ファイティング・スィーパーズ! 八話
兄弟と折衝するミコ?!
リュートは半ば呆れていたのだが?
ダヒテの塔に巣食う魔物は、兄弟経営者のいがみ合いで生まれた産物だった。
嘗てジュダヤの商人とまで云われた会社も、こうして利権争いの場になっていたようだ。
方や儲けに拘り二交代制を労働者に無理強いし、片やもう一方は邪魔をしていた。
そこには正義などは無く、醜いトップ争いしかなかったみたいだ。
「つまりぃ~、お前達は従業員の事なんてなぁ~んにも考えちゃいないんだな?」
腰に手を添えたミコがぶっ倒れている兄弟に訊いた。
ぎゃいぎゃい口論していた二人を黙らせる為に、ミコが軽く二人を殴ったんだが。
「なんて言う無体な奴だ!ワシは仮にもオーナーじゃぞ。
ギルドに依頼したのは、この儂なんじゃぞ!」
兄のダヒテが言い募るのを、ミコは蔑むような眼で見ると。
「人殺しを依頼するような奴に言われる筋合いはない!
お前は魔物が人であったのを知っていた筈だろ?」
兄の方に向けて、逆に問い直した。
「当たり前じゃのクラッカー。
会社の中に魔物が存在しているのを、口外されれば会社が潰れてしまうのじゃぞ?!」
・・・確かに。夜間だけとはいえ、魔物が徘徊する会社なんてオカシイわな。
「少々の犠牲を払っても、会社を護るならば致し方あるまいが!」
・・・それがトップの考え方って奴かい?
「兄者!それこそオカシイだろうに。
二交代制を執らねば会社は潰れてしまうまで経営が苦しいのだぞ!
魔物にしてまでも雇用を護らねばならんところまで追い詰めたのは兄者だろうが!」
・・・いや、雇用を守る前に人権を護るのが普通じゃないの?
「ともかく、兄者は経営をないがしろにし過ぎなんだ。
建前ばかりで儲けが出る筈がないじゃないか!」
・・・いいや、基本がずれているだけだろ?
俺は二人共に責任があると思うけどな?
ミコに訊いてみるまでもないって奴だ。
金のブレスレットを翳すミコに、どうするなんて聞くだけ野暮ってもんだよな?
「言いたい事はそれだけ?
この際二人共に罰が必要なんだろーけど。覚悟完了?」
二人を睨むミコが最後通牒を言い放つ。
「トップがこの有り様じゃあ、従業員も路頭に迷う事になる。
それを回避するには外部からCEOを入れなきゃ駄目だね。
最高経営者を呼んで来なきゃぁ、どのみちこの会社は潰れちゃうぞ?」
「しー・・・?CEOって何?」
兄弟揃って・・・って。
エクセリアには外部から選任される最高経営者の概念はなかったっけ?
「CEOってのはだな、外部から招聘する経営者のことだよ。
社長を余所の企業なんかから選んで経営を任せる、謂わば会社立て直し人のことだよ」
・・・そうなのかミコ?!
「・・・ごほんっ。兎に角だ!
お前達はこの会社を牛耳る資格はないんだから、従業員の為に選択するんだな。
諦めて会社をたたむか、経営を他の人に頼むか・・・
勿論たたむ場合は従業員に当分なる報酬を渡さなければならないぞ!」
おお?!それはその通りだ。
倒産ならいざ知らず、余力があるうちに廃業するのならな。
「ううむ・・・どこかに当社を立て直せる奴が居るのだろうか?」
弟ダヒテが本気で悩んでいる。
「儂がそんなことを赦すとでも思うのか?!
廃業も外部経営者を入れるのにも反対じゃ!」
頑なに拒む兄者ダヒテ。
トップの方針がこれじゃぁ・・・ねぇ?
「仕方がないな・・・二人が引責を執って辞めるしかないようだね?」
呆れたミコがぶっ飛ばそうと構えた時だ。
「大体じゃ!魔物に頼って儲けを維持しようと考えるのが間違いだったんじゃぞ!」
またもや兄ダヒテが弟を貶し始め、応じた弟ダヒテが言うには。
「兄者よ、魔物のどこが悪い?
人間よりもずっと生命力が強いし、力だってそうじゃないか。
男のみならず女だって魔物になれば人の何倍も働くんだぞ!
このエクセリアに居る魔物には、人だった魔物も最初から居るんだからな」
・・・そうだろうな。
俺だって元は人間だし、異世界から来た者の中には魔物で目覚めた奴も居たんだから。
・・・そうだ?!アイツならここを立て直せるかもしれないぜ?
