舞え!蝶のように 参話
依頼は救出だったが、ミコの狙いは別にあった?!
岩山に穿かれた洞窟。
いかにも怪しげな雰囲気を醸し出す場所で・・・
袋詰めにされたまま運び込まれて来たミコ。
もう暴れるのに飽きたのか、オークに担がれるままに任せているようだが。
「ふむ。どうやらアジト迄辿り着いたみたいだな。
周りから村娘の声が聞こえてこないから、どこか他の場所に連れ込まれているのかな?」
袋の中で聞き耳を立てて、様子を探っているようだ。
どうやらミコはワザと捕らえらえたみたいですけど?
「先ずは村長の頼んだ通りに、娘さん達の身柄の確保を優先するか」
捕らえられたのに、余裕を伺わせるミコ。
自分がドラゴンライダーであり、魔法の力を授かっている自信の程が伺い知れる。
確かに強敵である魔法戦士とは違い、
単なる魔物でしかないオークが束になって襲い掛かろうと、今のミコには歯が立たないだろう。
しかし、悪知恵が働くオークが人質を盾にすれば訳が違って来る。
「村娘達がまだ無事であることを祈るしかないだろうな」
他族のメスに子種を孕ませ種の保全を為すオーク族。
捕らえられた娘にも同様の行為を働くのは間違いない。
一刻も早く助け出さねばならないのは村長でなくとも解かる。
自分を女と思い込んで捕らえたオークの根城へ、大人しく連れられて来たのは救出作戦の為である。
ミコがオイスターの宿屋で、この作戦を計画した時に反対したリュートが言った。
「ミコ、魔物の中でもオークって奴は、悪知恵を持つボスに率いられている可能性があるんだぞ?!
まかり間違って、ミイラ取りがミイラになっちまうような事にもなり兼ねん。
油断したら本当に村娘と同じ目に遭わされるかもしれないんだぞ?」
現実世界では男の子だったミコ。
このエクセリアに召喚されて、姉の肉体と同じ身体になってしまった。
初めは少女で、レベルが上がる度に身体が成長し、今はもう十分子を宿れる位にまで成長していたから。
「もしもオークの体液を浴びたり、臭いを嗅がされたら。
正気では居られなくなっちまうんだぞ?ミレニアの教本にも書いてあっただろ?」
生殖行為を働くオークの特徴でもある体液には、メスの脳を狂わせる成分が含まれている。
何時か闘った時の事、オークの臭いに呆然とさせられた事があった。
その時には宿った女神ミレニアの忠告によって事無きを得たのだが。
「そんなこと解ってるよ。奴等には勝手な真似をさせないから。
でも、奴等にアジト迄案内させなきゃならないだろ?」
オイスターの店内で作戦会議を開いたのだが、結局ミコの作戦を決行する事になった。
ワザと捕まり村娘達の居場所を突き止め救出する。
その後は・・・脱出させた後に、オークの群れを殲滅してお宝ゲット!
簡単に成功するとは考えてはいないのだが、
こうするより早期に救出する事は出来なさそうに思えたから。
まかり間違って群れの一部だけを倒しても、村娘を盾にされでもしたら手の打ちようがなくなると考えたミコの作戦計画は、ここ迄は順調に運んで来たんだが?
「それにしても静かだな?群れのアジトだっていうのに?」
袋の中から伺うが、周りから聞こえてくるのは数匹の息の音だけ。
自分を捉えた数匹の鼻息の音だけしか聴こえては来ない。
「もしかしたらこれだけしか居なかったのかな?
それなら一遍にかたをつけてやるのに・・・」
どこまで連れて行こうというのか。
袋詰めにされたまま、ミコはどこかへと連れ込まれていく。
「困ったな、リュートの監視にも限界があるし。
洞窟か祠か判らないけど、空から見ていられなくなっているんだから。
翔龍騎になるにはリュートが必要なんだからなぁ」
自分の力だけでは、一遍に数匹ものオークを相手に戦うのには問題があった。
「もしも娘を盾にされちゃったら、手も足も出ないような事にも為り兼ねないもんなぁ」
圧倒的な力を誇る翔龍リュートの力があってこそ、この救出作戦は成り立つというのに。
肝心なリュートが頼りにならなかったら、ミコには当てに出来るのは。
「うう~んっ、ミレニアさんだけじゃぁなぁ。期待する方が間違いってもんだよなぁ」
宿る女神ミレニアの実力を知るミコは、損な女神に期待はしていないようだった。
「「プンスカ」」
怒ったみたいだ・・・
「と、とにかく。もう少しだけ様子をみよう。
娘達の手がかりさえ掴めれば。リュートを呼び寄せて一気にケリをつけてやろう」
身体の中で女神が拗ねた気がしたミコが言い繕う。
取り敢えず今は、様子を観ようと。
「リュート、ちゃんと見張っててよね・・・」
どこかから自分を見守ってくれていると信じている。
「もしも僕の身に何かあったら・・・許さないんだから」
当てにし過ぎじゃないのか?
「だって、僕の身体は・・・リュートにとっても大切なモノなんだから」
・・・意味深だな。
だが!一方狐モドキといえば・・・
「ふぇっくしょん!」
洞窟の入り口で、狐モドキが羽ばたいていた。
袋を担いだオークを見失ってしまい・・・
・・・え?!見失ったって?
駄目ですねこりわ!
何やってんだかナァ?
見失ったら駄目じゃん?
ミコは捕えられたのか?
いいえぇ~わざとですよ?
次回 舞え!蝶のように 四話
まさかの展開になってしまうようですね・・・?!




