だったもんな」
・・・そう来るか?
「ま、まぁな。真実は自分で確かめることだよな!」
前向きだなミコ君、リュート君?!
「それじゃあ、リュート。
翔龍になってよ、本部迄飛んで行くんだから」
あのな。俺はタクシーじゃないから。
「急いで調べなきゃ気が済まないんだよ。
のろのろ歩いて行ってたんじゃ何週間も掛かっちまうんだから」
だからって、魔法の乗り物じゃないんだぜ俺は!
「はい、それじゃあ翔龍になろー」
無理やり金のブレスレットを翳しやがる・・・が。
「あれ?!狐モドキから翔龍にならない?」
当り前田のクラッカー・・・戦闘状態じゃないんだぜ?
「むぅ・・・拒否するの?」
違うだろーが!翔龍になる条件が整っていないだけだろ。
「一つ言っておくぞミコ。
タクシー代わりに翔龍を使うのは白竜が許さないだけだ。
戦闘状態か危機が迫らない限り、翔龍には成れないんだっただろ!」
「・・・あ。そうだったっけか?忘れてたW」
・・・忘れてたんじゃなくて、ワザと手を抜こうとしてたんじゃないか?
ジト目でリュートがミコを観る。
「最初から言ってただろ。魔物ハンターをしながら旅をするんだって。
それはギルドに向かう時も同じだぜ?」
「メンドイ・・・時短しよーよぉ!」
そこで時短が出るのか?そんなことをしてみろ・・・
「ストーリーが一瞬で終わるわ!」←狐モドキよ、作者の代弁ありがとう。
「けちんぼ」
・・・・
・・・・・・・・
「とにかくっ!翔龍に乗るのはナシ!」
「けちんぼ」
・・・・
・・・・・・・・・
仕方がないじゃないか、旅にでなきゃ始まらないんだぜ?
旅の途中で、魔王の情報を聞けるかもしれないし。
歩きの旅も悪い話ばかりじゃないと思わなきゃな。
ギルド本部はエクセリアの王都にあるから、ここから歩きで向うとすれば2週間ほどかかる。
まぁ、どのみち旅の途中で出っくわす事件にも巻き込まれるんだし(覚悟完了)。
「旅立つには装備が必要だよな?」
諦めたのか、ミコが旅の話を持ち出して来た。
「まぁ・・・そうなるな?」
ギルドからの依頼で来たから、旅の装備なんて持っていなかったから。
「そうなれば・・・やっぱりオイスターに戻った方が良いのかな?」
預けてある装備品の事を思い出したのか、ミコがどうしたものかと訊いて来やがる。
「あのなぁミコ。さっきも話しただろ?借金はどうするんだよ?」
「・・・踏み倒すのかよリュートは?」
おお?!ミコがまともな事を言ったぞ!
「どうする気だよミコ?返せる宛てがあったのか?」
俺が訊いたらミコの奴がポンと手を打ちやがった。
「ある!そうだったよリュート!
ジュダヤの商人にCEOを紹介する約束だっただろ!」
「?!そうだが・・・コンドーのことならサエに頼みゃぁ良いだろう?」
意味が計り知れなくて、そう答えたんだが・・・・はっ?!まさか?
「まさか・・・ミコ?お前・・・」
「バイト・・・しようっと!」
・・・なに?!
「コンドーがいつでも歓迎するって言ってたし。
メイドを一週間したらタブン借金分くらいは稼げるよ!」
「・・・さっきまで時短がどうのこうのって、言ってたのに・・・」
俺が突っ込むと、ミコは明後日を向きやがった。
「あのなぁ!これは物のついででもあるんだぜ!
コンドーに会いに行くついでに借金も返せる宛てがつく。
まさに二兎追う者は一兎も得ずだよ!」
・・・まるっきり違うだろ!両方とも、お釈迦になってるだろうが!
「・・・ごほん。大体ミコの言わんとしたのは分かった。
コンドーの処に行ってから、タストン女史のオイスターまで挨拶に帰る・・・と」
「そう言う事だよ!」
ちょっとウキウキしてやがるミコに、念を押したんだ。
ー やっぱりミコは、メイドが一番性に合っていると思ったようだな
・・・そうなのか?
「じゃあ、これからコンドーのメイド喫茶まで一直線だ」
拳を振り上げたミコが狐モドキに発破をかけた。
・・・やっぱりリュートの想ってる通りなのかも知れん・・・
「バイトを堪能したら、オイスターに戻って。
魔王の情報を集めて・・・そんでもって旅立とう!」
ミコ君・・・堪能ってなに?
「ああ、そうすれば何も遺恨を残さないからな」
遺恨って・・・なに?リュート君よ??
「少ぉーしばかり、チップをはずんで貰えれば借金を返した後で豪遊出来る!」
・・・おい。
「ほほぅ?!そう言う事もあるか!」
・・・お前はバイト出来ないだろうが狐モドキ!
「よしっ!これで完全に次の行動計画が立った!」
・・・おめでとうございます・・・
でもね?魔王の情報を確かめないといけないんじゃないの?