ひょんなことを思い出したんだ。
どこかの村の近所でメイド喫茶を営んでいるオークが居たのを。
「なぁミコ?あいつならここを儲けが出せる会社に出来ねぇかな?」
俺の問いかけに、ミコが小首を傾げて考えてる。
「アイツだよ、メイド喫茶のコンドーだよ。
守銭奴のオークキングなら、きっとここを立て直せるんじゃねぇかな?」
追加で名を教えたら、ミコの奴がポンと手を打ちやがった。
「そーいや、そんな店長も居たよな?!」
どうやら思い出してくれたみたいだ。
「そうだな、奴ならここをもっと大きく出来るかも知れない。
それにアイツなら魔物も人も分け隔てなく使うことが出来るんだから・・・」
その通りだぜミコ。
俺達と同じように異世界転移して来たコンドーなら、新しい商売を考え付くだろうしな。
「そうだ・・・お前達が商売の相手にしているのは人間だけだろ?
その枠を取り払ってみないか?人間を相手に商売するより儲かるみたいだぜ?」
ふいに俺が言った言葉が分からないのか、兄弟は見合って顔を引き攣らせる。
「分かんないのかなぁ?ここエクセリアには金持ちの魔物達が居るって事に。
人間相手だけじゃなくて、魔物にも商売を仕掛けてみたらどうなんだって言ったんだよ」
「はぁ?!魔物相手の商売?」
やっぱり、兄弟はそこまでは思いついていなかったようだ。
「弟ダヒテも言ったじゃないか。
魔物の中には人だった奴も居るって。
そいつらをターゲットに稼ぎを拡げればどうなんだよ?」
「しかし・・・儂達には魔物にはコネクションがないんじゃぞ?」
ほほぅ?!意外にも兄ダヒテは乗り気になった様だぜ?
「儲かると聞いて態度を変えたな。だったら、僕が最適任のCEOを紹介してやるよ」
ミコが俺に目配せしてくると。
「トップ経営者がオークキングなんてのは・・・受けがいいかもしれないぜ魔物にはな?」
「はぁっ?!オークキングだってぇ?」
二人にコンドーを紹介してやると言いやがったんだ。
「そうさ、ボクも奴に使われた経験があるんだ。
魔物相手の商売だったけど、物凄い利益を上げていたぜ?」
そう!ミコは溌溂としてメイドに成りきっていたな・・・あれは経営が巧いからでもあるんだよな。
「馬鹿な・・・オークが商売を?」
二人は信じ切れないようだ・・・当たり前だけど。
「バイトの娘に短時間で200ゴールドも支払っていたんだぜ?
魔物相手じゃそれでも儲けが出るみたいだぜ?」
「なんだと?!バイトに200ゴールドも払えるとは?!」
・・・因みに200ゴールドと言えば、小娘が一か月働いても稼げない金額だ。
「それほど儲けられるとは知らなかった・・・魔物畏るべし」
二人の中に皮算用が沸き上がったらしい。
どちらもやっぱり狐と狸ってことらしいな。
「分かった!是非ともそのオークキングを紹介してくれ!
経営は任すが、オーナー権利は譲らんぞ。ここだけは守って欲しい」
「うん、コンドーがどう言うかは分からないけど。
話だけは言っておいてやる・・・その代わりにだ・・・」
ここでミコの眼が細くなった。
「紹介料として6000ゴールド。
更に契約仲介料として600ゴールド、貰わなきゃいけないなぁ」
・・・悪ドイ奴。
「なっ?!足元を見おる気か?」
「くっ?!成功報酬にはならんのか?」
兄弟揃って交渉に出て来やがったのは、それだけ旨そうな話に思えたようだ。
「別に・・・払いたくなけりゃぁ紹介しなくったって良いんだぜ僕は」
・・・おお、ミコが金に拘ってる?
「むぅう・・・仕方あるまい。
だが、前金で半額・・・どうじゃ?」
「・・・まぁ、ボクも鬼じゃないからね。6000ゴールドで手を打つか」
・・・鬼だろ?
「良かろう、ここに丁度6000ゴールドある。これで紹介と契約前金にしてくれ」
おや?!都合が良いというか、ラッキーだな?
ポンと気前よくミコに大枚を払うとは?
ま。悪いことじゃないんだから、貰っておくか。
俺は受け取るミコがニヤリと笑うのを見逃さなかった。
ジュダヤの商人から受け取った大金を背中に載せられて、俺は翔龍状態でリンさん達がいる部屋に戻ったんだ。
「皆さーん!特別報酬が入ったよ。
これで少なくとも2か月分くらいの給料になるから、受け取ってくださいね」
・・・えっ?!
「会社を辞めるのも、このまま残るのも自己選択ですよ」
・・・なに?!
「もう直ぐこの会社のトップがすげ代わる事になると思います。
魔物のトップについて行く気があるのなら、このまま会社に残ってみるのも良いと思いまーす」
・・・はぁ?!ミコよ、安請け合いし過ぎじゃないか?
まだコンドーがCEOになるって決まった訳じゃないだろ?
口を噤んではいたものの、心の底ではミコに突っ込みたかったんだ。
「えーっ?!ダヒテ兄弟が経営から退くの?」
「うえぇ?!魔物のトップだってぇ?」
ほら見ろ。みんなびっくりして騒ぎ出したじゃないか?
「いやっほぉー!社長が代わるのなら残ろうかな?」
・・・へ?
「魔物だって構わないわよ!だってさっきまで魔物だったんだから」
・・・あの?ニャタさん?!
「そうよねニャタ。魔物だって仕事出来たら良いんだから」
・・・あのぉリンさん?
「そうだそうだ!給料さえ上がれば辞めなくったって良いんだからな!」
・・・そういうもんですかい?
「魔物の社長だなんて、もしかしたら業界初なんじゃないの?」
・・・そういうもんですか?
大分、受けがいいみたいですな?
と、言うより。ダヒテ兄弟ってどれだけ不人気だったんだよ?
「あははは・・・皆さん?
辞める気はないみたいですねぇ?」
苦笑いするミコの周りにリンさんとニャタさんが寄り、
「ミコちゃん、あなたが社長とオーナーをとっちめてくれたんでしょう?
あなたはダヒテの塔の救い主よ、いいえ。
ジュダヤ商会の救世主・・・ダヒテの星よ!」
「魔物を人に戻し、人と魔物の共存を図った・・・女神ヨ」
リンさんもニャタさんもミコをおだてるのが巧いな。
「そ、そんなぁ~」
にやけるミコが、6000ゴールドの入った袋をみなに渡して。
「そんじゃぁ、これで前祝いをドカーンとやってくださいね」
キマエ良過ぎな大風呂敷を開いた。
・・・待てよ?そう言えばサエは何処にいる?
確か・・・6000ゴールドを手にしたと言っていたが?
「おい・・・ミコ。気になる事があるんだがな?」
「うん?サエぽんだろ。きっと外で待ってる筈だろ?」
・・・疑ってないのかよ?
「一つ・・・訊いて良いか?サエは確実に金を手にしたと言っていたのか?」
「・・・確実・・・じゃ・・・なかった・・・けか?」
俺は山分けにすると言い切ったミコに、バツの悪そうな顔をしていたサエを思い浮かべていたんだ。
「なぁ・・・逃げたんじゃないのか?」
「・・・・・・・」
咄嗟にミコがドアの外に走り出る。
「いない・・・どこにもいない?」
見渡したところ・・・やはり?
「なぁミコ?もしかしてさ。
あの6000ゴールドを丁度持っていたのは・・・」
「まさか・・・サエぽんに渡す為の6000ゴールド?」
今頃気が付いたのかよ?!
「あ・・・あ・・・ああああっ?!」
もう一度ミコがドアをぶち破って部屋に戻った時には。
「ああ、ミコちゃん。みんなそれぞれ500ゴールド頂いたわ」
「ありがとう!これでみんな人心地つけたわ!」
ニャタさんも・・・リンさんも。
にこやかに微笑んでいる・・・んだが?
「にゃははははっ、それは・・・良かったですねぇ」
引き攣ったミコの顔が対照的だったよ。
「ど・・・どうするんだよミコ?またタダ働きに終わるのかよ?」
「・・・言うな!」
ああ。
ミコはやはり損な娘・・・いや、元男の子か?
「サエェェ~っ!とっ捕まえてぶち殺す!」
いやぁ、それは八つ当たりと言うものですよミコ君。
「まぁ、ミコにも罪はあるからな・・・サエを疑いもしなかったんだから」
そこですかいリュート君?
「うるさいっ!こうなりゃネクロマンサーにもう一度魔物を造らせて・・・」
・・・悪魔かミコは?!
「そうだ!魔王の宝石を奪えば金になる!」
・・・窃盗は犯罪です。
「だぁああぁ~っ?!何のための掃除人だったんだよぉ?!」
嘆くな、損な娘よ?!
明日があるさ?
おお~っ?!
あのコンドーに出番が巡って来るのか?来ないのか?どっちやねん?
とうとう魔王のヒントを掴んだミコ達だったが?
次回 最終回!!ファイティング・スィーパーズ! 九話
旅立てるのか?!それともまだ旅立てないのか?いや、旅立たねばならないだろうって!