「まぁ、魔王が姉さんなら。暫くほっておいても良いだろうからね。
どうせ帰れないのはお互い様なんだし、慌てる必要がないよな!」
・・・おいおい?!
「それはそうだが。
美子が魔王だったらどうやって帰るんだよ、現実世界に?」
「・・・・・・・」
・・・はっ?!もしかして本当に何も考えてなかったのかミコ?
君達は魔王を倒さないと現実には帰れなかったよね?
姉を倒すって事は・・・・現実世界の姉を殺すって事になるのでは?
「もしも姉さんだったらだろ?まだ確証がないって言ってたじゃないか?」
「そうだが・・・どうすんだよ?」
・・・・
「マ、マァナ。ナルヨウニナルダロ?」
全部カタカナですかい?!
動揺しまくるミコに、狐モドキは肩を竦めるしかないのだが。
「キニシチャ駄目ダヨ。りゅーと」
気にしてるのはミコの方でしょ?
「まぁな。今どうこう言うよりは、確証を得てから考えようぜ?」
「ソ・・・ソダネー」
納得したのか知らないが、ミコは躰を固めて頷いている。
「まぁ、兎に角。
俺達はエクセリアから帰らなきゃならないんだぜ。
魔王が誰であれ、どうやろうとも・・・だ。」
含みを持たせて俺が言うと、何とか気を取り直したミコが続けてこう言いやがったんだ。
「そうだよな!異世界まで来てバイトして喜んでる場合じゃなかったんだよな!」
・・・喜んでたんかぁーい?!
「魔王を探し出してやっつけて・・・帰るのが本来の宿命だもんな!」
・・・そうですよ?!
「じゃあ!コンドーのメイド喫茶を最後にして旅に出るとしようか!」
・・・するんかーい?!
と・・・言う事で。
損な翔龍騎ミコはバイトに向かうようですね。
最後のバイトと言ってましたから、この後は本来の魔物ハンターに戻るようです。
そしてついに魔王探しの旅に出るようですけど。
それは、また次のステージにて。
今回のグットジョブは、<メイド喫茶>だったようですね。
初めてのバイトが印象に残るという・・・あれです。
メイド喫茶店のコンドーは、ジュダヤの商人に応えられるのか?
ミコはつつがなく借金を返せたのでしょうか?
それに魔王の情報をゲットできるのでしょうか?
その答えは・・・・・
タストン女史のオイスターを旅立って彼是半月が経った頃。
「リュート!お腹空いたよぉー!」
「はいはい、次の村まで我慢しろよ」
旅支度のミコが天を仰いでぶつくさ言ってます。
「お腹すき過ぎたら狐モドキを食べることになるぅー!」
「俺は食べもんじゃねぇからな!」
飢えた娘は見境がありません・・・
ー そう言う俺も・・・ミコを食べたくなってきちまうぜ?
ぶつくさ言う娘は・・・もう。
いつの間にやらレベルが上がっていたようです。
魔物ハンターだから、狩れば狩る程レベルが上昇して?
たゆんっ!
もう立派な娘の姿になっておりましたとさ。
ー もう姿だけは姉の美子とそっくりになったな・・・
俺の眼に狂いが無ければ・・・だが。
ー 美味しそうな娘子に成りおってからに・・・
目に映るのはJKくらいになったミコ。
もう、元が男の子なんて思える筈もない。
ー 俺が狼だったら・・・喰っちまったかもしれないぜ?
・・・あなたは狐モドキでしょうに?
「リュート・・・何考えてんだよ?」
ジト目で観て来るミコに、ジト目で見返すリュート君。
「旨そうだなぁ・・・て」
・・・・・・
・・・・・・
「あああああっ?!お腹が減り過ぎて、お互い食べ物に見えるんだ!」
「おおおおおっ?!食べ物が喋った!」
二人共極限状態に陥っているようですな?
「って?!そう言えばここは何処なんだよ?!」
「なに?!ここが何処だかまでも判らなくなったのか?
俺達が居るのは異世界!エクセリアに決まってるだろーが!」
そんなことはミコにだって分かるし・・・
「そうじゃなくて!今居るのはどこかって訊いたの!」
ほら、ミコが怒ったぞ?
「それこそ愚問というものだ!道に迷ったんだから分かる筈がないだろ!」
「・・・いっぺん死ね!狐モドキ」
・・・・・
・・・・・・・・・・・・
( ^ω^)・・・
お後が宜しいようで。
「翔龍騎伝ドラゴンライダー! NEXT グッドジョブ編
働かざる者喰うべからずって異世界でもそうなんだ(涙)」 おしまい!
やっぱり・・・・
こんな終わり方になるんですね?
これから向かうのは魔王の元か、それとも?
道に迷った時はどうするのか?
それは・・・振出しに戻れば良いんだよ!
・・・ってことで。
今作「翔龍騎伝ドラゴンライダー! NEXT グッドジョブ編 働かざる者喰うべからずって異世界でもそうなんだ(涙)」は、これにてお終いです!
本当のセカンドステージ迄暫くお別れ。
次回はもう少し物語性のあるお話しに・・・したいなぁ?!
でわっ!また次の連載迄、ごきげんよう!!
令和2年1月16日 さば・ノーブ




